第1章6話:スキル石



森に入ってすぐに、ルリアさんが立ち止まった。


何かを思い出したように告げる。


「あ、そうだ。これを先に渡しておくわ」


ルリアさんが何もない空間から、一つの鉱石を取り出した。


美しく緑色にきらめく石だ。


「これはスキル石よ」


「スキル石?」


「ええ。使用するとスキルを習得できる石。これを使いなさい」


「私に頂けるんですか?」


「ええ。そのスキル石に入ってるスキルを習得すれば、かなり島での暮らしがラクになるはずよ」


そうなのか。


私はスキル石を受け取る。


自分の手のひらに乗せると、ほんのりと温かくて、不思議な力を感じる。


本当に美しい石だ。


そのエメラルド色の輝きを見つめていると、吸い込まれそうになる。


「使い方は、スキル石に念じるだけよ」


「わかりました」


念じる、といわれてもいまいちピンとこないが、要は強く意識を向けたらいいのだろうか?


私は目を閉じて、そのようにやってみる。


すると――――


「あ……」


身体中が温かくなって、思わず目を開ける


エメラルドの鉱石の光が、私の身体にまとわりついていた。


なんと幻想的な光景なんだろう。


しばし、呆然としてしまう。


そうして数秒後。


光は消えていった。


気づくとスキル石は色褪せ、石くれのようになって砕けていた。


「習得完了したわね」


「そうなんですね。でも、どんなスキルを習得できたんでしょうか?」


「それはね……冒険に必要なスキルセットよ」


「スキルセット?」


「複数のスキルをひとまとめにしたもののことよ。このスキル石に入っていたスキルは4つ」

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