火中の救出
一方、倒れている運び屋の救出にルマンダとトロイカとジュールが向かった。ジュールが何度も鎮火魔法を使うが、その火のあまりにも強い勢いに鎮火するどころか抑えることすらできなかった。トロイカは何とか助けに行こうとするも、方々に燃え広がる火のため果たせないでいた。
「ルマンダさん。もうだめですぜ。この火の中じゃあ・・・」
「いいえ。まだ見込みがあります。火の弱いところを見つけて中を探しに行くのです」
だが火は激しくなるばかりだった。そこにソミオが息を切らせながら戻って来た。キングドラゴノイドが近くで暴れているのもあるが、宿営地の惨状に驚いてトロイカに尋ねた。
「一体、どうしたんです?」
「キングドラゴノイドに結界を破られて火炎放射を浴びた。あの火の中に倒れている運び屋がいる。助けたいと思うのだが・・・」
「僕が行きます!」
「無理するな! お前までやられてしまうぞ!」
トロイカは止めたが、ソミオの耳には入らなかった。ソミオはすぐに燃える火をものともせず、飛び込んでいった。そこでルマンダも決心した。
「私の金属の体なら大丈夫かもしれない。私も行きます」
ルマンダもその後に続いた。
ソミオが火を潜り抜けていくと、テントの残骸や備品などが散乱していた。この下に逃げ遅れた運び屋がいるように感じた。
「誰かいるか! 助けに来た!」
するとかすかに、
「ううん・・・」
と声がした。残骸の下敷きになって確かに運び屋がいるようだ。ソミオはすぐにそれらを持ちあげて取り除いていった。すると数人の運び屋が倒れていた。
「しっかりしろ!」
「ううっ・・・」
その中の一人が苦しむ声を発していた。それはジークだった。
「もう大丈夫だ! ジーク!」
ソミオは抱き起した。ジークはかすかに意識はあるが一人で立ち上がれそうにない。そこにルマンダが来た。
「早くここから運び出しましょう。私はこの2人を運びます。あなたはその男を・・・」
「はい。ルマンダさん」
倒れている運び屋は他にまだいた。だがいっぺんには助けられない。ルマンダは軽々と運び屋2人を両脇に抱えてまた来た方向に戻っていった。ソミオはジークを抱えようとした。すると激しい風と共に周囲の火がまた激しく燃え上がった。ソミオはジークから離されて転がされた。キングドラゴノイドがここに火炎を放射したのだ。このままではこの場にいる全員が焼け死んでしまう・・・。
(このままではみんな死んでしまう! 僕はみんなを助けたいんだ! 絶対、助けたいんだ!)
起き上がったソミオに火は容赦なく迫って来た。
だがその時だった。ポケットに入れっぱなしにしておいた、ちぎれた首飾りの気配をソミオは強く感じた。それですぐに右手でつかんで出してみた。それは神々しい光を放っていたのだ。
(ライティ! もし僕が君の力を使うのにふさわしいなら・・・頼む! 力を貸してくれ! みんなを助けたいんだ!)
ソミオはそう心に強く思いながら首飾りを上に掲げて叫んだ。
「ライティ!」
するとソミオは光に包まれて姿を消し、空にライティを出現させた。ソミオはライティに変身できたのだ。
ライティは燃え盛る地上に着地すると、すぐに宿営地の火に向けて両手から冷凍ガスを発射した。それは燃え盛る火を瞬時に消した。
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