隊長との握手

【キャラバン日誌 ロマネスク歴2067.1224 隊長ジャック記録。キングドラゴノイドにより宿営地を襲撃された。ルマンダたちが防戦したが結界を破られ、キャラバン隊は危機に陥った。だが今回もライティが現れ、キングドラゴノイドを倒してくれた。キャラバン隊は多くのテントが焼けるなど多大な被害を出した。しかし負傷した者もあったが死者はなかった。それは運び屋のソミオの勇気ある行動だった。彼が燃え盛る火の中に飛び込んで仲間を助けようとしたからだ・・・】



 ようやく戦いは終わった。キャラバン隊は大きな被害を出した。宿営地は破壊され、テントの多くは焼かれてしまった。しかし逃げていたラクダは運び屋たちが連れ戻してきた。それに・・・。

 火に包まれて絶望的と思われていた運び屋たちが、ソミオやジークに助けられて戻ってきたのだ。皆は驚きながらも、すぐに駆け寄って肩をたたき合った。


「よく助かったな!」

「よかった! よかった!」


 と声を上げて大いに喜んでいた。火傷を負っている者もいるが、回復魔法ですぐに良くなるようだ。誰一人欠けることなく旅を続けられそうだった。

 そこにジャック隊長も来た。助かった運び屋たちを見て、うれしそうにうなずきながら声をかけていた。そしてソミオがいるのに気付いて彼の方に近づいて言った。


「ソミオ。やはりお前は俺が見込んだ男だった。お前の勇気ある行動は見せてもらった」

「隊長・・・」

「いろいろと辛辣なことを言ったが、それはお前が慢心したことに気付いてほしかったからだ。許してほしい」

「いえ、それは僕が悪かったのですから・・・」

「お前にはこのキャラバン隊の一員である資格が十分ある。一緒に旅を続けて欲しい」


 ジャック隊長は右手を出した。ソミオはその言葉を聞いてうれしさでいっぱいになった。そしてジャック隊長と握手した。


「はい! がんばります!」


 ソミオは元気よく返事をした。ジャック隊長は笑顔で微笑みながらうなずいた。ジークがソミオのそばに駆け寄って来た。


「よかったな! これでまた共に旅を続けられるぞ!」

「ああ」


 ソミオはそれ以上の言葉は出なかった。彼はキャラバン隊の運び屋として続けられることに喜んだが、もう一つ、ライティの力が戻ったこともうれしかった。彼は胸の首飾りを右手で押さえた。そこにはライティの存在が感じられた。


(ライティ。僕は君の強大な力に溺れることもなく、謙虚な気持ちで使わせてもらうよ。みんなを助けるために・・・)


 ソミオは心の中でそう誓った。



 キャラバン隊はラクダを呼び集めて、カンズの町に向けて出発した。そこでテントなどを補充するつもりだった。もちろん隊の者たちの休息にもなる。皆が元気を振り絞って進んでいた。

 だがその一行をまたあの黒ずくめ男たちの一団が見ていた。


「やってくれたな。俺の魔獣強化魔法で生み出したキングドラゴノイドを倒すとは・・・」


 頭目の男はそう呟いた。配下の男の一人が言った。


「このままではカンズの町に入ってしまします。どういたしますか?」

「かまわぬ。このままカンズの町に入ればよい。だが町に着いてからと言ってお前たちが安全なわけではない。きっと壊滅させてやる・・・」


 その頭目の男はそう言ってニヤリと笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る