偽情報
カンズの町のはずれに黒ずくめの男たちが集まっていた。彼らはキャラバン隊をずっと監視していた・
「ザーザもモルトもニーモも奴らにやられた。俺が魔法で強化したキングドラゴノイドも倒された。忌々しいキャラバン隊め!」
その頭目の男はそう呟いていた。彼のかける黒メガネの奥から強い殺気が感じられた。そこに彼の部下の一人が町から帰って来た。
「コルサから情報です。やつらはまだしばらくこの町に滞在するようです。多くは宿営地を出て町に繰り出しているようです・・・」
その男はキャラバン隊を密かに探っていたのだ。いや、キャラバン隊にスパイが紛れ込んで、そこから情報を得ているのだ。もちろんジャック隊長はそのことを知らない。部下の男がさらに報告を続けた。
「オベール様。うまくいきましたね。奴らは油断しきっているようです」
「今がチャンスかもしれぬな。ホワイエの偽情報を流したのがよかったのかもしれぬな」
オベールと呼ばれた頭目の男がニヤリと笑った。そしてすぐに顔を引き締めると彼の後ろにひかえる部下の男の一人に指示した。
「ジュロー! 手下を連れてカンズの町に行け! 術者たちの顔は頭に入っておろう。襲撃して抹殺するのだ!」
「はっ!」
ジュローとその手下の男たちはそのまま姿を消した。オベールはまた町の方を眺めた。
「この町から無事に出られると思うなよ! ふっふっふ・・・」」
オベールは不気味に笑っていた。
◇
ルマンダは剣士のロイアンと運び屋のモンテを連れてホワイエという人物について聞き込みを行っていた。しかしそのような人物を知る者は誰もいなかった。
「偽名を使っている可能性があります。この町に住む老人の一人一人を当たってみるしかないようです」
ロイアンがそう提案したものの、ルマンダが首を振った。
「そんなことをしていたらどれほどの時間が必要だと思いますか? 私の計算では・・・」
「いや、そりゃ、そうですが・・・。いい考えがありますかい?」
モンテは理詰めで話すルマンダが苦手だった。それは彼が計算が苦手だからだ。そんなモンテでもこの町のすべての老人を訪ねて回ることが無理だと思った。別の方法をと考えるが彼には何も浮かばなかった。
「ホワイエと言う人物は、様々なところに旅したことがあり、案内人にしようと今まで多くの人が探しましたが見つからなかった。それなのにこの町にいるといううわさだけがある。実際の姿を見た者はいないのに・・・。もしかしたら敵の罠だとも考えられます」
「えっ! まさか・・・」
「いいえ。私の計算ではその可能性が高いのです。わざとこの町にいるといううわさを流してこの町に滞在を伸ばさせているのかもしれません」
ルマンダはきっぱりと言った。そんなことをロイアンは考えもしなかった。もしそうなら対策を立てねばならない。
「じゃあ、どうしましょうか? 隊長に進言して警戒態勢を取りますか?」
「それがいいでしょう。皆が休息をとって浮かれて街に遊びに出ている。危ないかもしれません」
こうしてルマンダたちは宿営地に戻った。
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