第3話 二人が家に帰ってから

『初めてできた友達は、背が高くて、かっこよくて、声も低くてきれいで、いろんな人から頼られてて。僕にないものを全部持ってる人でした。僕の憧れを集めたような人でした。正直、仲良くなることへの葛藤は0ではなかったです。


でも。


対等に話してくれる友人ができたというのが、すごく嬉しかったんです。』 

                           by3か月後の神戸陽葵

 


───────────────────



登校初日、友達が出来た。


「えへへ・・・やった~・・・」


帰り道で人の目もあるのに、無性にニヤニヤしてしまいます。

それくらい、蘭さんと友達になれたのは嬉しいことでした。


(だが陽葵は友達ができたことがうれしすぎて、そのニヤニヤ顔がかわいすぎるあまりすれ違うお姉さんは顔を赤くしてキャーキャーしてるのには一切気づいていない。恐らく蘭が一目見れば白昼堂々道端でキュン死していただろう。気づいていなかったことを含め、ある意味幸運なのかもしれない。)


そのままルンルンで帰宅。


「ただいま~!」

「あ!おかえり~お友達出来た~?」

「はいっ!できました!」

「あら!その反応を見るにいいお友達ができたようねぇ!」


そのまま制服から部屋着に着替えてベッドでゴロゴロ。

胸は嬉しさと満足感でいっぱいです。後悔は一切ありません!


・・・あ、やっぱり一つだけありました。

友達ができたことに集中しすぎて蘭さんとLIME交換するの忘れてました。


う~ん、交換するのはまだ早いような気もしますけど、クラスの人はすぐに交換してましたし・・・でも同じクラスなのは変わりありませんし、次に会うときでもまだ遅くはないと思いますし・・・うん、次回で大丈夫でしょう。


でも、次回は必ず交換します!・・・僕の心臓が耐えられれば、ですけど。


「でも・・・蘭さんってホントにイケメンなんですよねぇ・・・」


あれは女子に好意をもたれるタイプの女子な気がします。僕はドラマはあまり興味がないのですが、そこらのイケメン俳優よりずっとイケメンだなと感じるくらいにはイケメンでした。オーラが溢れでています。






・・・・・・


と言ってる僕もそのイケメンオーラにやられてる一人なんですけどね・・・


なんかこう、近づかれるだけで心臓がバックバックするんですよねぇ。よくわかりませんが、推しに接近されたときってあんな感情になるんですかね?


ということは蘭さんは僕の推し?


でも応援したいとはあまり思ってないですし推しとはなんか違う気がします。


う~ん、モヤモヤします・・・


でも母さんに相談しても『恋じゃないか』って騒がれる未来しか見えませんし。


恋、かぁ。

そういえば僕女子に絡まれまくるくせに恋愛経験は0なんですよねぇまああの人たちと恋愛に発展するかと言われれば絶対にしないと答えられるんですけども。


・・・そんなことはどうでもよくて。


果たしてこれは恋なのだろうか?


「・・・恋ではないと思うけど・・・でも蘭さんの恋人になれたら嬉しいかもぉ・・・なんて。エヘヘ・・・」







・・・ん?


・・・・・・ん!?


いいいい今僕なんて・・・!!??


出会って1日の人と恋人になりたいとかぬかしませんでしたか・・・!!??


いいいいいいやいやいやいや!!!!流石にそれは恋愛脳過ぎますって!!良くない!良くないですよ陽葵!!


脳内ピンク人間はフィクションの中だけで十分です!現実にいてもただ単なる痛々しい人になるだけですよ陽葵!


うぅ、取り敢えず人前じゃないのは不幸中の幸いです。もし誰かに聞かれてたらその場で切腹案件です。


とにかくまだ恋愛感情は抱いていません!

・・・多分。恐らくは。


・・・でもこれまで僕に話しかけてきた女子のなかで圧倒的に印象は良いんですよね。

少なくとも良い友人にはなれそうですし。


・・・それ以上の関係もあり得そうですし。





・・・・・・


ああああああ今のやっぱりなしです!!


頭をぶんぶん振ってベッドでジタバタしてしまいます。


「・・・このまま会うと絶対顔赤くなるよぉ・・・次どんな顔して会えば良いのぉ?

も~~~~~・・・LIME交換するのもっと難しくなっちゃったよどーしよう・・・」




今の陽葵はいつもの慎重さや落ち着きが一切ない完全に恋する乙女モードである。これもまた普通の男が同じことをすると単純にクソほど気持ち悪いだけだが、超絶かわいい陽葵になるともはや男女問わず悶絶するほど超絶かわいくなってしまう。

この陽葵を見てしまった者は、男女を問わず新しい扉が開いてしまうだろう。

なお本人に恋をしているという自覚はない。




「でも・・・蘭さんは僕のことなんか眼中にないなんてこともあり得るし・・・興味は、あるみたいだけど。」


友達としては興味あるけど恋人としては見れないなんて往々にしてあり得ますし。

そういう理由で振られた友達もいました。


とりあえず!まだ結論を出すには早いです!

今は高校生活が始まってもないですし、まだ焦らなくていいんですから!




実際のところはご存知の通り蘭は陽葵に一目惚れしており、友達どころか恋人までなる気マンマンなのだが、陽葵がこの事を思い知るのはもう少しだけ先のお話である。



────────────────────


~~~♪~~~♪~~~~~~♬


私は今ここ数年で一番と言っても良いほど、機嫌が良い。


何故なら・・・


あの子と、陽葵君と、友達になれたからだああああああああああああ!!!!

やった~~~~~~~~!!


「たっだいま~!!!」

「うわあ!?お、おかえりお姉ちゃん。」

「おかえりなさいませ。いつになく上機嫌ですね、蘭お嬢様。」

「ああ、澪、辰巳さん!ただいま!」


ハイテンション過ぎて声が大きくなりすぎた。びっくりさせてしまったみたいだな。

しか~し今の私には気にならない!なぜなら気にできる余裕が一切ないからだ!


「ああ、そうそう。私しばらく自室にこもるから、ご飯が出来たら呼んでくれ!」

「承知しました。」


用件を手短に伝えて、私はダッシュで自室に向かい勢いよくドアと鍵を閉めた。 


・・・・・・・・・


ふぅ


よっしゃ~~~~~!!!


やった!やった!やった!あの子と、陽葵くんと仲良くなれた!!


しかも名前も聞けて名前呼びの許可ももらえたし!これは大きな前進だ!


しかも席前後とか神席すぎる!ああでも後ろの陽葵君が気になって、授業に集中できないかも・・・い、いやそこは持ち前の精神力で何とかするんだ!


低い成績を見られたらどういう反応されるかわからない!!


『うーん・・・こんな成績の人と付き合うのはちょっと・・・これ以上下げて僕のせいにされても困りますし、この話はなかったことにさせてください。すみません。』


「うっぐぅ・・・!!??」


勝手に想像して勝手にダメージ受けて勝手に落ち込んでしまう。

い、いやいやそんな未来になってしまう可能性もあるにはある訳で・・・でも絶対に回避しなくてはならない!


「よし・・・!頑張るぞ!」


そして二人に陽葵くんとの進展を報告しようとして・・・あることを思い出した。


「あれ・・・?もしかしてLIME交換するの忘れてた・・・?交換できるタイミングなんていくらでもあったのに・・・!?」


・・・・・・


・・・や


やってしまったあああぁぁぁ・・・!!!


今日お話しした時でも聞けただろう!?ほかにも集会の後とか、帰宅準備の時とか!タイミングなんていくらでもあったのに・・・


浮かれて完全に忘れてた・・・!


流れで聞いていれば緊張しなくて済むのに!改めて言い出す方が緊張してハードルが高いのはわかっているはずだろう蘭!


「うううぅぅぅぅ・・・な、なんて言って交換しよう・・・?い、いきなり言い出すのはやっぱり変か?で、でもどういう流れで言い出したら?」


そ、そうだ!華恋と彩音に聞けばいいじゃないか!


|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

                  

蘭『陽葵君とLIME交換したいんだ

  けどなんて言い出せばいい?』


   『え、そんなん普通に言い出せ 華 

   ばよくね?』


   『昨日忘れてたんだけど、とか 彩  

   言っとけばいいじゃない』


蘭『ほんとにそれでいいのか?』


   『何を勘違いしてるか知らない 彩

   けどLIMEなんてちょっと仲良

   くなったらすぐ交換するのよ』


   『そそ。別に聞き方とかないし』華


   『とにかく!細かいことは気に 彩

   しないで聞いてみること!

   断られたらその時考えましょ』


   『まあよっぽどエグイ下心とか 華

   見せない限り大丈夫だから正味

   蘭なら100%イケるイケる』


蘭『わかった。頑張る』

             

            『おー』  華

       『応援してるわよ』  彩 


|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||


よし!明日頑張ってお願いしよう!


私はひとりでに決意をするのだった


───────────────────


――一方そのころ――


ドタドタドタドタドタドタ!!


バタン!!ガチャ!!


「なんか、今日のお姉ちゃん変だよ。」

「左様ですねえ。いつになくテンション高いように思います。」


と、いいつつも二人はその理由になんとなく感づいていた。


「・・・・・・あれ絶対恋してるよね!?」

「ええ、恐らくは。かなり高い確率で。」


妹は顔を赤くしてテンションを上げながら。

執事はたいそう感慨深そうに。


「へえええぇぇぇぇ!お姉ちゃん、恋したんだ・・・!良いなぁぁ!私も恋してみたい!あとお姉ちゃんの好きな人すごい気になる!どんな人なんだろ・・・!」

「蘭お嬢様は強い人がお好きと聞いていましたが・・・私としては合格発表のときに会ったかと予想します。」


あ~そんなことも言ってたねえ!とはしゃぐ妹。


「あ~早く見てみたいなぁ・・・!連れてきてくれないかなぁ・・・!」


妹のこの淡い希望は、割とすぐに実現することを二人は知らない!



――――――――――――――――――――――――――――――――


この作品は、主人公とヒロインの物語ではなくヒロインとヒロインの物語です。

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