砂漠の下
ソミオは地割れの奥に落ちて行った。彼は首飾りを右手で引きちぎり、ぐっと掲げて叫んだ。
「ライティ!」
するとソミオの姿は光に包まれて消え、空中にライティが光とともに現れた。その下の砂漠では地割れが大きくなって、キャラバン隊の運び屋が数名、ラクダも数頭が飲み込まれていた。
ライティは地面に着地した。上から様子を探るが、地中の敵の様子は見えない。すると足元の砂が崩れた。膝をつくライティに後ろの地面から黒い影が現れて、羽交い絞めにした。それはスナジゴクをさらに巨大化して凶悪化したように見えた。あの黒ずくめの男が変身した召喚獣サモンスナジゴクだった。
サモンスナジゴクはライティを地中に引きずり込もうとしていた。ライティは必死に抵抗するが少しずつ体が砂に埋まっていた。このままではライティは生き埋めにされてしまう。
それを見ていたジークが大声を上げた。
「ライティ! しっかりしろ! このままでは地中に引きずり込まれるぞ!」
術者や運び屋たちも口々に叫んだ。
「ライティ! がんばるんだ!」
「踏ん張れ!」
だがライティはサモンスナジゴクに砂の中に引きずり込まれていき、ついに顔だけが出ているだけになった。必死に右手を伸ばして逃れようとしたが、サモンスナジゴクは放そうとしない。やがてその顔が埋まり、その右手も地中に沈んでいった。辺りは不気味なほどに静まり返った。何かが動いている気配もない・・・。
その光景にジークは茫然とした。
「ライティがやられてしまった・・・」
それは他の者も同じだった。ライティは死んでしまったのか・・・だが心の中ではわずかな可能性を信じていた。
すると急に「バーン!」と地面が爆発して砂煙が立った。その中をライティは地上に飛び出してきた。なんとかサモンスナジゴクから逃れてきたのだ。ライティは空中で一回転して地面に着地した。
ジークたちは沸き立った。
「よく出てきてくれた!」
「ようし! ライティ! 召喚獣を倒してくれ!」
皆が口々に叫んだ!
ライティは身構えた。砂からの脱出にエネルギーを使ってしまって額の炎が揺らいでいた。サモンスナジゴクはまだ地中におり出てこようとしない。どこからまた現れるかわからないのだ。
ふいにライティの後ろの砂が崩れた。それに気づいたライティはすぐに向きを変えて飛んで下がった。するとサモンスナジゴクが砂から飛び出してライティをとらえようとしたが、間一髪それを逃れることができた。
出てきたサモンスナジゴクにライティは向かっていくが、それはすぐに砂の中に隠れてしまった。もうそこには跡形もない。
ライティはまた辺りを見渡しながら構えたが、また背後から絡めとろうとサモンスナジゴクが飛び出してくる・・・ライティはそのサモンスナジゴクの攻撃を何度も避けたが、このままではまたつかまって砂の中に埋められてしまう。
それを見ていたジャック隊長がワンズに聞いた。
「お前なら奴がどこにいるか、わかるか?」
「ええ、何度も姿や動きを感じてわかるようになりましたぜ。多分、あそこです!」
ワンズが指さした。それはライティの背後でもあり、彼らのいるところに比較的近かった。
「わかった。これならどうだ! ブレードバスター!」
ジャック隊長が剣を振り下ろすと、巨大な力の刃がワンズが指さした場所に突き刺さった。すると、
「ギャン!」
と大きな音が響いて、サモンスナジゴクが砂から飛び出してきた。ブレードバスターの衝撃に驚いて出てきてしまったのだ。
そこをライティは逃すまいとサモンスナジゴクをがっしりと捕まえて、何度もパンチや膝蹴りを食らわせて最後に空中に投げ上げた。
「クラッシュストライク!」
ライティの放った光線はサモンスナジゴクをとらえ、やがてそれは空中で燃え尽きていった。ようやくサモンスナジゴクを倒すことができた。
ライティは飛び去ろうとせず、その場で体を回転させてそのまま地下に潜っていった。見ていたジャック隊長たちはその行動が理解できなかった。やがてまたライティが地上に出てきた。その手は胸のところで大事そうに何かを持っていた。
「何だ?」
ジャック隊長たちはライティが何か大事なものを持っているように見えた。確かにライティは地上に出るとその手にあるものをそっと地面に置いた。それは地割れに落ちた運び屋やラクダだった。ライティが地下に潜って助けてきたのだった。
「ありがとう! ライティ! 皆を助けてくれたのだな」
ジャック隊長がそう声を出して礼を言った。ライティはそれにうなずくと、空に飛んで行ってその姿を消した。
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