ドラゴン対策装備

 ドラゴンが現れたとされる村にソミオたちはラクダに乗って向かった。辺りはそんな騒ぎなどなかったかのようにひっそりと静まり返っていた。それがなぜかジュールには不気味に感じられた。何か不測の事態が起こるような気がして・・・。


 その道すがらトロイカとジュールがドラゴン退治の作戦について説明した。


「ドラゴンを見つけてからが勝負だ。まずドラゴン対策装備をどこか目のつかないところに設置する。そこでソミオは待機してくれ。俺とジュールがドラゴンに接近する。そこで攻撃を加えてドラゴンを誘導してくる。ソミオがドラゴン対策装備を操作するんだ。いいか?」

「はい」


 ソミオはドラゴン退治をするのは初めてだった。しかし話は聞いたことがある。装備の扱いも簡単そうに思えた。ジュールがそれについて説明した。


「この装備は魔法の網を発射することができる。その網はドラゴン全体を覆い、動けなくしてしまう。しかもドラゴンの力をも奪う。その網にかかれば大抵のドラゴンは始末できるだろう」

「ドラゴンに気付かれずに装備の近くまで誘導するまでが難しいだけだ。攻撃範囲内に入ればもうこっちのものだ」


 トロイカは何度もドラゴン退治をしていたので自信があるようだった。ジュールがさらにソミオに言った。


「ドラゴンを誘導してきたら合図を送るから、ソミオは装備を動かすんだ。操作はスイッチを押すだけにしておく」

「わかりました。大丈夫でしょう」


 ソミオはこう答えた。この装備があればまず大丈夫だろう。それにもし失敗しても自分がライティに変身してドラゴンを倒せばいい・・・ソミオは心の中でそう簡単に思っていた。だがそれを見通しているかのようにジュールがソミオに言った。


「難しいことはない。だが油断は禁物だ。相手は何と言ってもドラゴンだ。急なことがあるかもしれない。冷静になって慎重に行うのだ」


 ソミオはうなずいた。だがジュールの忠告は彼の心には届いていなかった・・・。



 やがてしばらく行くと物音が遠くで聞こえてきた。「ガシガシ・・・」と何かをかみ砕く様な嫌な感じの音だった。


「いるぞ」


 先頭のトロイカは右手を振り下ろしてラクダを降りた。その合図でジュールとソミオもラクダを降りた。


「向こうでドラゴンが家畜を襲って食っているのだろう。ちょうどあそこに大きな木がある。そこに装備を設置しよう」


 トロイカの指さす先には確かに大きな木があった。そこなら装置をドラゴンの目から隠して設置できるだろう。3人はすぐに大きなドラゴン対策装備をラクダから下ろして設置した。


「魔法はすでに込めてある。後はこのスイッチを押すだけだ。この筒から魔法の網が放たれ、ドラゴンはその攻撃魔法の網の中で息絶える。ではソミオ、頼むぞ」


 ジュールはそう言うと、トロイカとともに音のする方に向かっていった。残されたソミオはその装置をまじまじと見た。ドラゴンならこれで十分退治できるだろう。だが召喚獣ともなれば別だ。それはドラゴンの数倍の攻撃力と守備力を持っている。しかもこのキャラバン隊を襲ってくるような強力な召喚獣ではライティの力がなければ倒せない。逆に考えればライティの力があれば大抵の魔物や魔獣は恐るるに足らない・・・などとソミオは心の中で思っていた。

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