第8話 伝説の人

ハンカの占い

【キャラバン日誌 ロマネスク歴2067.1228 隊長ジャック記録。キャラバン隊はようやくカンズの町に着いた。この町で食料や物資の補充ができる。だがここであるうわさを聞いた。ここにホワイエという人物がいるというのだ。その男はかつて様々なキャラバン隊の案内人を務めた人物で、シーナにも何度も行ったことがあるという。彼がいればこの旅のルートの選定に役立つに違いない・・・】



 キャラバン隊はようやくカンズの町に着いた。そこはロマネスク辺境の小さな町だった。そこで失ったテントや食料などの物資の補充を行うことができた。これでまた旅が続けられる。運び屋たちが忙しく荷物を次々と宿営所まで運び、そこはあわただしい雰囲気に包まれていた。だがそれは短期間だけのことだった。


 そんな時、キャラバン隊の数名があるうわさを聞いてきた。一番早くそれを伝えたのは運び屋のニコだった。


「ここにあの伝説の案内人、ホワイエがいるそうですよ」


 ニコは目を輝かして言った。彼はキャラバン隊の中で最年少で、何にも好奇心を持っていた。それに運び屋には珍しく読み書きが堪能だった。それでいち早くその情報を得たのかもしれない。

 ホワイエが案内人になってくれれば、シーナへの道が明るくなるには違いない・・・それはジャック隊長のみならず、キャラバン隊の者すべてがそう思っていた。だから荷物の搬入が終わってもしばらくはこの町に滞在することになった。

 ジャック隊長はルマンダたちをホワイエ捜索に出した。だがなかなか芳しい報告はない。腕を組んで待ち続けるジャック隊長にリーナが尋ねた。


「そのホワイエと言う人はどこにいるかわかるの?」


 それに対してジャック隊長は首を横に振った。


「いや、わからない。町中を探すしかない。ここにいるといううわさが以前からある」

「手がかりはあるの?」

「いや、しかしかなりの年のはずだ。ルマンダたちに探させてはいるが・・・」

「だめよ。ルマンダは融通が利かないわよ。私が力を貸すわ。ちょっと人を貸して。きっと探し出せるわ!」


 そういうことでリーナはホワイエと言う人物を探すことになった。連れて行ったのはジークとハンカ、そしてソミオだった。他の者は町に繰り出しており、ちょうどその3人がキャラバン隊の宿営所に残っていたからだった。


「ちょっと一緒に来て! ホワイエと言う老人を探すのよ!」


 リーナにジークが尋ねた。


「どこを探すのですかい?」

「ええと・・・それは・・・」


 ジャック隊長にはああ言ったものの、リーナにもどこを探せばいいかわからなかった。ソミオが提案した。


「町の人に聞いて歩きましょうか?」

「いや、だめだと思うわ。そんなことならルマンダがすでにやっていると思うから。」

「じゃあ、占いはどう? あたいのは当たるのよ」


 ハンカはニヤリと不気味に笑った。そして懐からカードを取り出して、器用に切り始めた。それを見てジークがあきれたように言った。


「本当に当たるのかい?」

「試してみるかい。あんたで」


 ハンカが手元のカードから何枚かを抜き出した。


「ふむ。身近な者の死。だが逆転して喜び・・だって。どうだい?」

「あ、当たっている・・・」


 ジークは驚いた。多分、親友のソミオの死、蘇ったことの喜びを差しているんだろう・・・と。


「ついでにあんたも。ソミオ!」


 ハンカはまたカードを抜きだした。それを見て、「えっ!」と言う顔になった。興味津々のジークが尋ねた。


「どうしたんだ? ソミオのは何と出ているんだ?」

「それがね・・・」


 ハンカが言おうかどうか迷っていると、リーナが口を出した。


「そんなことはどうでもいいから、早く占っておくれよ。当たるも八卦当たらぬも八卦と言うじゃないか。とにかく探しようもないから占いを信じてみようじゃないか。」

「じゃあ、いくよ!」


 ハンカはまたカードを抜きだした。


「待ち人は東南の方向。すぐに出会うって」

「それじゃあ、すぐに出発よ!」


 こうして4人は宿営所を出て、その方向に歩いてみることにした。

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