第9話 雨宿りと、神林家


今回は陽葵君目線のみのお話です!

その代わり蘭さんの心の声が時々出てきます!


――――――――――――――――――――――――――――――――――


「・・・・・・(アングリ)」

「ここがリビングだ・・・ん?お~い、どうした陽葵君?・・・ああ、驚いたかな?普通の家より大きいだろう?」


・・・・・・大きいってレベルじゃないですよ。


ドドーン


「・・・・・・普通の家と比べないでください。もはやリビングに僕の家がまるごと入りそうなんですけど?」

「え?そんなに大きくはないと思うけど・・・」


大きいですよ!めちゃくちゃね!


目の前に広がるは蘭さんの家のリビング。

その大きさにびっくりしすぎて言葉が出てきません。


なぜこんなことになっているかというと・・・









ザアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!


はい、この雨のせいでございます。

下校中に、突如土砂降りの雨が降り始めたので、蘭さんの家に雨宿りさせて頂いているのです。


のですが、その蘭さんの家が大きすぎてびっくりしたのです。


「辰巳さん!タオル持ってきてくれ!2つ!」

『2つ、ですか?』

「ああ!2つ!友達がいるんだ!」

『ああ、畏まりました。すぐに持ってまいります』


驚いてる僕を尻目に蘭さんが何やらインターホンらしきものに話しかけて、タオルを持ってくるお願いしてくれました。


・・・ちなみにそのお相手はどなた?


「お待たせしました。タオルを持ってまい、り・・・ました。」

「ああ、ありがとう!」

「・・・・・・」


小走りでタオルを持ってきてくれた初老の紳士さんが僕の方を見て、一瞬固まった。ちなみに僕も紳士さんを見て固まった。え?執事さんだよね?この家執事さんいるの?どんなセレブ?


「陽葵君。はい、タオル・・・いや、ちょっとまって。」

「え?あ、はい。」


蘭さんが何故か僕にタオルを渡してくれませんでした。

まあ、幸い家の中は温かいですし、すぐに風邪をひくこともないと思いますが・・・ちょっとショックです。


「陽葵君、ちょっとそこでじっとしてくれるかな?ああ、目をつぶってても大丈夫だからね。」

「え?え?蘭さん何をする―――」


というかなんで蘭さんタオル持って―――




わしわし


「わあっぷ」


突然蘭さんが僕の頭をタオルで拭き始めました。


わしわしわしわし


「んみゅぅ・・・」


こ、これは・・・なんというか、人に子ども扱いされてるのは恥ずかしいはずなんですけど、蘭さんの包容力が凄すぎて嫌じゃいないというか・・・


あと、身長差の関係で目の前に蘭さんの、その、胸が躍ってて・・・

こ、これは良くないです!いち思春期の男子にこれは刺激が強すぎます!


「うふふ、そのままじっとしててね・・・あんまりしたことないから力加減分からないんだけど、大丈夫?痛くない?」

「は、はいぃ・・・」


良くない・・・んですけどぉ・・・抵抗、できないですぅぅ・・・


というかいつものイケメン蘭さんはどこに行ったんですか!?

今日の蘭さんはなんか・・・母性が・・・!


「ふう、よし。拭き終わったよ。」

「あ、ありがとうございます!」


や、やっとご褒美なのか罰ゲームなのかわからない時間から解放されました!


「じゃあ、一緒にあったかいお茶でも―――」

「その前に、お嬢様もお体をお拭きになられたほうがよろしいかと」


・・・そういえば蘭さんめっちゃさらっとしか拭いてなかったような。


「・・・私はもう拭いたんだが?」

「まだしっかり拭けておりませんよ。」

「・・・ちっ」


舌打ち!?


そ、そんなに拭くのが嫌なんでしょうか・・・?ま、まあ蘭さんは髪長いし確かに面倒なのかも知れません。


いや、でも僕は蘭さんが風邪をひいてしまうの嫌です!

勝手なお世話かもしれませんが・・・


くいくい


「蘭さん蘭さん、僕のことを気遣ってくれるのはすごく嬉しいです。でも、これで蘭さんが風邪をひいてしまったら辛いです!」


「え、あう、そ、そうか・・・うん、注意、あ、ありがとう・・・もうちょっと、しっかり拭くね。(裾!ふ、服の裾つままれておねがいされてる!かわいい!かわいすぎるって!もはやおねだりでしょこれ!!)」


なぜか顔を赤くしながら髪を拭きはじめる蘭さん。

余計なお節介だと思われても仕方なかったのですが、すんなりお願いを聞いてくれてよかったです。


・・・ん?


「・・・・・・」


何故か紳士さん(たつみさん、でしたっけ?)がこっちをじっと見ていました。


「?どうしました?」

「ああ、いえ、何でもございません。お気を悪くさせてしまい申し訳ありません。」

「いえいえ、ちょっと気になっただけなので謝らないでください。」

「陽葵様の寛大なお言葉に感謝いたします。では、私はお風呂を沸かしてまいります。陽葵様もお入りください。」


入る?何に?・・・蘭さんの家のお風呂に?・・・・・えええぇ!?


「ええ!?そ、そんな悪いですよ!僕何もしてないのに・・・」

「そんなことはございません。先ほどお嬢様が風邪をひかないようお願いしていただいたではありませんか。」

「い、いや、確かにしましたけど・・・!あれは僕がそう思ったからで・・・!」

「辰巳さん?陽葵くんと何を話してるんだ?」


あ、蘭さん。終わった。この人も多分僕をお風呂に入らせようとする。今までの経験則だけど、蘭さんも割と余裕があって甘やかしてくる気がする。


「現在お風呂を沸かしているのですが、陽葵様にもお風呂に入っていただけませんかとお願いしているのです。このままだと体が冷えてしまう恐れがありますので。」

「で、陽葵君はなんて?」

「『何もしていないのに入るのは悪い』と。」


あああ僕の割り込む隙間がない!


「嫌がってるわけじゃないのか?陽葵くん、お風呂に入るのは嫌?それとも、世話になるのが申し訳ない?」


うううううう、その聞き方はずるいですよぉ・・・


「いやじゃないです。ただ、これ以上、ここにご迷惑をおかけするのは・・・」

「じゃあ入って。私たちは迷惑なんて思ってないから。ね?」

「もちろんでございます。ささ、準備はできておりますので。」


これは逃げられません・・・それに、たつみさんはまだちょっとわかりませんが、少なくとも蘭さんは本当に迷惑と思ってなさそうでした。


雨宿りだけでなくお風呂まで貸していただけるとは・・・


「は、はい・・・では、お借りします。」


そのあと、僕はゆっくり湯船で温まりました。


ちなみに、蘭さんは『どうせまた入るしシャワーだけでいいや』とシャワーだけで済ましてました。・・・僕もそうしとけばよかったです。



その後、お互い湯上りの姿にドキッとしたり、


「(うわぁ・・・蘭さん綺麗だなぁ・・・それに色気が増してるような・・・)」

「(うわああああああああああああ湯上り陽葵くん洗った後の子犬みたいでめっちゃかわいいんだけど!!わしゃわしゃしたい!!)」


我慢できなくなったらしい(?)蘭さんにまた頭を拭かれたり、


わしわしわしわし


「(蘭さんの力加減が絶妙で・・・すっごい気持ちいいです・・・)」

「(陽葵くんが私の腕の中で無防備に・・・♡うわ、なんかすっごいぎゅーってしたくなってくるな・・・どんな反応してくれるかな・・・怒るかな?びっくりするだけかな?案外受け入れてくれたり・・・♡いやいや、もうちょっと仲良くなってからじゃないと・・・でもこんなチャンスは滅多にないし・・・)」


何故か蘭さんに頭を撫でられた(ような気がした)りしました。


「(うん・・・?多分、髪の水気が取れたか確かめてくれてるんでしょうけど・・・ちょっと長くないです?)」

「(ぎゅーはまた今度・・・今ここで嫌われたら元も子もないもんね。だから、今は水気を確かめるふりの頭ナデナデで我慢我慢♡それにしても触り心地良いなぁ・・・このままずっと触ってたい。触ってたいけど・・・もう怪しまれてるかもだし、もう終わらないと。)」




そのあと蘭さんはお昼ご飯までご一緒したいと言ってくれました。


「しかし、陽葵様のご家庭の都合もございますでしょうし、一度陽葵様のご家族の方にお尋ねされた方がよろしいのでは・・・?」

「それはそうか。陽葵くん、私と一緒にお昼食べていいかご家族に聞いてみてほしいんだけど、いいかな?」


なんなら自分が電話かけようか?と気合を入れる蘭さん。


丁重にお断りします。


「それに関しては大丈夫ですよ。今日はみんな出掛けてていませんし、母から『冷蔵庫の中のものは好きに使っていいからお昼ごはんは自分で作ってね』って言われてますし。一応一言メッセージだけ送っておきますけどね。」


『友達の家でお昼ご飯をごちそうになります』、っと。


「そうなのか。じゃあ陽葵君は何食べたい!?大体何でもあるぞ!」


食べたいもの、食べたいものですかぁ・・・


「いえ、特に食べたいものはないですねぇ。」

「え・・・」

「誰かが作ってくれるならそれだけですっごく嬉しいです!」


よく料理を作る者として、御馳走とはこの一言に尽きます。


「・・・そうか。わかった!じゃあ、辰巳さんにお任せで作ってもらおう!陽葵くんアレルギーってある?」

「ないです!」

「お腹は空いてる?」

「空いてます!」


さっきからお腹鳴らないか心配だったんですよぉ・・・


「よし!じゃあ辰巳さん!お任せで何か作ってくれるかな?」

「では、ベーコンたっぷりのカルボナーラなんていかがでしょう。」

「「!!!」」


大変美味しくいただきました。





・・・・・・・・・・・・


午後3時頃。


「そろそろ雨も止んできましたねえ。」

「そうだなぁ・・・もう帰るのか?」

「まだまだここで蘭さんとおしゃべりしたいところなんですが、そろそろ買い物に行かないといけませんし・・・」

「う~ん、そっか~・・・」


蘭さんがしょんぼりしています。かわいい。

でも、まだお昼ご飯やお風呂のお礼もできてないですし・・・あ、そうだ。


「明日なんですけど、蘭さんってご予定あります?」

「ん?いや、ないな。」

「では、今日のお礼を持ってくるので明日またお邪魔させt―――」

「いいぞ!!い・つ・で・も!来てくれ!」

「アッ・・・ハイ。お邪魔させていただきます。」



さて、お礼は・・・お菓子にしましょう



―――――――――――――――――――――――――――――――


陽葵が帰った後。


澪「ただ~いま~」

蘭「おかえり!」

辰「おかえりなさいませ。」

澪「・・・ん?なんで二人ともニッコニコなの?」

辰「実は・・・・・・」


かくかくしかじか


澪「え~~~~~~!!!???なんで引き留めてくれなかったの!?私も会いたかったのに~~~~!!!」

蘭「落ち着いて。陽葵くんだって陽葵くんの都合があるんだ。無理に引き留めることができないのはわかるだろう?」

澪「うう・・・そうだけど・・・」

蘭「それに・・・」

澪「それに?」

蘭「明日、また来てくれるから。」

澪「・・・え?本当に!!??」

蘭「ああ。約束した。」

澪「ありがとうお姉ちゃん!!楽しみ~~~~!!!」

蘭「ところで、なんだが。」

澪「ん?どしたのお姉ちゃん。」

蘭「なんで陽葵くんのこと知ってるんだ?」

澪「へ?・・・あ~、う~ん、えっとね・・・言っていいのかな・・・」

蘭「私との仲を引き裂くためとかよっぽどのことじゃないと怒らないよ。」

澪「そんなことじゃないよ!!ただ、あの・・・お姉ちゃんが・・・」

蘭「私が?」

澪「めちゃくちゃ見る目が厳しいお姉ちゃんが、好きになった人ってどんな人なんだろうな~って・・・気になって・・・」

蘭「・・・・・・」

澪「えとえと!ご、ごめんね?!そ、その、お姉ちゃんのプライベートなのはわかってるんだけど―――!」

蘭「・・・なあ」

澪「はいいぃ!!?」

蘭「私ってさ、そんな、わかりやすい?」

澪「え?うん。」

蘭「~~~~~っ!!!!????」

澪「・・・お、お姉ちゃん?」

蘭「い、いや・・・気にしないでほしい。ちょっとショックを受けただけだから。」

澪「(とてもそんな風には見えないけど!!??)」

蘭「取り敢えず、うん。理由はわかった。疑ってごめんね。」

澪「あ、ううん、気にしないで。」

蘭「・・・・・・・・・(ションボリ)」

澪「(お姉ちゃん、もしかしてあれ?恋心を初めて知った女騎士みたいな感じなのかな?)」


思い付きだけどめっちゃしっくりくるな・・・と思った澪なのであった。

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