第1章2話:無人島




私は、静かに目を開けた。


そこは砂浜だった。


青い空。


青い海。


海風が優しく吹きつけていた。


寄せては返す波。


優しい日差しが海に落ちて、波が燦然ときらめいている。


足元には貝殻が落ちている。


ヤドカリがのろのろと歩いていた。


「ここは……」


一瞬、自分がどこにいるのかわからなくて困惑する。


しかし、すぐに女神様の言葉を思い出した。


ここは異世界。


島。


女神様が私に与えてくれた無人島である。


背後を振り返ると、原生林が広がっている。


(……本当に、異世界に)


信じられない気持ちになる。


でも、事実だ。


夢じゃない。


直感的に理解する。


(たしか……念じればステータスを開けるんだっけ)


女神様に言われたことを思い出す。


私は「オープン」と頭の中で念じてみた。


すると――――


「おおっ」


胸の高さにステータス画面が現れる。


まずプロフィールが表示される。


名前:アオイ


年齢:120歳


と記載されている。


その下にはレベルや攻撃力などのパラメータ値が表示されていた。


なお右下には「5月1日」という日付と「12:00」と時間が書かれている。


(なるほど……今は春なのか)


さらに左下のアイテムボックスと書かれたボタンを押してみる。


すると、画面が切り替わりアイテムリストが表示される。


アイテム欄には『姿見』と書かれたアイテムがあった。


それを選択すると目の前に姿見が現れた。


「なるほど……これが私、ですか」


姿見に映った自分の姿。


黒髪のロングヘア。黄色の瞳。


ローブ。


まるで魔法使いのようだ。


さて、自分の姿は確認できた。


これ、アイテムを収納するときはどうすればいいのかな。


わからなくて、困惑する。


と、そのとき。


姿見の背面に、なにやら文字が書かれているのを発見した。


見たこともない文字だが、なぜか読むことができた。


――――アイテムを収納するときは、アイテムに手をかざしながら『収納』と念じてください


女神様の伝言だろう。


理解したので、さっそく実践する。


(収納……!)


念じる。


よし。


姿見を収納できた。


そのままステータスを閉じた。


「さて……」


まず、何をすべきかを考える。


ここは無人島。


やはり住居の確保をしたい。


水や食料も欲しいな。


(とりあえず、島を散策してみましょうか)


海に背を向けて振り返る。


そこには原生林が広がっている。


森に入れば何かあるかもしれない。


私は、ゆっくりと歩き出した。


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