第5章96話:ボス

ボス部屋と決まったわけではない。


しかし、ボス部屋っぽい雰囲気だ。


出てくるとしたら、どんなボスだろうか?


まったく太刀打ちできない可能性もある。


(でも、ここまで来てビビる道理はないよね)


臆病風を吹かせてもしょうがないことだ。


むしろ、こういうのも含めて冒険。


楽しんでいかなきゃね。


「よし、いこう」


私は心意気を固める。


扉に両手を触れて、押し込む。


重厚な音を立てて、扉が開いていく。


押し開いた扉の先に広がったのは、左右150メートルほどの広い空間。


その空間の中心に鎮座するのは……赤茶けた竜である。


硬そうな甲殻。


二本のツノ。


巨大な爪。


這いつくばった姿勢で、鋭い目つきを私に対して向けていた。


(竜……)


異世界に来て、竜は初めて目にする。


私の中に感動が広がった。


鑑定してみると、どうやら眼前の竜は【地竜】である。


「グガアアァァァアアッ!!」


地竜が咆哮を上げた。


洞窟内部が震動し、天井からパラパラと砂礫されきが落ちてくる。


私はゴレムソードを構え、地竜に向かって駆け出した。


(攻める!)


相手は這いつくばっており、そこまで俊敏には動けまい。


機動力はこちらが上。


まずはゴレムソードによる一撃をお見舞いしてやろうと思った。


しかし。


「グルゥゥゥウッ!」


地竜が、口の中を赤く光らせる。


(まずい!)


と私は直感し、すぐさま横に飛び退いた。


次の瞬間。


地竜の口から放たれたのは、巨大な炎のブレスであった。


ドラゴンブレスである。


なんとか回避が間に合い、ドラゴンブレスが私の横を通り抜けていく。


しかし余波として熱風が吹きつけてきた。


「あっつ……!」


ただの余波ですら、この熱気。


もしドラゴンブレスが直撃していたら、死んでいただろう。


私は肝を冷やした。


(こいつに時間をかけちゃいけない……!)


炎を食らったら即死もありえる。


だから、さっさと決着をつけてしまうべきだ。



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