第12話 飼い犬のケア・1
【バッド】
複数ルートに入った時にライオネルととある分岐まで行っている場合。主人公の一番好感度の高いキャラクターとライオネルが争い、ライオネルが相手を殺してしまう。紆余曲折あってライオネルはヒロインと無理心中する。
国が乱れ、ディライアは没落し、ならず者の手にかかって消息不明となる。詳細は明言を避ける。
【メリバ】
風切羽を焼かれて、後宮に閉じ込められる。しかしヒロインは無上の愛としてそれを受け入れる。美しいものも、怖いものも。全てはライオネルが与えるものだけ。金糸雀は今夜も甘く囀る。
ディライアはライオネルによって色々されて、令嬢として表には出られない状態になる。明言は避ける。
【ノーマル】
他の攻略者のルートを進めず、ライオネルルートに入った状態で好感度がある一定まで行かなかった場合に発生。ヒロインとライオネルは結ばれることなく、ふとした時に思い出す青春の日の面影として心に残り続ける。
ライオネルは隣国の王女と結婚し、ディライアは側室として後宮に入る。しかしどうしてもライオネルの寵愛を受けられず、また子を授かるも乳児のうちに死なせてしまう。そのショックで気が狂い、幽閉の身となる。
【グッド】
ヒロインとライオネルが結ばれる。しかし、ライオネルの暗い部分をヒロインは身に受け続けることとなる。ライオネルは王族として誰にも見せられない浅ましい自分を受け入れるヒロインに執着し続ける。
ディライアは婚約破棄され、とある事件が起こる。侯爵家の嘆願により、修道院へ幽閉される。明言は避ける。
【トゥルー】
ライオネルの王族としての重圧や幼少期からの孤独、父王との確執、側室である母親との思い出、政権争い、兄弟の死などの情報を得ることでたどり着ける。ライオネルの他のエンドを見て、ライオネル関係のモブキャラの隠し好感度を上げないと辿り着けない。かなり難易度の高いエンド。
ディライアは国外の意にそぐわぬ相手と結婚させられる。王国の土は二度と踏めない。
ペンを止めた私は、じっくりと書いたものを眺める。
「揃いも揃って。明言ができないことばかりね」
喉から手が出るほど欲しかった、本編の情報と悪役令嬢の末路。しかしここまで酷いと、逆に笑えてくる。どの結末においても、ディライアにはバッドエンドしかない。
『悪役令嬢の胸糞後日談なんて、大恋愛のエンディングに本当に要るの?』
と言うかねてからの疑問をセレナは笑いながら曖昧に濁した。細かい話については、実際にはゲームの本編にはなく設定資料集からの話なのだと言った。きっとスタッフの
……全く、業深いオタクという生き物は。
ペンとインクを片付け、日記帳を引き出しにしまう。
全くもって長い長い一日だった。殿下には婚約解消を迫られ、両親には説明を求められ、虚無感を感じていたら、セレナが事前承諾なくやってきた。そうこうするうち、もう真夜中もいいところ。
まあ、豹は夜行性だから起きてられるけれど。明日が心配ね。そういえば、狼も夜行性なんだったかしら。
「セレナは無事に帰られたかしら。トリ型なのに飛べないなんて、変わってるわよね。でもあれなら、殿下に風切羽を焼かれることもないでしょうね」
くすくすと笑いながら、部屋の隅のルドルフに向かって話しかける。ルドルフは先ほどからむっつりと押し黙ったままだ。
私が黙っていなさいと言ったからもあるんでしょうけど。私が思い通りにならないから怒っているだけ。でも、考えてもみなさい。主人が従者に従ったら主人ではないのよ。しかし、諫言は忠臣の証とも言えるかもしれないわね。
ルドルフの言いそうなことは、口を開く前から分かっていた。
「俺は、今でも反対だよ。お嬢の身が危険すぎる。せっかく、難を逃れたのに。お嬢は本当なら何をしたって酷い目に会うんだなんて知らなかった。どうして言ってくれなかったの?」
「私も全てを知っていたわけじゃないのよ」
ゲームのことはある程度話してあったけれど、ある程度に留めておいた。追放とか侯爵家のお取り潰しとか。私が詳細を知らなかっただけというのもあるけれど。基本的には死ぬほど恐ろしいことが起こる、とだけ言っておいた。
この話を初めてした時、まだルドルフが十歳かそれくらいだったというのもある。そんな時に残酷な話ばかりしたら、教育に悪いじゃない。
その時はその程度の配慮だった。けれど、この反応を見るに言わないでおいてよかったようだ。殿下との婚約について危なっかしいことをしただろうし、学園に通うなと迫ってきたに違いない。
「暴漢に襲われるとか、表へ出られなかったり気が狂ったり――ライオネルと結婚する場合もあるだなんて」
「そうね。悪役令嬢と言えば婚約破棄ですもの。まさか結婚する可能性があったなんてね。でも、殿下とは婚約解消したから良いじゃない」
「でも、俺はお嬢がライオネルと……なんて……だって、子――くそっ」
そう言いながら、ルドルフはイライラしながら、その場をうろうろと歩き出した。言葉がうまく出てこないくらいにショックだったらしい。
しかし、こういう時の宥め方がないわけではないのだ。
「ルドルフ。ほら、こっちへいらっしゃい」
近くへルドルフを呼ぶが、いつもと違って近くに立つだけ。表情は憮然としていて、明らかにまだ不満を持っているのが分かる。
「ほら」
座ったままルドルフに向かって両手を伸ばす。ルドルフは少しだけ躊躇った後、座り込んで私の膝の上に頭を乗せた。
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