第16話 陽葵の過去とナデナデ

あの猿どもに絡まれた後、私たちはたまたま近くにあったカフェに来ていた。


フフフ・・・甘そうなメニューがいっぱいだ・・・!これらを食せばダイエットせねばならないのは目に見えている・・・!




だが!


今日だけ、今日だけはこの罪深い行為糖分の大量摂取をお許しください。




・・・もういいかな?


よしじゃあこのバカみたいにデカいパフェに決まりだ!



「えと、ホイップロールケーキと、アイスコーヒーください。」

「じゃあ同じくアイスコーヒーと、ギガトンフルーツパフェで。」

「!?」


視界の隅で陽葵くんがびっくりした顔で固まっているのが見えたが、気にしないことで精神的ダメージを回避する。


・・・わかってるよ食べ過ぎだって。




・・・・・・・・・・・・



10分後。


ドドーン・・・(パフェの効果音です)


もはや立つというよりそびえ立つという表現が似合う全高40㎝近いフルーツパフェが来た。

いや~うわさに聞いていたがやはりデカいな。



「・・・・・・」



見てみろ陽葵くんなんてその大きさにポカーンとしている。

・・・というかなんだあのポカン顔かわいすぎんだろふざけんな。


因みにその陽葵くんの前には厚さが5cm半径も15㎝くらいあるロールケーキが置かれていた。

私から見たらそれも十分大きいと思うのだが。陽葵くんがそんな甘いものが好きだったとは意外だな・・・


え?あ、思ってたより大きかったのね。




てかこのパフェ美味しそう・・・じゅるり


はっ・・・!いかんいかん。パフェを食べに来たんじゃないんだった。



「・・・それで、あいつらについてなんだが」

「いやその顔で話しても入ってこないと思いますよ?とりあえずいただきませんか?」

「・・・・・・それもそうだね!じゃあお言葉に甘えようかな!」



陽葵くんに食べたいのバレてた~・・・いやはっず!!めっちゃ恥ずかしいんだけど!?



「「いただきます。」」



ふむ・・・うん。甘い。がっつり甘い。何人もの彼氏どもを胃もたれで沈めてきたであろう百戦錬磨の甘さだ。



だがそれが美味しい。

もしかして陽葵くんも1口いるかな?



「陽葵くんも1口いる?」

「結構です。」



・・・・・・


秒速で断られたんだが。すごいね。今目の前でシャッター閉まったよ?

私じゃなかったら泣いてるよ?私も帰ったら泣くけど。


「陽葵君は甘いものは好きじゃないの?」

「好きですよ?好きなんですけど、今日はロールケーキで十分です。」

「そっか。・・・あ、まさかカロリーを気にして?」

「・・・勘のいい蘭さんは嫌いです。」



そうかそうか、陽葵君もそういうことを考える人なんだな。(・∀・)ニヤニヤ

いやぁ新しい発見をすると気分がいいなぁ。



「な、何ですかその生温かい目は。」

「なんでもないよ。・・・それで、あいつらについてなんだが」



一呼吸置き、陽葵くんが真面目な顔になってから話し始める。



「あいつらが陽葵くんを虐めた張本人で間違いないんだな?」

「・・・・・・はい。」

「そうか・・・教えてくれてありがとう。」



石崎美玖、井上ななみ、川口早紀・・・か。よし殺す。絶対殺す。

お前たちのすべてを否定し心身ともに抹殺する。



「何をされたか、とは聞かないんですね?」

「え?ああ、それは・・・」



見透かしたような眼でこちらを見てくる陽葵くん。多分これは誰から聞いたのかもバレている。

・・・これ以上隠すのは無理だな。



「・・・ああ。莉心ちゃんが教えてくれたんだ。」

「でしょうね。あの事を知っているのは高校で莉心さんくらいですし。」

「・・・知っていたんだな。」

「いえいえ、想像できるだけです。」



だとしたら相当頭いいけどね君。


というか陽葵くん私の仕事スピードについて来れてたねそういえば。じゃあ問答無用で頭いいじゃん。


・・・はっ!?なら陽葵くんにインテリ属性も付与されるわけだ。

つまり陽葵くんは『最高にかわいくて女子力が高くて気配りができて優しくて頭が良くてめちゃかわでかわいい男の子』という訳だ。


最高か?



「・・・蘭さん変なこと考えてません?」

「そんなことないが。」

「・・・そうですかぁ?」



特に意味はないが、陽葵くんの属性にエスパータイプであることも追加しておこう。


特に意味はないが。



「それで・・・その。」

「うん?どうした?」

「僕の恋人のフリをしていただき、すみません。ありがとうございました。」



・・・あ~~、ね。うん。そのことか。私としては恥ずかしいからあんまり掘り返されたくないな~なんて。



「ああ、私こそごめんね。いきなりそんなこと言って。びっくりしたよね」

「いえ。その・・・蘭さんは、それでよかったのかなって。」


「・・・え?」


良かったも何も私としては本望だが?成り行きというかその場の雰囲気でたまたま恋人になれただけだけどめちゃくちゃ嬉しかったんだが?


なんなら陽葵くんと距離縮められそうだラッキーとも思っていたんだが?



「僕の恋人のフリをして、いやな思いをしてないかな、と思いまして。」

「・・・あ~、うん。なるほど。」



まあ確かに一般的には、周りに勘違いされたり恋愛感情を抱いていない相手に告白されてそのあと付きまとわれるだったりそういうリスクを考えてあんまり良い思いはしないのかもしれない。


でも相手が陽葵くん大好きな人だからなぁ。そうなってしまえば私はもう無敵よ。


あでも煽られすぎると陽葵くんに嫌われるかもしれないリスクもあるのか。

・・・でも私にはプラスしかないからなぁ。暴力的に狙われても私より強い人間なんてそんなに居ないし。


・・・というかシュンとしてる陽葵くんかわいすぎ。ナデナデしてもいい?


いいやしちゃえ



ぽん。なでなで・・・


「まあ、陽葵くんの言いたいことはわかる。ただ、私は陽葵くんの彼女になるのが嫌だなんて思ってないよ。」

「・・・ほんとですか?」

「もちろん。じゃないとお願いされてもいないのに彼女を名乗ったりしないよ。」

「それは・・・ですが、蘭さん凄く優しいですし・・・」



あーうん。それはね、相手が君だからだよ。

私は別に誰にでも優しいわけじゃないからね?



「まあ、私は気にしてないから、陽葵くんも気にしないで。」

「またそれですか・・・わかりました。善処します。」

「うん。それで十分だよ。」

「・・・あと、もう1つだけいいですか?」

「うん、いいよ。どうしたの?」

「・・・いつまで僕の頭なでてるんですか?」

「あぁ、う~ん・・・私が満足するまでかな♡♡♡」



結局20分ほど撫で続けて、最終的に陽葵くんに怒られたのは言うまでもないだろう




――――――――――――――――――――――――――――――――


帰宅後(蘭)


蘭「ただいま~」


澪「あ!おかえり~!デートどうだった!?」


怜「仲は深まったのかしら?」


蘭「ああ、それは・・・あれ?私二人に今日デートに行くなんて言ってないとはずなんだけど。なんで知ってるんだ?」


澪「え?そんなのお姉ちゃんの雰囲気でわかるよー!」


怜「何年あなたの親をやってると思うの?」


蘭「・・・私ってそんな分かりやすい?」


澪「わかりやすいっていうか~・・・いままで恋愛とか全然興味なかったじゃん?だから、なんというか目立つんだよね。」


蘭「目立つ・・・なるほど?」


怜「普段の行いのせいね。」


蘭「う、うるさいな・・・」


澪「で?キスしたの?」


蘭「!?げほっげほっ!何をいってる!?私たちはまだ付き合ってすらないんだぞ!?」


澪「え?あ、そうなの!?・・・ってそうか。お姉ちゃん恋愛なんてしたことなかったもんね。」


蘭「いやな納得のされ方だなぁ!」


怜「じゃあ、手は繋いだのかしら?」


蘭「ああ。繋いだ。それにハグもナデナデもした。」


怜「!!!???」


澪「ぶふっ!?え?!それでまだ付き合ってないの!?」


蘭「?そうだが。」


澪・怜「「蘭(お姉ちゃん)・・・恐ろしい子!!」」


蘭「なんだそれ。」


―――――――――――――――


帰宅後(陽葵)


蘭さんが・・・僕の彼女・・・


「~~~~~~~~~~~~っっっっっつ!!!!!!!??????」



い、いやいや。そんなことは言っていません。落ち着くのです陽葵!!


ああああああこうなるから大丈夫かって聞いたんですよぉ!明日からまともに顔合わせられませんって!!


ああああああ・・・ただでさえあんなに距離近いのに・・・!!

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