破られた結界
ルマンダとジュールは力を合わせて結界を張った。普通の魔獣ならこれで十分なはずである。キングドラゴノイドは宿営地に向かって飛んできたが、いきなりその結界にぶつかった。
「ドーン!」
大きな音がして結界が大きく震えた。だが結界は破れない。キングドラゴノイドは結界にはじかれたが、空中で態勢を整えて何度も何度も結界にぶつかって来た。さすがに結界は変形して砕けそうになった。だがルマンダとジュールが必死に魔法力を使って耐えた。
「グウオー!」
キングドラゴノイドは大きく咆哮すると、今度は火炎を放った。結界が熱で赤く染まり、またしても消滅しそうなほどにダメージを受けていた。ジュールが苦しげに言った。
「ルマンダさん! もう持ちそうにありません」
「なんとか頑張るのです。結界が破られればキャラバン隊は全滅します」
ルマンダもジュールも残った魔法力をフルに使っていた。だがキングドラゴノイドの火炎放射の威力はすさまじい。ついには結界を打ち破った。
「バーン!」
激しく爆発していくつかのテントが吹き飛んだ。テントの中で震えていたゲオルテ大使も外に放り出された。起き上がるとその目の前には大きな魔獣がいた。彼は目を大きく開いて驚き、
「ひえー!」
と情けない声を出して逃げていった。
ラクダも驚いて綱を切って方々に逃走し、運び屋たちの多くも危険を感じて逃げ惑っていた。宿営地は騒然として、そこに火の気も上がっていた。
また数人の運び屋はその爆発に巻き込まれてその場で失神して倒れていた。このままではキングドラゴノイドの餌食になる。
「まずい! 結界が破られたわ! トロイカさん! ジュールさん!」
「はっ!」
こうなれば迎え撃つしかなかった。しかし術者はトロイカとジュールの2人のみ。圧倒的に不利だったがやるしかなかった。トロイカが剣を抜いて
「ナイトブレード!」
を放った。しかしキングドラゴノイドにはダメージがない。その間にジュールが魔法力を込めて、
「ホーリーナイト!」
の魔法をかけていた。光り輝く輪がキングドラゴノイドの頭からかぶさって浄化しようとする。それはまともに見ていらないほどまぶしかったが、キングドラゴノイドには目つぶしくらいにかならない。怒り狂ったキングドラゴノイドは
「グオー!」
と咆哮して火炎を吐いた。もう手が付けられそうにない。あちこちが火に包まれており、ジュールが何とかシールドを張って火を防いでいた。このままでは宿営地に残った者たちはすべて焼き尽くされるように思われた。
その時やっとジャック隊長たちが戻って来た。
「ルマンダ! ここは俺たちが引き受ける。負傷者を連れて脱出しろ!」
「はい。隊長」
ルマンダはトロイカとジュールを連れて後ろに下がった。代わってジャック隊長、ロイアン、ダルレ、メレがキングドラゴノイドの前に立った。
「行くぞ! ブレードバスター!」
ジャック隊長が剣を振るうと、強大な刃が上からキングドラゴノイドに振り下ろされた。しかしダメージは大きくない。
「今度は私よ! サンダー!」
リーナがキングドラゴノイドに雷が落とした。だがそのたびに、
「ガオー!」
キングドラゴノイドは咆哮するだけだった。続いてメレは、
「マルチプルアロー!」
と矢を雨のように降らし、ダルレは、
「アイスクルランサー!」
を放った。だがキングドラゴノイドは傷を負わなかった。怒りに火を注ぐだけだった。
「グアオー!」
キングドラゴノイドはさらに大きく吠えると火炎の玉を口から何度も何度も放った。それは地上で大爆発して、ジャック隊長や術者を吹っ飛ばした。しかも宿営地の火は大きくなるばかりであった。
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