第62話「二日目」

 次の日、目が覚めると時間は朝の六時だった。

 ちょっと早いかな……と思ったら、慶太先輩がもう起きていたようだった。


「あ、慶太先輩おはようございます。もう起きてたのですね」

「ああ、団吉くんおはよう。自然と目が覚めてね、五時半くらいから起きてるよ」


 拓海と天野くんはまだ寝ているようだ。僕は二人を起こさないようにして慶太先輩の前に座った。


「どうだい? 団吉くんは二日酔いとかになってないかな?」

「はい、大丈夫みたいです。ちょっとだけ身体がだるいかなと思わなくもないですが、それは旅の疲れもあるんでしょうね」

「そうだね、ボクも似たようなものだよ。でも、今日も楽しんでいこう」

「はい、そうしましょうか」


 昨日は一日動き回って、お酒も呑んだのだ。少しだるいのも仕方ないだろう。それでも、途中で目が覚めることなくゆっくりと寝ることができたようで、よかったなと思った。

 その後三十分くらい経って、拓海と天野くんが起きた。


「あーおはようございます……なーんか身体がしゃきっとしないっつーか」

「おはようございます……僕も似たような感じです」

「ああ、おはよう。みんな無理はしないでくれたまえ。ご飯までもう少しあるから、ゆっくりしておこうではないか。あ、もう一度お風呂に入るのもいいかもね」

「おはよう、そうですね、みんなで行きましょうか」


 僕たち男性陣は、朝風呂に入ることにした。昨日と違う浴場が男性専用となっている。ここはおそらく昨日女性専用になっていた浴場だな、内湯、露天風呂に加えて、シルクバスもあった。


「うあー気持ちいいー、朝風呂入って正解だなー」

「ああ、めちゃくちゃ気持ちがいいね! のんびりと身体を癒そうではないか」

「ほんとですね、僕たちしかいないから、さらにのんびりできますね」

「うん、ゆっくり入っておこうか。でものぼせないようにしないとな」


 しばらく内湯や露天風呂を行き来して、のんびりしていた僕たちだった。

 お風呂から上がると、朝食の時間になろうとしていたので、僕たちはそのままレストランに行った。入口で女性陣と合流した。


「おはよー! 男性陣もよく眠れたかな?」

「おはよう、うん、よく眠れたっつーか、朝風呂にも入ってきたよ」

「おはようございます、私たちも朝風呂に入ってきました! 気持ちがよかったです」

「ダンキチ、おはよう、みてみて、はだすべすべ」

「あーっ、エレノア先輩ずるい! 日車先輩、私もお肌すべすべになりました! 触ってくれてもいいんですよ!?」

「お、おはよう、それはよかった……って、ち、近――」


 朝からエレノアさんと橋爪さんにぐいぐい迫られて、ちょっと慌てた僕だった。


「あはは、女性は綺麗にならないとねー、朝ご飯食べよっか!」


 朝食は『朝食和膳』と書いてあった。お、おお、こちらも普段朝から食べることのないような、色とりどりの和の食べ物があった。僕も一口いただいてみる……これは菜の花のおひたしかな? 美味しいなと思った。

 美味しい朝食をいただいた後、みんなで男性陣の部屋に戻り、今日のスケジュールの確認をしていた。


「じゃあここは新代表の慶太に、今日の予定について話してもらおうか」

「ええ!? あ、わ、分かった……今日はこの後東武ワールドスクウェアに行ってみようと思うけど、それでいいかな?」


 慶太先輩がそう言うと、みんな「はい」と言った。


「よし、鬼怒川温泉駅から一つ隣の駅だからね、行きやすいね」

「そうですね、あ、慶太くん、荷物はどうしましょうか? 持って歩くのもちょっと邪魔になりそうで」

「ああ、そうだね、鬼怒川温泉駅でコインロッカーに入れておこうか。また帰りは駅から特急電車に乗ることになるから、それまで預けておこう」

「ふふふ、慶太もしっかりしてるところあるじゃなーい。そういえば慶太って、高校の頃は生徒会長もやってたんだっけ」

「あ、ま、まぁ、そうなんだけど、まだまだボクはサークルの代表として未熟だからね、みんな力を貸してほしいよ」


 慶太先輩が恥ずかしそうにしていた。僕たちはまた「はい」と返事をした。

 その後、僕たちはホテルを出発して、鬼怒川温泉駅に来た。荷物をコインロッカーに預けて、電車に乗る。一駅隣なのであっという間に着いた。


「おおー、ここかー! 今日もいい天気になってよかったねー」

「ほんとだね、暑くなりそうだけど、気分は上がるっつーか」

「ふふふ、写真を撮るのも楽しくなりそうです。あ、団吉さん、エレノアさん、こっち向いてください」


 え? と思って成瀬先輩の方を見ると、パシャっとシャッター音が鳴った。あ、ぼ、僕たちを撮ったのだろうか。


「ふふふ、可愛いお二人が撮れました」

「ハス、みせてみせて、あ、よくとれてる。ハスすごい」

「あ、お、お恥ずかしいところを……。たくさん写真も撮るようにしましょうか」


 東武ワールドスクウェアのテーマは、『世界の遺跡と建築文化を守ろう』というものだった。日本だけでなく、世界の色々な建物や場所が再現されている。まずは現代日本ゾーンに来てみた。おお、あれはスカイツリーか、本物よりは小さいとはいえ、なかなか大きい。そして東京駅、東京ドームなどもあった。作りが精巧で本物のように見えるな、僕はテンションが上がって写真を撮る。


「日車先輩、いい写真撮れてますか?」

「うん、これとかなかなか迫力あるんじゃないかな、本物よりは小さいとはいえ、なんだか楽しいね」

「おおー、さすが日車先輩! プロのカメラマンみたいですね! そんな日車先輩に私もモデルになって写真を撮ってもらって……キャー! いけない想像しちゃった!」

「な、なんかよく分からないけど、ま、まぁいいか。あ、あっちはアメリカゾーンか、エレノアさんの故郷だね」

「あ、じゆうのめがみ、みたことある。ニューヨークにりょこうでいった」

「おお、エレノアちゃんはさすがアメリカ出身だねー! よきかなよきかな。写真たくさん撮って、みんなで見せ合おうねー!」


 川倉先輩がそう言うと、みんな「おー!」と返事をした。

 初めて来たところだが、なんだか面白いなと思った。まだ午前中だが外はどんどん暑くなってきている。それでもみんな楽しそうにカメラのシャッターを切っていた。

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