第1章19話:海



異世界生活3日目。


晴れ。


この日は海にいくことにした。


「ローブだと海水で濡れかねないし、別の服のほうがいいよね」


というわけで、私はクラフトスキルで衣服を作った。


トップスはフリルブラウス。


ボトムスはショートパンツ。


日焼け止めクリームは……うーん。


まだ5月だし、いいか。


たぶん大丈夫でしょ。


さて、製作した服を着用して出発。


昼2時ごろ。


森を通って海に向かう。


到着。


ここは異世界初日に降り立った砂浜だ。


その砂のうえに立って、海を眺める。


「本当に綺麗な海だなぁ」


透明感のあるマリンブルーの海。


水平線まで、ただ水色の絵の具を溶かしたような海原が続いている。


ざあ……


ざあ……


と、寄せては返す波の音に耳を傾けていると、心が洗われていくようだ。


潮風が吹きつける。


私は髪を押さえる。


「よーし、今日も食材を探すぞ!」


そう海に向かって宣言したあと、私は適当に砂浜を歩き出した。






砂浜を歩く。


途中、砂が靴に入ってきたので、靴を脱ぐことにした。


裸足で歩く。


足跡が砂浜についていく。


たまに小さなカニやヤドカリが砂のうえトコトコと歩いていた。


可愛いなぁ……。


こういうのも食材としてイケるだろうけど、なんとなく捕まえる気になれなかったので放置した。




それなりに歩いたあと、岩礁のある場所にたどりついた。


このあたりなら何か見つかるかな?


そろそろ海に足を浸してみる。


「冷たい……」


一歩、二歩と、海に向かって歩く。


だいたいふくらはぎの中ほどまで水に浸かったあたりで、足を止めた。


「おお……これ貝かな?」


透き通るような水面。


その底にある砂利のうえに貝っぽい何かが落ちていた。


中腰になり、海に手を突っ込んで拾い上げる。


鑑定。





◆◆◆


【シオノアサリ】

アサリ。アサリの味がする。

可食。



◆◆◆



おお。


アサリなのかこれ……。


「海でもアサリって獲れるんだ?」


いや、異世界限定かな?


アサリといえば潮干狩りで獲るイメージだからなぁ。


まあ、細かいことはいい。


とりあえずアサリをゲットだ。


「今日はアサリ尽くしの料理にしよう!」


というわけでアサリを積極的に狩ることにした。





その周辺を探し回ること2時間ほど。


結構な数のアサリをゲットした。


「これだけあれば十分でしょ」


私はアサリ獲りを終了する。


砂浜に上がる。


空を見上げると、夕陽が傾きはじめて染まり始めていた。


海の色も、オレンジと銀色に変わっている。


絶景だった。


大気の塵が少ない、絶海の空。


透明な海。


それらが夕陽と混ざり合って作り出す景色は、感嘆のため息が漏れてしまうほどに美しかった。


さて、帰ろう。


私は帰宅の準備をして、歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る