ゾンビ襲撃
リーナたち4人は町の東南の方向に歩いて行った。だが進めば進むほど周りはさびしくなって、家が少し建っているだけだった。リーナが尋ねた。
「こんなところにいるの?」
「あたいの占いは確かだよ!」
ハンカは自信満々に答えた。だがそこは誰一人も歩いていなかった。
「ソミオ! 俺たち、貧乏くじを引いたみたいだな。これなら街に繰り出せばよかった」
「まあ、仕方ないさ。でもホワイエと言う謎の人物に会えるかもしれないよ」
ジークは不満だらけだったが、ソミオはまだ望みを持っていた。その時だった。彼ら4人の前に黒ずくめの男たちが現れ、すぐに彼らを包囲した。
「何なの!」
リーナが声を上げた。すると彼女の前にいたジュローが言った。
「キャラバン隊の者だな。ここで死んでもらう!」
「ふざけないで! あたいたちを誰だと思っているの? あんたたちがかなうと思っているの?」
早くもハンカがファイティングポーズをとった。この男たちを叩きのめす気が満々だった。
「やれ!」
ジュローが叫び、4人に男たちが襲い掛かって来た。
「あたいが相手だよ!」
ハンカが前に出て、得意のイエム武術で男たちを次々に叩きのめしていく。いくら数が多くてもこれではどうにもならない・・・と思われたが、倒されたはずの男たちが再び立ち上がっていく。ハンカが驚いて声を上げた。
「なんなの? あんたたち!」
「フッフッフ。我らには魔法がかけられておる。体が朽ちぬ限り、動きを止めることはない」
その男たちはまた4人に襲い掛かって来た。すると魔法使いのリーナが前に出た。
「代わって! サンダー!」
リーナが男たちに雷を落とした。男たちが倒れ、辺りが焦げるようなにおいが漂った。
「これでもう動けないわね!」
だが男たちは黒焦げになっても立ち上がって来た。そして手を伸ばして4人に向かってくる。
「まるでゾンビね! でもこれでどう!」
リーナはそう呟きながら魔法を次々に放った。
「ファイヤー!」「フローズン!」「グラビス!」
しかし倒れても男たちは何度もまた立ち上がるのである。焦ったリーナは後ろに下がりながらハンナに言った。
「まずいわね」
「ええ。こうなったら逃げるしかないわ。ジーク! お願い!」
「任せておけ!」
ジークは念動力を使った。それで背後にいた男たちの一団を排除した。
「逃げるわよ!」
リーナはそう言うと走り出し、その後ろをハンナとジークとソミオが続いた。その戦いを少し離れたところから見ていたジュローが不気味に笑いながら言った。
「フッフッフ。逃げられると思うなよ。もうお前たちはロックオンされたのだ。どこまでも追い詰めるだろう」
◇
ルマンダたちは宿営所に戻った。そこはがらんとしていた。術者や運び屋たちが気晴らしに街に繰り出しているからだ。ルマンダはその足でジャック隊長のもとに向かった。彼はテントの中で書類に目を通していた。
「どうだった? ホワイエの手掛かりはあったか?」
ジャック隊長が尋ねた。それに対してルマンダは首を横に振って答えた。
「いえ、全く何も。もしかしてホワイエと言う人物はここにいないのではないでしょうか?」
「ん? だがここにいるといううわさは確かにあったぞ」
「町の人に聞きましたが、誰一人ホワイエと言う老人を知らないのです。うわさが流れているのに町の人が知らないというのはおかしい。敵の罠の可能性が十分考えられます」
ルマンダにそう言われてジャック隊長は書類を机に置いた。
「なるほど。確かにそうだ。カンズの町に着いて皆の警戒心は緩んでいる。ここを突かれたら危ない。すまないが非常招集を出して街に繰り出した者を宿営所に戻して警戒させてくれ」
「はい。わかりました。ロイアンさんに行かせます」
「それにリーナたちもホワイエ捜索に出している。彼女たちも探してくれ」
「それは私が行ってきます」
「では頼むぞ」
ルマンダが出て行ったあと、ジャック隊長は立ち上がって外を見た。
「ホワイエは一体、どこにいるのだ・・・」
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