ソミオの帰還

 ジークはすぐにライティによって助けられた運び屋やラクダのもとに駆け寄った。皆と喜びを分かち合うためとソミオを迎えに。だが・・・。


「ソミオがいない!」


 その中には地割れに落ちたソミオの姿はなかった。ジークは助けられた運び屋たちに聞いた。


「ソミオは? ソミオはいなかったか?」

「いや、見ていない」

「そ、そんな・・・」


 ジークは目の前が真っ暗になり、崩れ落ちるように膝をついた。ここにいないということはソミオは地割れの底に沈んだままなのか・・・そう思うとジークの目の前は真っ暗になった。その様子にそばにいた運び屋が心配して尋ねた。


「どうしたんだ?」

「俺らを助けるためにソミオは自分でロープを切って地割れの中に落ちたんだ・・・」


 ジークは答えた。地割れに落ちそうになったスライズと自分のためにソミオは自ら犠牲になったのだ。そんなソミオだけが助からなかったのか…そう思うと涙が零れ落ちそうだった。彼は空を仰いでつぶやいた。


「ソミオ・・・お前のことは絶対忘れないからな・・・」


 するとそのジークの顔を上からのぞき込む者がいた。


「僕もそうさ!」


 それはソミオだった。彼はいきなりジークの前に顔を出していたずらっぽく笑っていた。ジークは驚いて目を大きく見開いて思わず、


「ソミオ!」


 と叫んでその肩をしっかりとつかんでいた。ソミオはそんなジークの手荒い歓迎がうれしまった。


「痛いよ。ジーク。もういいだろ。放してくれよ」

「すまなかった。でもどうして?」


 ジークはソミオから手を放して尋ねた。ライティが飛び去って姿を消し、ここにソミオとして戻ってきた。だから姿を現すのが遅れたのだ。だがそれを言うわけにもいかない。無理にでもごまかすしかなかった。


「どうしたって? 僕もライティに助けられたのさ。ちゃんとここにいたさ」

「そうか。そうだったのか。とにかくよかった。心配したぜ!」


 ジークは少し気がかりなこともあったが、親友の無事な帰還にやっと笑うことができた。



【キャラバン日誌 ロマネスク歴2067.1221補足 隊長ジャック記録。キャラバン隊は召喚獣サモンスナジゴクに襲われ、数名の運び屋とラクダ数頭を地割れの中に落とされた。しかし再びライティが現れ、サモンスナジゴクを撃退した。さらに地割れに落ちた運び屋やラクダを救出してくれた・・・】


 ようやくキャラバン隊に平穏が訪れた。キャラバン隊は普段の隊列を組んでカンズの町に向けて進んでいく。だがそれを遠くから眺める影の一団があった。それは数名の黒ずくめの男たちだった。その頭目と思われる男は頭に赤い宝石のついた帽子をかぶっていた。


「ニーモをよく倒したな。それは誉めてやろう。だがお前たちの苦難は終わっていない。次こそお前たちの最期だ」


 その頭目はニヤリと笑うと他の男たちと共に姿を消した。キャラバン隊に受難がまた降りかかろうとしていた。


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