ハーレムを寝取られた勇者がパーティメンバー全員追放する話
四図○
ハーレムを寝取られた勇者がパーティメンバー全員追放する話
僕「君たち全員追放しますクビです」
魔王討伐の旅が中盤に差し掛かった頃、僕こと勇者のユーシャは酒場でパーティメンバー全員集めそう宣言した。
ケンセー「ちょ!?いきなり何言ってんのユーシャ!?」
まず文句を言ってきたのはパーティのアタッカー、剣聖にして僕の幼馴染であるケンセーだった。机をバンと叩いて顔を近づけこちらに文句を言ってくる。
セージョ「そ、そうですよユーシャ様……急に何を……」
聖女でありパーティの回復役セージョもケンセーに続きおずおずと、どたぷん♡と意味もなく胸を揺らしながら抗議する。
マージ「ふ、ふええぇぇ…………!?」
何が何だか分からない、といった感じで右往左往してるのはパーティのもう一人のアタッカー、魔法使いのマージ
シーフ「……冗談なら笑えない」
静かに凛とした声で睨みつけてきたのはパーティのデバフ担当にしてダンジョンの解錠や罠の解除などを担う盗賊のシーフだ。冗談だったら良かったんだけどね
センシ「おいおい、どうしたんだよユーシャ?理由があんなら説明してくれよ」
そしてパーティの盾役にして僕以外で唯一の男であるタンク役の戦士ことセンシが僕を落ち着かせるように僕の肩に手を置いてきた、どの口が、と思ったので普通に振り払った。
僕「ええわかりますわかります、皆さん突然こんな事を言われても納得できないでしょう、説明させていただきます。」
僕は本当の事を言えば腸が煮えくり返りそうだったのだが必死に我慢しつつ極めて冷静に説明を開始した。
僕「えー、ケンセー、君は最近とても綺麗になったね?」
ケンセー「え、ええ!?きゅ、急に何よ!?そ、そんな事言われたって、べ、別に嬉しくなんか無いんだからねッ!!」
ケンセーは頬を赤らませあからさまに嬉しそうに照れている、あ、くそ、可愛い。しかし僕は心を鬼にして続ける事にした
僕「田舎のお上りさんだった君はここ最近随分と垢ぬけたね、挙動の1つ1つが美しくなりました」
ケンセー「も、もうホント何なのよ!ま、まぁ一応お礼は言っとく……ありがと」
顔を赤くし俯くケンセー、ああくそホント可愛いなぁ……しかし今回は彼女達をクビにする為に僕は集めているのだ、未練は断ち切らねばならない。
僕「”誰に”綺麗にしてもらったのかな?」
ケンセー「うっ!?」
ああ、ほんと……君は噓が付けないんだなぁ、「いや、それはその……」と口をもごもごし始めたケンセーはそのまま置いておくとして、続いて僕はセージョを見た。
僕「セージョ、君はいつも優しいよね、パーティメンバーだけじゃなくて道端で倒れているけが人、重症人に対しても常に優しく慈愛と博愛の精神で自分が汚れる事も厭わず治療を行う……その姿は正に聖女と呼ぶにふさわしい」
セージョ「あ、ありがとうございます……」
驚きながらもお礼を言ってくるセージョ、そして無意味にたっぷん……♡と胸が揺れた、思わず見惚れそうになるが僕は奮起してそれを堪える
僕「冒険やクエスト中だけでなく、街に付いても炊き出しやボランティア活動に従事して、そういう事が出来るの本当に凄いと思う、聖女どころか女神と呼んでも差し支えが無い素晴らしい博愛と奉仕の精神だ」
セージョ「い、いえ!私は聖女である前に1人の僧侶として当然の事をしているまでです!(////)」
顔を赤らめ手をブンブンと振るセージョ、そして無意味にたっぷんたっぷん揺れる胸、ああ本当に素晴らしい女性だ……しかし僕は再び心を鬼にして彼女を突き放す一言を口にした。
僕「ほんと、それで”夜の奉仕”も欠かさないんだから素晴らしい聖女っぷりだよ」
セージョ「ぐぅぅっ!!??」
僕の言葉に心当たりがありまくるのだろうか、彼女もまた冷や汗を浮かべ俯いた。
僕「次にマージ」
マージ「……な、なに?ユーシャくん……?」
もう自分が何を言われるのか分かっているのであろう、既に涙ぐんで愛用の杖を握ってプルプル震えている、ならば前置きは必要ないな。
僕「ドジも程々にね、防音魔法忘れてたよ。」
マージ「あううううっ!?」
瞬間、湯沸かし器にようにマージは顔から湯気を出して俯いた。恥ずかしいと思うんなら最初からやんなきゃ良いのに。
僕「さてシーフ?」
シーフ「もういい分かってる……ごめんなさい」
クールで感情を表に出さない彼女は申し訳無さそうにしていた
僕「僕はまだ何も言ってないのに謝るんだね?」
シーフ「つっっ……!
」
シーフはビクッと肩を震わせ押し黙った。僕はそれを悲しい気持ちで一瞥すると、最後の1人に目を向けた。
僕「さてセンシ……?もう分かるよね?」
センシ「へっ……その通りだよ勇者様よぉ……、ここにいる女共はぜーんぶもう俺の女なんだよ」
センシは完全に開き直り下卑た笑みを浮かべ、大仰に両手を広げた。
ケンセー「ちょ、センシ!?」
センシ「何今更慌ててんだよ、分かってんだろ?勇者様はもう俺達の関係なんかとっくに見抜いてらっしゃるんだよ」
いつも僕を呼ぶ時の「ユーシャ」ではなく「勇者様」とわざわざ畏まった事を言うあたり彼の僕に対する本音が伺える。
センシ「へっ、クビに出来るもんならやってみれば良いじゃねえか?」
僕「随分と強気だね?こう言う時普通は少しは慌てる物だと思うけど?」
センシ「はっ!よく言う!4人も女侍らせておいて手出ししなかったヘタレの癖によぉ!この4人はな?いつまで経ってもアプローチしてこねえお前えに見切りを付けて俺を選んだだけだ!」
ケンセー「あ、ちょ!?」
セージョ「せ、センシさん!?」
マージ「あん!?」
シーフ「んっ……!」
センシは僕に見せつけるように4人を強引に抱き寄せた、4人は文句を言いつつも全く抵抗せずに抱きしめられている。
センシ「ほら言ってやれよお前ら!目の前の勇者様に俺達がどんな仲なのかってよぉ」
「「「「……」」」」
4人はセンシの言葉に迷ったのか一度顔を見合わせると、おずおずと僕に語り出した。
ケンセー「ご、ごめんねユーシャ……1番好きなのは今でもユーシャだけど……私もうセンシから離れられないの。」
セージョ「わ、私もです、センシ様の男らしさを知ってからは自分が止められなくて……」
マージ「ユーシャ様はかっこいいけど……その」
シーフ「……申し訳ないとは思ってる」
四者四葉の反応を見せてるが、つまり「僕の事は好きだけどでもセンシが1番なのごめんなさい♡」を別々の言い方してるだけだ。まぁ良いんだけど。
センシ「浮気とか言うんじゃねーぞ勇者様よぉ、そもそもコイツらとテメエは付き合ってすらいねえんだからよぉ?」
僕「……」
センシ「クビにするつったな?やってみろよ、そしたらテメエは『好きな女に告白できなかったばかりか他の男に取られた腹いせでクビにしようとしてきた情けない勇者』だってレッテル貼られるんだからよぉ!」
勝ち誇って笑うセンシ、うーむ、どうやらコイツにしても彼女達にしても何やら勘違いしてるようだ
僕「あー、その、盛り上がってる所悪いんだけど、彼女達と恋仲になった事それ自体は全然いいんだよ」
センシ「……へ?」
てっきりそれを詰められると思っていたのであろうセンシは間の抜けた声で反応した
僕「そもそも君たちがそういう関係なのは割と最初から気付いてた、まぁ……ショックなのはその通りっちゃその通りだけど」
センシ「は、はぁ?なに強がってんのお前?女寝取られておかしくなったか?」
センシだけでなく彼女達も同様の反応だ、てっきり僕に隠れてアレコレやってる事を理由に追放されると思っていたのだろう。罪悪感を覚えるぐらいならやんなきゃいいのにとも思うけど。
僕「君が言ったんだよセンシ、そもそも僕と彼女達は恋人じゃあない、僕も男だし思う所はあるけどそれはそれ、アプローチの1つもしなかった僕にその事を咎める資格なんて無い。」
センシ「は、はぁ意味分かんねぇ!?じゃあ何で追放するってんだよ!?」
僕「うん、じゃあハッキリ言うけどさ……君たち避妊してる?」
センシ「え……」
ケンセー「え、いやそりゃあ……」
セージョ「マージがちゃんと毎回……」
シーフ「避妊魔法を……」
全員がマージを一斉に見た、マージは慌てたように手を振った。
マージ「そ、そうだよ!!いくら私でもそんな事忘れたり……しない…………と、お、思う」
僕「さてここで皆思い出して欲しい、僕がマージに先ほど何を言ったのか」
ケンセー「えっと……」
セージョ「確か……」
シーフ「あっ…………!?」
ケンセーとセージョが思い出そうとしてる中、シーフが青ざめた顔をしていた
シーフ「『ドジも程々にね、防音魔法忘れてたよ。』…………って」
マージ「あっ……。」
僕が何を言いたいのかようやく理解してくれたのか、女性陣全員青ざめた顔をしていた
僕「そう、マージはドジだ、しかも防音魔法を何回も忘れるぐらいにはドジオブドジ、クイーンオブドジ、どうしてお前魔法使いなんかになったんだと言わんばかりのドジだ……、そんな彼女が『本当にちゃんと毎回避妊魔法を唱えていた』と思う?」
センシ「か、仮にだ!!」
センシが僕の言葉を遮ろうとするかのように叫んだ、どうやらコイツはまだ自分の立場を理解していないらしい
センシ「仮に避妊魔法に失敗して妊娠したからなんだってんだよ!お前が寝取られた事と関係ないだろ!俺は全員ちゃんと嫁にするつもりなんだからな!?」
僕「あのねぇセンシ、だからそれ自体は問題じゃないし追放と関係ないってば、ちゃんと祝福するよ……、いいかい、僕達は勇者パーティだ、最終目的は魔王を倒すのが目的だ。」
センシ「だ、だからなんだってんだよ」
僕「あのねぇ、まだ魔王討伐の旅中盤なんだよ?ここに来るのに一年かかった……。最低でも魔王を倒すまでにまだ一年はかかるだろう……」
すぅ……と一息吸って、僕は吐き出すように言いたい言葉をまとめて口にした
僕「で?その間に妊娠なんかした場合魔王討伐はどうする気?今も魔王軍が各地で狼藉を働いてるのに身重の仲間抱えて各地転々しながら戦えって言うの?」
センシ「あっ……」
そう、僕が言いたいのはコレだった、別に恋愛も自由だし、彼女達がセンシを選んだことも、センシがハーレムを作った事もそれ自体に文句はない。平気とは言わないけど。
僕「僕達は魔王討伐という全人類の期待を背負った勇者パーティだよ?王都からは僕達の為だけに莫大なお金が動いてるし、僕達を生かす為に身代わりになって死んだ兵士たちだって数え切れないほどいた筈だ。トーマス、ジェーン、スミス、……みんな勇者の僕なんかよりもよっぽど勇気溢れる人達だった。それが、『妊娠したからやめまーす♡』『責任取って養います!』なんて言われた所で死んだ人たちが納得できると思う?」
センシ「ま、まだ妊娠したって確定したわけじゃねえだろ!?」
僕「そう言うと思いまして、この間の健康診断の時についでに皆に内緒でお医者様にお願いして妊娠検査をお願いしました。」
ケンセー「ちょ、ちょっと何やってんのよユーシャ!なんで一言も相談なしに!!??」
セージョ「ひ、ひどいですよ!黙ってそんな!?」
シーフ「……なんかいつもより検査が多いとは思ってた」
マージ「い、いくらなんでもコレは……」
僕「そもそも君たちがまともな恋愛にとどめて爛れた性生活してなきゃ必要のない検査だったんだけど?」
「「「「うっ……」」」」
僕「はいコレ結果ね?僕がわざわざ全員集めてコレ言ってるって事は結果は理解してると思うけど」
ぼくはバサッと診断書を放り投げた……勿論結果は全員……妊娠である。
僕「良かったね、全員今日から名実ともにセンシの奥さんだよ、愛情の独占さえ諦めれば結構楽しい生活らしいからセンシと一緒に頑張ってね」
ケンセー「ま、待ってよユーシャ!いきなりそんなの言われたって!」
マージ「そ、そうですよ!ちょっと避妊に失敗したからって言ったって!!」
僕「ケンセー、セージョ、そもそも避妊方法だけならもっと確実にコンドームとかあったのに、避妊魔法という方法に固執したのは何でだ?」
ケンセー「うっ……!」
セージョ「そ、それは……」
2人は答えにくそうに顔を背けた。
僕「言いにくいなら僕が代わりにいってあげようか、君たちもセンシも「生中出し」という目先の肉欲に負けて避妊魔法という不確実な手段を選んだんだ……違う?」
シーフ「……ゆ、ユーシャ待って!今パーティを辞める話になったら弟や妹達が!!」
マージ「お、堕ろします!だから追放だけは!!」
僕「シーフ、クエストのお金や魔王討伐給付金を自分の為に使わず、毎回故郷の孤児院の子ども達に寄付してる君は立派だと思う、でもね、君が妊娠して戦闘力が激減、そして勇者パーティが全滅したら君の孤児院だけじゃなくて世界中の孤児院の子ども達が辛い目に遭うって考えなかった?」
シーフ「あっ……」
僕「マージ、堕ろす堕ろさないの話じゃ無いんだよ……、本当の問題は『そういう事に考えを巡らせれなかった』君たち自身の信用の話なんだ。それに、堕胎するのだって決して安くない値段がかかる、そのお金を誰が払ってると思う?この世界の人間達が、僕達がきっといつか魔王を倒すと信じてくれて、必死に労働して預けてくれた税金……いや、血税なんだ。」
マージ「うっ……」
僕「さて、今回の件を報告し勇者パーティの選別を1からやり直しする話だけど……」
ケンセー「ま、待ってよユーシャ!私たちずっと同じパーティの仲間だったじゃない!!そんなもう終わったみたいに!!」
セージョ「そ、そうですよ!せめて本国への報告はもう少し待って……!!」
縋りつく彼女達に悲しい気持ちになった、……この2人は初期からのパーティメンバーだったな、あの頃は今よりも凄く弱かったが、2人とも悪を許さないと言う心の強さを持った女性達だった……今は見る影もない。
センシ「へっ!!じゃあよぉ!ここで手前を黙らせりゃいいって話だろうがよ!!」
ケンセー「ちょ!?」
セージョ「センシ!?」
シーフ「……こんな所で武器を抜いたら」
マージ「周りに人だっているんですよ!?」
センシ「黙ってろお前ら!おら勇者様よぉ!!かかってこいよ!!そんで手前の聖剣を奪っちまえば俺が勇者だ!!」
周りで飲んでいた客が慌てて店から逃げようとする、パニックになった客たちは一つの出口に殺到し、押し合いをはじめ何人か踏みつけにされていた。
センシは愛用の斧を僕に向けてきた……かつて何度も僕の窮地を救い100のゴブリンを一度に薙ぎ払ったあの斧だ……あんなものを振るえばこんな店どうなるか分かったもんじゃない……それが分からない男じゃ無かった筈なのに
センシ「てめえの事はずっと気に入らなかったんだ!いつも達観したように世界の為世界の為って分かったような事ばっか言いやがって!おらどうした!憎い男がここにいんだぞ!かかってこいや!!」
激情し頭から血が出そうになっているセンシと違い僕の心は完全に冷え切っていた、そして終わらせるための最後の一言を放つ
僕「センシ、ケンセー、セージョ、シーフ、マージ、僕は漫画に出てくるようなバカな悪役じゃない、センシが逆上して妨害してくるなんてとっくに想定済みなんだよ」
僕「1時間前に報告は終わっている」
センシ「ユーシャアアアァァァァ!!」
センシが吠えその斧を僕に向かってただ感情のままに振り下ろそうとする、スキルも魔術もない、ただの力任せの一撃、それを眼前にし、僕は。
****
結局センシは負けた、聖剣の加護がある僕に彼が勝てる道理など無かったのだ。
僕達はずっと無言で、逃げ遅れたり踏みつけられた人の救助を行っていた。
全てが終わってから倒れるセンシに彼女達が心配そうに駆け寄っている、他人からみたら完全に僕は蚊帳の外の人間に見えるだろう
僕「気絶してるだけだよ、今後君たちがどういう扱いになるかは知らないけど……まぁセンシと仲良くね」
ケンセー「ひどい、こんなの酷いよ……!」
僕「ん?」
ケンセーは僕をキッと睨んで立ち上がった
ケンセー「他に方法なんていくらでもあった筈でしょ!?それをこんな追い詰めるみたいに……!」
マージ「ケンセー……もう……」
ケンセー「マージは黙ってて!そもそもアンタの魔法が不完全だったのが原因でしょ!!……昔のユーシャだったらこんな回りくどい事しなかった、もっと早くこうなる前に手を打っていた!!」
ケンセーは捲し立てるように、涙を浮かべながら僕を糾弾した。
ケンセー「偉そうに私達を祝福するなんて言ってるけど本当はただ嫉妬してたんでしょ!?自分が意気地なしなのを認めたく無いからこんなパーティ全員が妊娠するまで事態を放っておいたんでしょ!?」
シーフ「おい、もう……」
ケンセー「センシは私の不安をちゃんと聞いて寄り添って話も聞いてくれた!!毎晩毎晩私達を平等に愛してくれた!!アンタと違ってね!?ほんとアンタのそういう所が男として……!!」
セージョ「ケンセー!!」
パァン!!!
酒場に巨大な破裂音が響いた、セージョがケンセーの頬をビンタしていた。ケンセーは何が起こったのか分からなかったのか茫然としていた。
ケンセー「セー……ジョ?」
セージョ「悪いのは私達です……。どんな言い訳をしたって。」
シーフ「……王都に戻ろう、多分、もう次の選定は始まってる」
マージ「ひっぐ、うっぐ、ごめんなさい、ごめんなさい……!!」
ケンセーは仲間達を見て冷静さを取り戻したのか、ゆっくりと顔を歪め、涙を溜めて……泣き出した
ケンセー「ご、ごめんなさいユーシャ!!ほ、本当にごめんなさい!こんな事言うつもりなんて無かったの……!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい……!」
遂に泣き崩れたケンセーをセージョが抱えて立ち上がらせた、そして4人でセンシを抱きかかえる。女性で頑強な男性一人を抱えるのは大変そうだが僕はそれを見ているだけだ。
セージョ「……行きましょう、……最後だから言いますけどユーシャ、貴方と過ごしたこの一年、辛い事もあったけど、本当に、本当に楽しかったですよ」
シーフ「……根無し草だった私を仲間に加えてくれて本当に嬉しかった……まぁ、私がダメにしたんだけど」
僕「うん、さようなら……。あ、マージだけ少しいいかい?」
マージ「?はい」
……3人がセンシを連れて外に出たのを見て僕は最後に聞きたかったことをマージに尋ねるとする
僕「マージ……本当は君はわざと避妊の魔法や防音の魔法を失敗してたんじゃないか?」
マージ「……なんでそう思ったんです?」
先ほどまで泣きじゃくっていたマージはぴたりと泣き止み冷静にこちらを見返していた、なるほど、コレがこの子の本性か。
僕「こればっかりは勘だけど……マージは確かにドジでしょっちゅう魔法をミスったり暴走させたり仲間に向けて誤射したりと酷かったけど……でもトドメとか肝心要の大事な所でミスする事なんて一度も無かったから」
マージ「毎日やってたからルーチンワークになっただけかもしれませんよ?」
僕「魔物の討伐だって毎日やってた」
マージ「命がかかってますから」
僕「妊娠だってそれに匹敵する緊急事態だと思うけど」
マージ「仮にそうだとして……何が言いたいんです?私が勇者パーティ崩壊の原因を作ったような物でしょ?」
皮肉に笑いながらマージは物騒な事を言ってきた、僕は困ってしまい頭を掻く
僕「マージひょっとしてさ……実はずっと今の事態が良くない事だと思ってたんじゃないの?だから誰かに止めて欲しくてわざと避妊の魔法を……」
マージ「はいストップ、思いあがるのも大概にしてください負け犬勇者さん」
マージは僕に手を向けて制止してきた
マージ「……私達は皆肉欲に負けただけのつまらない女で、世界を救う使命なんてハナから無理だった、それだけの話ですよ。……さようなら、この一年、初めて外の世界を知れて、嬉しかった。」
そういってマージも出て行った。
酒場には他の客も無く僕だけがただポツンと残っていた
僕「はぁ……」
僕は勝手にビールを拝借し、その辺に転がった椅子を立ててそこに座り込んだ
『偉そうに私達を祝福するなんて言ってるけど本当はただ嫉妬してたんでしょ!?自分が意気地なしなのを認めたく無いから……っ!!』
ケンセーの先ほどの言葉が僕の中で反芻された、実際その通りだ。偉そうな事をいっても僕の今回の行動原理は彼女達を寝取られたことに対する嫉妬である、まぁ彼女達に魔王討伐の資格が無いと思ったのも事実だが、やろうと思えばもっと早い段階でセンシを糾弾して追い出す事も出来た、そうしなかったのは……最初にセンシに寝取られたのが、僕が好きだったケンセーだったからだ。その瞬間僕はこのパーティそのものに興味を失った。
ジョッキに注いだビールをグビっと煽る、そういえばお酒飲んだの随分久しぶりだな。
僕「あの頃は良かったなぁ……」
僕は昔に想いを馳せた
村の儀式でケンセーが剣聖に選ばれ、僕とバディを組んだのが最初だったっけ。それから王都に行ってセージョに出会い、聖剣に選ばれ勇者となって、その為に修行もして、3人旅が始まった。しばらくしてある盗賊団討伐のおり、別口で討伐クエストを受けていたシーフと意気投合して彼女も仲間に。高名な魔女を仲間にする為に魔法使いの森に行き、魔女の一番弟子のマージを仲間に加えた。そして王都からセンシが派遣された、彼とは何度も肩を並べて戦った、共に酒を飲み国の輝かしい未来だとかなんだとか、そんな青臭い理想を一晩中語り合ったっけか……。
僕「全部無駄になったな」
自嘲的に笑い、僕は残ったビールを一気飲みした。
勇者に選ばれ、街を出た時の事を思い出す、幼馴染で、一番好きだった彼女の言葉を
『いい!?魔王を倒すまで私達は恋愛禁止!世界中の人間の運命が掛かってるんだから!全部終わったら……その、アレよ!分かりなさいよ!!』
僕「出来ない約束なら……忘れるぐらいなら最初からすんな、……バカ女が」
僕はジョッキを地面に叩きつけようとして……やっぱりやめた。そして、僕も酒場を後にした。
その後、予想通り彼女達の妊娠が発覚し、剣聖と聖女はもう一度選定がされる事になった。
一週間後には僕の下に新しい剣聖と聖女が、王都の兵士から優秀な狩人と魔法使いが派遣されてきた。
全員女性で、前のパーティよりも、その、なんというか遊び慣れてると言うか、でも同時に清濁併せ吞む性質を持ってる人達だった。
彼女達は人生の酸いも甘いも知っており、街の酒場でナンパされてもあっさりかわしたり、危険な話には笑顔で受け流す、なんというかしっかりした人達だった。
彼女達は僕に何か特別な話とかする事無く、いつも簡単な世間話やニュースの話題、食べ物の話等でコミュニケーションを取った、それでも戦闘ではお互いに背中を預けれたし、いい友人関係を築けたと思う。
魔王軍の四天王との苦闘とか色々あるにはあったが、なんというか終止ビジネスライクな関係で、魔王討伐もクソ大変だったには大変だったけど、特になんの感慨も無く終わってしまった。
王都に戻り凱旋パレードを行った、そこで王からなんか色々勲章を貰ったりした。そしてかつての仲間達の近況を噂で知る事になった
セージョはお腹の子どもに罪は無いとし産むことを決意、しかしセンシと共に生きる事は無かった、聖女の称号を失いただの僧侶となったセージョ、今日も教会で育児の傍らシスターをしながら奉仕活動をしているそうだ。
シーフもクールに見えてアレで子どもに優しい人間なので産むことを選んだそうだ、しかし彼女もまたセンシと共に生きる事は選ばなかった。勇者パーティの圧倒的な経験を活かし、冒険者ギルドのS級ランカーとなり、孤児院と子どもの為に多額の金を投資する日常を送っている。
マージは逆に迷うことなく真っ先に子どもを堕ろしたそうだ、彼女もまたセンシと一緒にならず、魔法使いの森に戻り魔術の研究に没頭しているらしい。
そして……ケンセーはセンシと結婚したそうだ。剣聖の称号を失うと共に力の大半も失ったケンセー、騎士団を辞めさせられたセンシは傷をなめ合うように身を寄せ合い、ある田舎町で結婚したらしい。
自分が追い込んでおいてなんだが、それでも不幸にならず、強く生きていてくれて少しだけホッとしてる自分がいる。
それから目標も無くなり恋人もおらず1人でブラブラ生きて、時たま今回の事を思い出しては未練がましくグロッキーになるのを繰り返していた僕を見かねて、王がこんな話を持って来た。
「ユーシャよ、懸想してる相手がおらなんだら、わが娘、第一王女のオージョとちょい見合いしてみる気はありゃせんか?あやつも良い歳なのに全然落ち着こうとせんでなぁ……」
と言われた、正直気は乗らなかったが断るのも悪いので受ける事にした、まぁ適当にやり過ごそう……そう思っていたのだが。
「あーはっはっは!そちらが勇者のユーシャ様ですか!!いやーごめんなさいねぇお父様がなんか無理矢理セッティングしちゃって!!」
なんというか、豪胆を絵に描いたような、”変”なお姫様だった。
名前はオージョ、声がでかいわ身長も僕よりでかいわ酒が好きだわ良く城を抜け出してはギルドの依頼を受けてモンスター退治に勤しむわ……従来のお姫様のイメージとは違う人だった。
彼女の笑顔を見てると、自分が悩んでいた事が馬鹿らしくなってきて、次第に僕は彼女に惹かれて行った、そして
「オージョ、もしもよろしければ……僕と結婚してください」
6回目のデートの時に僕は面白みの無い告白した、第一王女はちょっとポカンとした後
「え、あ、その、こんな……私でよけれ……ば」
と、顔を真っ赤にしてもじもじしながら言った、そのギャップに僕は「ぜってえに彼女だけは手放さねぇ」と硬く心に誓った。
気付いたら、ケンセー達の事をようやく吹っ切っていた。
そして結婚式当日、救世の勇者と第一王女が結婚するという事で国を挙げてのお祭り騒ぎとなった。
新勇者パーティの面々はすぐに駆けつけてくれて祝福の言葉をくれた、いい友人を持ったものだ。
そしてパレードの時間、でかい山車のような物に乗り民衆に手を振っていると、ふと、遠くの方に見知った顔が見えたような気がした
バカの癖に悩みすぎる戦士の男
奉仕の精神で生きているといいつつ清楚とは程遠い体つきの元聖女
クールに見せかけて激情家で家族想いの盗賊
天然に見せかけて腹黒の……それでいてやっぱり優しい魔法使い
そして……剣の腕ばかり強いバカでツンデレの幼馴染
僕は思わずその辺りを注視したが……結局人の波が激しくてあっさりと見失ってしまった。
見間違いかもしれない……だけど僕はそこの辺りに大きく手を振った、いるのか分からない、届くかも分からない、でも確かにかつて一緒に旅した”変”な仲間達に向かって、
(どうだ、俺は幸せだぞ、ざまぁみろ)
と飛び切りの笑顔で僕は大きく手を振った。
ハーレムを寝取られた勇者がパーティメンバー全員追放する話 四図○ @ninnnikukamen
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