第8話 二人の帰り道とハプニング
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現在、私は。
「でさ、その時父さんが『聞いてないよ!?』ってなんかびっくりしてて。いや、言ってないし!って」
「あははははははは!そうですよねぇわざわざ言う必要ないですもんね!」
念願の陽葵くんとの下校中である。
あのね、すっごい幸せ。
家に帰ってからもLIMEするし、なんならたまに二人で電話するんだけど、それでも一緒に帰るのは違うよね。
「そういえば、陽葵くんの最寄り駅はどこなの?」
「僕の家の最寄り駅ですか?椿ヶ丘です。」
なんだと!?椿ヶ丘!?
「え!?椿ヶ丘!?一緒じゃん!!」
「えぇ!?」
まさか家の最寄り駅が一緒だなんて・・・そんな偶然があるのか。
登校の時よく会うから同じ方向なんだろうな~とは思ってたんだけど・・・まさか一緒だとは。
はっ!?これも運命!?・・・さすがにこじ付けか
しかし、じゃあなぜ椿ヶ丘で会ったことがないんだ・・・?
・・・あ、もしかして。
「・・・もしかして、陽葵くん快速に乗ってる?」
「はい!・・・あ!蘭さんはもしかして普通で行ってます!?」
「ああ。混むのが嫌でね・・・どうりで会わなかったわけだ。」
「乗る電車が違ってたんですね。」
なるほど、陽葵君は快速に乗る派だったのか。
私も朝日ヶ丘に受かった時どっちにするか考えたことあったなぁ・・・
結局私は朝から疲れたくないということで、普通を選んだ。
空いてる方が安全だしね。
陽葵君は混むのがキツく無いのか?そのしんちょ・・・ゴホンゴホン。
でも、朝日ヶ丘で陽葵君疲れてるとこ見たことないなぁ・・・何か秘策があるのか、ただ単に陽葵君がぐっすり寝ているからすごく元気なのか。
・・・今度、一緒に快速乗ってみようかな。ああ、でも一緒に普通に乗った方が長くおしゃべりできる・・・いやいや、朝から弁当を作るなんて私じゃ到底できない事をしている陽葵君をこれ以上早起きさせてしまうのも・・・
~間もなく、3番線に青柳行きの快速が8両編成で参ります。危険ですから黄色い点字ブロックの内側に下がって、お待ちください~
~途中の停車駅は、江原、椿ヶ丘、橘町、樹、花御園、荒田津川、茜、櫻台です。~
そんな風に迷っていると快速が来た。
「そうなのか・・・じゃあ、案外ご近所さんなのかな?」
「そうかもしれませんねぇ。でも、僕たち中学校違いますよね?」
私が私立だからね。
「そりゃ私は私立の女子中だからね。橘中だよ。」
「あ!そうなんですね!」
「陽葵くんはどこ中なの?私立?公立?」
「僕は橋口中です。公立ですよ。」
「え!?橋口!?・・・私のうち橋口中校区内なんだよ。もしかしてほんとにご近所さんかも知れないね?」
くっそ!橋口中に行っていればあと3年早く陽葵君に出会えたというのか!
これは甚大な損害だ!不覚だ!
それはそれとして、陽葵君とご近所なのは超嬉しい。だってデートの待ち合わせとかめっちゃしやすい・・・ってなに陽葵君と付き合う前提で考えてるんだ私は!!!
しかし、橋口校区といっても端と端だと流石に遠い。
「え、ねえねえ陽葵くんはマルダイスーパーって行ったことある?」
「よく行きます!」
あそこの魚美味しいんだよなぁ。わたくしいつもお世話になっております。
「大きい方と小さい方どっちの入り口が近い?」
「大きい方です。蘭さんは?」
「私も!大きい方が近い!ホントに私たち家近いかも。」
「ホントですか!?」
マジで近所じゃん!?歩いて10分かからないんじゃない!?
デカい!デカすぎる!!好きな子の家近いはめっちゃデカい!
「でも、そんなに近所なら何で僕蘭さんのこと知らなかったんでしょう・・・こんなキレイな人がいるなら噂の一つくらいあっても良いと思うですけど。」
・・・ふぇ?・・・・・・はぁ!?
き、ききき、綺麗って・・・んな、何を言って・・・!!!
「・・・・・・は!?な、なん」
ひ、陽葵君が・・・私のこと綺麗って・・・ああっ、ヤバっ
すきすきすきすき今すぐぎゅーってして陽葵くん堪能したい。
「―――――――――――っっっっ//////////」
「うわぁ!?ら、蘭さん!?」
うううううううう真っ赤な顔見られたぁ・・・恥ずかしい・・・!
「ら、蘭さん?どうしました?大丈夫ですか?」
「あ、ああ、いや、私は大丈夫、ではあるんだけど、その・・・陽葵くんは私のことを、綺麗と思ってくれてるの?」
これで言葉に詰まられたら傷つくなぁ・・・
「え?はい。当り前じゃないですか。」
「!?!?!?」
何でもないように言い切った~~~~~!
はい神。大好き。
~椿ヶ丘、椿ヶ丘です。左側の扉が開きます~
「そ、そっか・・・あ、ありがとうね。嬉しい。」
「いえいえ。」
そんなときだった。
ぽつ・・・ぽつぽつ・・・
「ん?雨か?」
確か折り畳みがカバンの中に・・・
「そういえば天気予報で降るって言ってたような・・・」
「ああ、確かそんなの強くないが突発的に降る、って言ってたな。」
ぽっぽっぽっぽぽぽぽぽ・・・ザアアアアアアアアアア!
「うわあああああ!?なんかめっちゃ降ってきました!?」
「マズいな・・・陽葵くん!ここから家まで何分だ!?」
幸い私の家はすぐそこだ。歩いても2分で着く。ここは走るか・・・
いや!陽葵君のいえはどうなんだ!?私と同じように近いと良いが。
「じゅ、10分くらいです!」
この雨の中を10分だと!?そんな苦行を陽葵君にさせてはならない!
そんなこと私の良心(と恋心)が許さない!
「わかった!私の家はすぐそこだから、いったん私の家に雨宿りしていってくれ!」
「えぇ!?そ、そんな、悪いですよ!」
んなこと言ってる場合じゃない!もしこのまま帰して陽葵君が風邪をひいたら堪ったものじゃないぞ!
「そんなこと言ってる場合じゃない!この雨の中友達を10分歩かせるほど私は鬼じゃない。いいから行くぞ!」
「は、はい!」
陽葵君の手を強引に掴み、私の家に連れて行った。
・・・陽葵くんのて、めっちゃ柔らかくて温かかった。あと家ほんとに近いかも。
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蘭さんの仕事が速すぎる。
総務委員になって初めての仕事を終えたとき、真っ先に出てきた感想です。
学級総会って本来は1時間以上かかるものなのだそうですが、蘭さんが本気で頑張った結果30分くらいで終わってしまいました。
いくらなんでも速すぎる。
とまあ、そんなことは置いときまして。
「でさ、その時父さんが『聞いてないよ!?』ってなんかびっくりしてて。いや、言ってないし!って」
「あははははははは!そうですよねぇわざわざ言う必要ないですもんね!」
現在僕は蘭さんと一緒に帰宅中。
仲良くなって1週間が経ちましたが、実は一緒に帰るのは初めてなんです。
ちなみに僕は先ほど気づきました。
駅から学校まで登校してたり帰ってからもLIMEでお話ししたりしてたのであんまり実感なかったんですよね。
おしゃべりしながら10分ほど歩き、学校の最寄り駅に着きました。
「そういえば、陽葵くんの最寄り駅はどこなの?」
「僕の家の最寄り駅ですか?椿ヶ丘です。」
「え!?椿ヶ丘!?一緒じゃん!!」
「えぇ!?」
最寄り駅が一緒!?全然気づきませんでした!
登校するときも全然会わないし、下校の時も・・・ってそうだ一緒に帰るの今日が初めてなんでした。
でも、時間帯も同じはずですし、乗る電車が同じなら駅で会ってもおかしくないんですけどね。
「・・・もしかして、陽葵くん快速に乗ってる?」
「はい!・・・あ!蘭さんはもしかして普通で行ってます!?」
「ああ。混むのが嫌でね・・・どうりで会わなかったわけだ。」
「乗る電車が違ってたんですね。」
椿ヶ丘から朝日ヶ丘までは普通で25分かかりますが、快速なら13分で行くこともできるんです。まあ、その分混むんですけど。
なので、早くいきたい派と空いてる電車に乗りたい派に分かれるんです。
なんですが、僕らが登校する時間帯は朝日ヶ丘で停車待ちをする関係で普通と快速の到着時刻がほとんど一緒なんですよね。
だから椿ヶ丘では会わず朝日ヶ丘でだけ会う、という状態になった訳です。
・・・なんか軽いトリックみたいです。
確か花御園駅でも快速の停車待ちをするはずなので、それも使うと、
普通だけなら間に合わないけど、間に停車待ち駅が2つありそれを利用してある区間だけ快速に乗って前の普通に追いつくことで実は間に合わせることができる、
というトリックが出来そうです。小学生向けの推理漫画くらいには使えそうですね
まあだからなんだという話なのですが。
~間もなく、3番線に青柳行きの快速が8両編成で参ります。危険ですから黄色い点字ブロックの内側に下がって、お待ちください~
~途中の停車駅は、江原、椿ヶ丘、橘町、樹、花御園、荒田津川、茜、櫻台です。途中~
そんな話をしていると快速が来ました。
「そうなのか・・・じゃあ、案外ご近所さんなのかな?」
「そうかもしれませんねぇ。でも、僕たち中学校違いますよね?」
しかも僕の家は校区ギリギリってわけじゃないので、もしかしたら結構離れてるかもしれませんし。
「そりゃ私は私立の女子中だからね。橘中だよ。」
「あ!そうなんですね!」
「陽葵くんはどこ中なの?私立?公立?」
「僕は橋口中です。公立ですよ。」
「え!?橋口!?・・・私のうち橋口中校区内なんだよ。もしかしてほんとにご近所さんかも知れないね?」
え!?マジですか!?
「え、ねえねえ陽葵くんはマルダイスーパーって行ったことある?」
「よく行きます!」
あそこは鮮度良いし割安で、この近所で生鮮食品を買うならあそこ一択ですね。
よくお世話になってます。
「大きい方と小さい方どっちの入り口が近い?」
「大きい方です。蘭さんは?」
「私も!大きい方が近い!ホントに私たち家近いかも。」
「ホントですか!?」
な、何で知らなかったんでしょう。
こんなキレイな人がいたら話題になりそうなものなんですが。
「でも、そんなに近所なら何で僕蘭さんのこと知らなかったんでしょう・・・こんなキレイな人がいるなら噂の一つくらいあっても良いと思うですけど。」
「・・・・・・は!?な、なん」
とっても不思議です。
中学校は違いますけど、小学校は・・・ってそうか。橘なら小学生から行っててもおかしくないですね。
それでも全然聞いたことがないなんて・・・
何者かが蘭さんを隠そうとする意思を・・・感じないこともないような気がします。
そういえば蘭さんが静かなような・・・
「―――――――――――っっっっ//////////」
「うわぁ!?ら、蘭さん!?」
どうしたんでしょうか!?顔が真っ赤です!
「ら、蘭さん?どうしました?大丈夫ですか?」
「あ、ああ、いや、私は大丈夫、ではあるんだけど、その・・・陽葵くんは私のことを、綺麗と思ってくれてるの?」
「え?はい。当り前じゃないですか。」
「!?!?!?」
~椿ヶ丘、椿ヶ丘です。左側の扉が開きます~
逆に蘭さんを綺麗だと思わない人がいるんですか?いたら目か頭がおかしいと思うので早急にしかるべき医療機関への罹患を強くお勧めします。
あ、でもよく蘭さんが言われてるのは『綺麗』じゃなくて『格好いい』ですもんね・・・だから実際綺麗と言われるのは少ないのかもしれません。
「そ、そっか・・・あ、ありがとうね。嬉しい。」
「いえいえ。」
そんなときでした。
ぽつ・・・ぽつぽつ・・・
「ん?雨か?」
「そういえば天気予報で降るって言ってたような・・・」
「ああ、確かそんなの強くないが突発的に降る、って言ってたな。」
ぽっぽっぽっぽぽぽぽぽ・・・ザアアアアアアアアアア!
「うわあああああ!?なんかめっちゃ降ってきました!?」
「マズいな・・・陽葵くん!ここから家まで何分だ!?」
「じゅ、10分くらいです!」
この雨の中10分・・・ううう、憂鬱です・・・
「わかった!私の家はすぐそこだから、いったん私の家に雨宿りしていってくれ!」
「えぇ!?そ、そんな、悪いですよ!」
蘭さんの家の人に迷惑をかけてしまいます!
「そんなこと言ってる場合じゃない!この雨の中友達を10分歩かせるほど私は鬼じゃない。いいから行くぞ!」
「は、はい!」
手を掴まれ、半ば強引に蘭さんの家に雨宿りすることになりました。
・・・今度手土産を持ってお詫びしに行かないと。
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ここでEPISODE1を見てくれている読者様は、二人が普通と快速のどちらで登校するようになっているのか、おわかりですね?
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