第1章17話:湖で魚釣り





私は昨日、ルリアさんから大量の食材を頂いた。


思いつく料理はだいたい作れるぐらい豊富な食材だ。


まあ、半月ぶんの食材だからね。


つまり、現在、私は必死で食料を集めなくていい。


けど、だからといって食料採取をやらないわけではない。


無人島では、食料はいくらあっても困ることはないからだ。


たとえば、今は食料を自給自足できるけど……冬になったら?


食料が満足に補充できるとは限らない。


だから食料を集められるうちに集めておくことには、大きな意義がある。


(そう考えると、時間停止のアイテムボックスは、ありがたいね)


普通の無人島生活なら、多すぎる食料は腐らせてしまうだけだ。


だけど時間停止のアイテムボックスがあれば、腐る心配はなく、食料をいくらでもストックできる。


無人島においては強力な武器の一つといえるだろう。








さて、私は森を歩いた。


野草やキノコを集めつつ……


湖で水も確保したいと思ったからだ。


生活に、水は結構使う。


昨日採取した水は使い切ったので、今度はもっと大量の水を集めておきたいと思う。


あと……


(釣りをしてみたいな)


湖で魚釣り。


それも面白そうだと思う。


釣った魚は、調理すればたぶん食べられるだろうしね。






さて、湖に到着。


クラフトスキルを使って釣竿を作る。


釣竿に必要な素材なんて正直わからなかった。


けど、クラフトスキルは、製法がわからなくても、魔力を消費するのと引き換えにクラフトを成功させてくれるのだ。


明らかに材料が足りてない場合でも、完成品ができあがるクラフトスキル。


とんでもないチート能力だと思う。





そのチートスキルのおかげで、釣竿を製作できた。


竿立ても製作する。


餌は森で採れたイモである。


ルリアさんが言うにはこれで釣れるらしいので、釣り餌として使ってみることにする。


私は湖のほとりに立って、フィッシングを始める。


湖には魚がたくさんいる。


まあ、適当に待ってたらアタリが来るだろう。


釣竿を竿立てにかけて、放置する。


……。


………。


うん、暇だ。


まあ、のんびり待とう。


待つ。


待つ。


待つ。


待ちながら、遠くの山並みを眺める。


美しい山の緑。


青い空。


雲がゆったりと流れている。


湖は凪いでいる。


その凪いだ湖面に、陽光が落ちて、きらきらと光の粒が踊っている。


本当にのどかな島だ。


時間が静かに流れているような錯覚さえ覚える。


自然と、心拍数が落ち着いて、呼吸が深くなっていくような、そういう平穏さがある。


もっと奥にいけば魔物がいるらしいけど、このあたりは、魔物は全然いないしね。


ふー。


一つ深呼吸。


と、そのとき。


「わっ!? かかった!」


私は釣竿が大きく湾曲したのを確認して、慌てて竿を持った。


へたくそながら一生懸命リールを巻いてたぐりよせる。


いや、結構引きが強いぞ!?


大物だったら嬉しいな……


とか思いながら魚と格闘する。


15秒ほど押したり引いたりを繰り返す。


いよいよ魚影が見えてきた。


そこそこのサイズの魚だ。


あともうちょっと!


ぬっ、うおおおお!


「ふんぬっ、よし、釣れたぁ!!」


無事に魚を一匹、釣り上げた。


3、40センチぐらいのニジマスだ。


いや、ニジマスなのか?


鑑定魔法で名前を確かめる。


◆◆◆


【カガリマス】

脂身が乗った魚。

可食。


◆◆◆


ほうほう。


カガリマスって言うんだね。


脂身が乗っているのかぁ。


どんな味がするんだろ?


でも美味しそうだね。


とりあえず、生きた状態ではアイテムボックスに入れられないので、殺しておく。


そして収納。


「よーし、この調子でじゃんじゃん釣っちゃおう!」


一匹釣れたことで、俄然、テンションが上がってきた。


私は再度、針を投げる。







かくして4時間ほど、湖で釣りを行った。


釣果は、5匹。


カガリマスx2


サッコウウオx2


イゴコイx1


マスとウオと鯉だ。


どれも美味しそう。


さすがに一日で全部は食べられないけどね。


私は釣果に満足して、らんらん気分で家へと帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る