第1章21話:クレイシアの食事



結局、クレイシアさんに押し切られる形で料理を作ることになった。


作るのはランチだ。


さて、メニューはどうしようかな?


クレイシアさんは、とにかく美味しい料理を期待していると思われる。


誰が食べても外さない料理をチョイスすべきだろう。


無難にハンバーグでも作っておこうか。


うん、メインディッシュはそれでいいだろう。


あとはスープと野菜を作ろうかな。


少し悩んでからスープは海藻スープに決めた。


ほんのり胡椒を入れて、スパイシーな感じにしつつ……


しかしハンバーグのお口直しとして使えるように、あっさりめのテイストで。


一方、野菜についてはコールスローサラダに決定する。


単なるサラダに比べたら段違いに美味しいからね。


ハンバーグ、海藻スープ、コールスローサラダ。


うん……これでいいだろう。


メニューが決まったところでさっそく料理を作り始める。


30分ぐらいが経ち。


完成した。


「どうぞ。こちらからハンバーグ、海藻スープ、コールスローサラダです」


私は順番に名前を言っていく。


クレイシアさんは興味深げにそれらの料理を眺めた。


「ふむ……見たことがない料理ですわね」


鼻を近づけ、香りを嗅いでから続ける。


「匂いは悪くないですわ。まあ、とりあえず食べてみますわね」


「はい。どうぞ召し上がれ」


クレイシアさんはナイフとフォークを持って、ハンバーグを切る。


デミグラスソースが垂れる。


クレイシアさんがソースを絡めながら、切ったハンバーグをフォークで突き刺した。


それを口に運んでいく。


「……っ!!」


びくんとクレイシアさんが大きな反応をする。


それから叫んだ。


「お、美味しいですわぁーッ!!?」


目を爛々と輝かせて言う。


「なんですの、このお肉!? 柔らかくて、それでいて歯ごたえがあって、噛むたびに肉汁が染み出してきましたわ!」


「ハンバーグは肉汁が肝ですから、肉汁を閉じ込める処置をしました。お気に召していただけたようで何よりです」


「ええ、ええ! これは素晴らしい料理です。まさか人間がこれほどの料理を作るなんて……信じられませんわ!」


言いつつクレイシアさんがハンバーグをバクバクと食べていく。


顔を紅潮させ、満面の笑顔であった。


そしてあっという間にハンバーグを食べ切ってしまった。


「あら……もう無くなってしまいましたわ」


クレイシアさんは本当に残念そうだった。


そんなに気に入ってもらえると、作った甲斐があるね。

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