第7話 ドラゴンの変異体
村を襲ったドラゴン
キャラバン隊はカンズの町まであと2日の砂漠の道を進んでいた。この近くには川が流れており、そこから水を引いて作物ができる。そのためこの辺りにいくつかの村が点在していた。
「今日は野営をしなくても村に泊めてもらえそうだな」
「ああ、そうだとありがたい」
キャラバン隊の先頭のラクダに乗るジークとソミオはそんなことを話していた。するとその前方に苦し気にふらふらと歩いてくる男がいた。それは近くの村の百姓の様だった。その男はキャラバン隊の前まで来て急に倒れた。それを見てジークとソミオがすぐにラクダを降りると駆け寄って助け起こした。
「どうしたんだ?」
「村に・・・村に魔物が・・・」
「魔物がどうしたんだ?」
「襲われてしまって・・・助けてください・・・」
その男はそれだけ言って気を失った。ジャック隊長もそばに来て尋ねた。
「どうしたんだ?」
「近くの村の者の様です。村が魔物に襲われたとか。多分、逃げてきたんでしょう」
「そうか。とにかく男を介抱してやれ。目覚めたら話を聞こう。この辺りに魔物が待ち構えているのかもしれない」
ジャック隊長は辺りを見渡した。確かに生ぬるい嫌な風が吹いていた。
【キャラバン日誌 ロマネスク歴2067.1223 隊長ジャック記録。砂漠の道を進んでいるところで、キャラバン隊の前で倒れた男を助けた。その男は近くの村の者で、彼の話では村が魔物に襲われたということだ。その方向はキャラバン隊の進む方角でもあり、注意していく必要があると思われた・・・】
キャラバン隊をその場に待機させるために、その近くの窪地にテントを設営した。その一つに倒れた男を寝かせていた。その顔には大粒の汗が吹き出し、恐怖と苦しみの表情が浮かんでいた。
しばらくしてその男がようやく目を覚ました。ジャック隊長がそばに行って尋ねた。
「お前は誰だ? どこの村の者だ?」
「おらはジェエク。クオレの村の者だ」
「村が魔物に襲われたと言ったな。一体、何があったんだ?」
するとジェエクは何かを思い出して恐怖で震え出した。
「怖え、魔物だった。山の様な大きな体で光に反射してキラキラいて、背中には大きな翼があった。目が赤く光り、大きな口に鋭い歯が並び、火を吐いていたんだ。あいつが村に飛んできてあちこちを破壊して回ったんだ」
「そうか。それで逃げてきたんだな」
「ああ、そうだ。噂では近くの村でも同じように襲われたようだ。おら、恐ろしくて村に戻れねえ・・・」
ジェエクはそれ以上何もしゃべれず、震えながら身を縮こませていた。ジャックはこれ以上聞くのは無理と思ってテントの外に出た。そこにはルマンダが待っており、ジャック隊長に話しかけた。
「ジェエクの話を総合しますと、魔物と言うのはドラゴンと思われます」
「確かにそうだ。しかしドラゴンがいくつもの村を襲うという話を聞いたことがない」
「はい。確かに。でも可能性がないわけではありません。そもそもドラゴンとは・・・」
ルマンダがドラゴンについて詳しく説明しかけたが、それをジャック隊長は右手を上げてやめさせた。
「いや、それは後で聞こう。それよりもどうするかだ。村が襲われ死傷者が出ているようだ。見過ごすことはできん」
「ドラゴンならこちらの持っている装備で退治できると思います。トロイカとジュールを行かせたらいかがでしょうか?」
「そうだな。それに装備を扱う運び屋も随行させよう」
それで話は決まった。キャラバン隊の前方の村にいると思われるドラゴンを退治して村の者を助けるとともに、旅の妨げになるものを排除しようというのだ。ドラゴンはかつて人を襲うことがよくあった。その獰猛な性格から人々から恐れられていたが、ロマネスク王国ではドラゴンを退治する装備を開発していた。それで比較的容易にドラゴンを排除することができるようになった。そのため最近はドラゴンの方も警戒して人や村を襲うことは少なくなったはずなのだが・・・。
ジャック隊長たちは早速、術者と運び屋をテントの前に集合させた。
「・・・と言うわけだ。ドラゴン対策装備を持ってトロイカとジュールは先行してドラゴンを退治してくれ」
「はい。わかりました。ドラゴン退治なら過去に数度したことがあります。」
トロイカとジュールはうなずいてその任務を承諾した。
「では頼む。それからドラゴン対策装備を使える運び屋で行ける者はいないか?」
ジャック隊長が尋ねた。ドラゴン対策装備の扱いは難しい者ではない。だが凶悪なドラゴンの退治に進んで参加しようとする者はいなかった。一人を除いては・・・。
「僕に行かせてください」
ソミオが手を上げた。彼には自分が適役だと思っていたからだ。
「ではソミオ。お前に行ってもらう。3人で協力して事に当たってくれ。しかし不測の事態になったら無理をせず、いったん退くんだ。わかったな」
「はい」
トロイカとジュール、そしてソミオが答えた。
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