ソミオ救出
(どうして変身できないんだ・・・)
ソミオは右手の首飾りを見た。
「これは!」
いつもならその首飾りにライティの存在が感じられた。しかし今は何も感じられない。ライティがいなくなってしまった・・・。
(もう僕はライティに変身できない・・・)
ソミオは茫然としていた。その彼に魔獣が近づき火炎を浴びせようとしていた。だが今のソミオにはそれすらも目に入らなかった。このままでは彼は燃えつくされてしまう・・・。
魔獣は忌々しい人間に対して大きな口を開けた。ちょうどそこには立っている男一人と倒れている男2人がいる。すべてを焼き尽くす火炎が今放たれようとしていた。3人の男たちが灰になる・・・。
だがそうならなかった。別の方向から1本の矢が放たれたのだ。それは空気を切り裂くように鋭く飛んできて魔獣の背に深く突き刺さった。
「グオー!」
思わぬ攻撃に魔獣は吠えた。そして火炎を吐くのをやめて、矢の飛んできた方向を振り返った。そこにはラクダに乗った弓使いのメレがいた。彼女は第2の矢をつがえている。
「私がひきつけます。その間に救助して!」
するとメレの背後にいた2頭のラクダがソミオたちの方に走った。上に乗っているのはジークとワンズだ。彼らはソミオたちを助けようとしていた。
一方、魔獣はゆっくりとメレの方に体を向けた。その目は怒りで血走っている。火炎を浴びせようと彼女の方に大きな口を開けた。
メレはまた矢を放つと、すぐにラクダを走らせた。その矢は魔獣の吐いた火炎で灰になり、その火炎はメレのいた地面を焼き焦がしていた。魔獣は彼女を走って追いながら火炎を吐いていった。辺りが火に包まれているが、メレは何とかそれをかわしつつ、矢を時々放って魔獣を引き付けていた。魔獣は怒り狂ってメレを追いかけて行く・・・それで魔獣をソミオのいた場所から引き離すことができた。
その間にラクダに乗ったジークとワンズがソミオたちのもとに駆け付けた。
「助けに来たぞ!」
ジークとワンズはそう声をかけた。だがソミオは返事もせずに立ち尽くしたままだった。そのそばにジュールとトロイカは気を失って倒れている。ジークたちはラクダから降りるとまずジュールとトロイカを抱き起してラクダに乗せた。そしてジークが呆然としているソミオに声をかけた。
「ソミオ! どうしたんだ! 逃げるぞ!」
だがソミオはそのままだった。様子がおかしいとジークはソミオのそばに駆け寄った。
「ソミオ! しっかりしろ!」
肩を揺らしてみたが反応はない。ただ突っ立ってぼんやりとしていた。
(ドラゴンにやられてショックを受けてしまったのか? でもこのままにもしておけない。許せよ!)
ジークはそう思いながらソミオの頬を力いっぱいビンタした。するとようやくソミオは我に返ったようだった。
「ジーク・・・」
「ソミオ! 逃げるぞ! ラクダに乗れ!」
「あ、ああ・・・」
ソミオはすぐにラクダにまたがった。そうして彼らはラクダを思いっきり走らせてその場を抜け出すこともできた。
一方、メレも何とか魔獣の追撃を振り切った。彼女が走り去った後ろで魔獣は悔しそうに地団太を踏んでいた。
「危なかった。でもみんな助かったようね」
ようやくメレはほっとして、キャラバン隊のテントに帰ることができた。
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