ソミオ解任

【キャラバン日誌 ロマネスク歴2067.1223補足 隊長ジャック記録。クオレ村などを襲ったのはただのドラゴンではなかった。ドラゴンの変異体のキングドラゴノイドという魔獣だった。先遣隊はそれに気づかず、ドラゴンの対策装備で攻撃して負傷してしまった。これはある者の軽率な行動があった・・・】


 ジャック隊長のテントにトロイカ、ジュール、そしてソミオが呼び出されていた。ジャック隊長は3人をそれぞれ一睨みすると、こんなことになったいきさつを聞こうとしていた。その口調は激しかった。


「どうしてこんなことになった! 状況を説明するんだ!」

「私とトロイカでドラゴンを装備の前に誘導するために近づきました。だがドラゴンに気付かれてしまい襲ってきましたので、攻撃を加えながら装備のところまで誘導。ドラゴンが接近したところで装備から魔法の網を出しましたが破られてしまいました。その衝撃で私とトロイカは失神して倒れたようです」


 ジュールはそう答えた。彼はソミオのことについては一切、言わなかった。だがそんな答えにジャック隊長が納得するはずはなかった。


「どうして退かなかったのだ! ドラゴン対策装備など使わずに。あれは普通のドラゴンじゃない。キングドラゴノイドと言う魔獣だ。なぜ、そんなことがわからない! お前たちならドラゴンじゃないくらいわかっただろう!」

「はい。確かにそうでした」


 トロイカが答えた。


「それならなぜ装備で無謀な攻撃をした! あの装備では無理なことがわかっていただろう」


 ジャック隊長の言葉にソミオが返事をしようとすると、それを制してトロイカが答えた。


「あの装置で退治できると思いました。私の判断ミスです。すべて私の責任です」


 トロイカはソミオをかばおうとしていた。ソミオは「それを違います」と言おうとしたが、今度はジュールが彼を手で制した。


「私も同罪です。申しわけありません」


 ジュールも頭を下げた。だがジャック隊長はすべてを見抜いていた。


「お前たちが仲間をかばおうとしているのはわかる。しかしそれではなんの解決にもならない。これはソミオの問題なのだ!」


 ジャック隊長はソミオの前に立った。


「何が起こったかは大方わかる。お前が独断で装置を動かしたのだろう」

「はい。あれで倒せると思ったのです」


 ソミオは答えた。そんな彼をジャック隊長は鋭い目で見ながら言った。


「ソミオ。お前には誰にも負けない勇気があると思っていた。しかしそれは俺の間違いだったようだ。お前はトロイカとジュールの指示も聞かずに突っ走った。お前は無謀だったのだ。勇気と無謀とは違う。お前の軽率な行動でキャラバン隊の者を危険にさらしたのだ!」


 ジャック隊長にそう言われてソミオは返す言葉がなかった。確かにそうだった。いざとなればライティに変身して倒せばいいと傲慢になっていたのだ。ソミオはそれを痛感していた。

 顔をうつむけたソミオにジャック隊長はさらに言った。


「キャラバン隊を危険にさらす者は必要ない。お前には次のカンズの町に着いたら運び屋の任をはずす」


 それを聞いてソミオはショックだった。やっとなれたキャラバン隊の運び屋を辞めさせられるなんて・・・。さすがにそれを聞いてトロイカがジャック隊長に言った。


「それではあんまりです! ソミオは彼なりに・・・」


 だがジャック隊長は首を横に振った。


「これは決めたことだ。ソミオはテントに戻って謹慎しろ!」


 そう言われてソミオはうなだれたまま、そのテントを出て行った。それをトロイカとジュールは同情した目で見ていた。ジャック隊長はまだ怒りが収まらないらしく、拳で机をたたいていた。

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