第5章102話:ラスボス

巨大な青銅の扉。


非常に細かく、美しい彫刻が成されている。


扉の左右には、金銀の像が建てられている。


左は竜人を模した金の像。


右は獣人を模した銀の像。


「ボス部屋……かな」


ラティーバル山も終盤に差し掛かっているだろうし、おそらくボス部屋で間違いないだろう。


たぶんここがラスボスの部屋。


島での暮らしの、一つの到達点となる場所だ。


そう思うと、少し緊張してきた。


同時に、さまざまな感興が湧いてくる。


「……いこう」


私は意を決して。


ボス部屋の扉に両手を触れた。


見た目はすさまじく重厚であるものの、あっさりと扉が開いていく。


やがて扉が開ききった。


そこは巨大な部屋である。


天井の高さは50メートルはある。


左右の広さも300メートル以上だ。


オリンピックのドームなどは、これぐらいの広さがありそうだと思った。


炎などの灯りはともされていないが、しっかりと明るい部屋。


私のフレアライトではなく、部屋そのものにフレアライトがほどこされているのだろうと推察した。


そして――――


部屋の中心に、ボス部屋の主が立っていた。


巨大な女ケンタウロスである。


名前は【ケンタウロス・クイーン】というそうだ。


身長は10メートルはある。


前脚から尻尾までの長さだと20メートルはあるだろうか。


髪は茶髪のロングヘア。


目元を覆う兜をかぶっており、顔の大部分が見えない。


胸部を覆い隠すように胸当てをつけている。


それ以外に鎧などは身につけておらず、肩や腹筋などは露出していた。


そして下半身はもちろん、馬である。


右手に持つのは、巨大な一本のハルバードだ。


長大で重量感のある剛槍。


あんな槍で攻撃されたら、かするだけで即死するだろう。


「……」


ケンタウロスクイーンが私を見つめる。


私も、ケンタウロスクイーンを見上げる。


言葉はなかった。


彼女は人語を話せるのだろうか?


いや、無理か。


……まあ、いい。


とにかく、この女ケンタウロスがラスボスなのだろう。


私は、ゴレムソードを構える。


ケンタウロスクイーンも、槍を構えた。


静かに見つめ合う。


そして。


戦闘の火蓋が、切られた。




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