第2章39話:魔力の滝



このあと、魔法についても試してみた。


水魔法による攻撃【ウォーターアロー】によって、ホーンラビットを倒せることを確認した。


魔法は弓ほどの射程はないが、軌道を操作することができる。


威力も申し分ない。


安全に魔物を狩るなら、魔法のコントロールを覚えることは絶対に必須だと思われた。


「さて、それじゃあ、そろそろホーンラビット以外の魔物を狩りに行きましょうか」


ルリアさんがそう言った。


そして、遠くを指差す。


そこには森の向こうに横たわる山並みが見えた。


「あそこに山が見えるでしょ? その手前に森があるわよね。この山と森の間には岩場があって、そこでウルフとルグイノシシが存在するわ」


「ふむ、なるほど……」


ウルフとルグイノシシ。


名前からするに、オオカミ型の魔物と、イノシシ型の魔物といったところだろう。


オオカミやイノシシを狩りにいくようなものだと思えば、ホーンラビットより危険度は高いんだろうな……。


「ちなみに、手前の森には、魔力の水が沸く滝があるわ。そういう水場を【魔力泉(まりょくせん)】っていったりするんだけどね。ここの水を飲めば魔力を補給できるのよ」


んー。


つまり回復ポイントみたいなものかな?


魔力しか回復できないとしても、魔力があれば回復魔法を使えるので、実質HPの回復も行えるはずだし。


「というわけで、まずはその滝に行ってみましょうか」


「わかりました」


ルリアさんが歩き出す。


私もその後を追うように、歩みをはじめた。




森に入る。


鬱蒼とした森だ。


ただ、存在する魔物はホーンラビットだけである。


だから気楽に前進することができた。


……5分後。


ルリアさんの先導のもと、私たちは滝にたどりついた。


見上げるほど高い位置から、ざあざあと水流が流れ落ちている。


滝壷は縦横30メートルほどの大きさであり、出口は細い川になって流れている。


ルリアさんが言った。


「これがさっき話した滝ね。滝壷の水は飲むことができるし、魔力を回復できるわ」


「なるほど。でも、滝壷だけですか? こっちの川になってる部分も、魔力が流れているのでは?」


「いいえ。川になったあたりから、魔力が溶けて霧散するから、そっちの水を飲んでも回復できないわよ」


なるほど……


あくまで滝壷の水のみが魔力回復に使えるということか。


「さっき魔法を打ったんだし、少し飲んでいきなさい」


「はい」


私は返事をしてから、膝をついて、滝水に手を浸してみる。


冷たい水だ。


驚くほど澄んでいる。


滝の底が透けて見えるほど。


魚などは存在していないようだった。


私は手で水をすくって、口に運ぶ。


……無味無臭だ。


普通の水である。


しかし、確かに身体に染み渡るような感覚があった。


「ステータスを確認してみるといいわ」


言われるがまま、ステータスオープンをしてみると、確かに、魔力が回復しているのがわかった。


「すごい水ですね、これ」


「ええ。ただ、連続で何度も魔力を回復することができないわ。5時間おきに1回使えるといったところかしらね」


「そうなんですか」


それでも、かなり有難いと思う。


ここの魔力水を水筒にでも入れて、持っていけたりはしないだろうか?


今度、やってみよう。


「さ、魔力の回復が済んだことだし、岩場へと向かいましょうか」


「はい」


私は立ち上がり、ルリアさんとともに滝を去る。


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