第40話「サークル活動」
「みんなお疲れさまー! 今日は少し晴れ間も見えるけど、なんかすっきりしない天気が続いてるねぇ」
サークルの部室に川倉先輩の明るい声が響く。今日はサークル活動ということで、メンバー全員が集まった。我がサークルも八人になったということで、これまで以上に賑やかだった。それもまた嬉しいものだ。
「ああ、梅雨だから仕方ないとはいえ、こうも天気が悪いと気分もどんよりしてしまうね!」
「ふふふ、慶太くんでもどんよりしてしまうことがあるんですね。なんか安心しました」
「ほんとだね、蓮ちゃんの言う通りだよー、慶太でもどんよりしてしまうことがあるんだねー。なんか人間らしいというか」
「ええ!? ぼ、ボクのこと何だと思っていたんだい? いやはや、蓮さんも亜香里先輩も厳しいね、これはお嫁に行くのは夢のまた夢――」
慶太先輩が言い切る前に、川倉先輩と成瀬先輩にバシッと叩かれていた。い、いつも通りで安心するな。
「日車先輩! 先日我が家のワンコを写真に収めてきました! ぜひ見ていただきたいというか!」
橋爪さんがぐいっと僕に近づいてスマホを見せてきた。おお、これはチワワかな? 可愛いわんちゃんが写っていた。
「おお、橋爪さんのところはわんちゃんがいるんだね、名前なんていうの?」
「うふふー、『ひまり』といいます! なんだか最近の女の子でもいそうな名前で!」
「なるほど、ひまりちゃんか、可愛いね」
「ほんとですね、チワワってこんなに小さいのか。あ、こっちの写真は橋爪さんと一緒に写ってる」
「うふふー、天野くんもひまりの可愛さ分かってくれた!? なんか嬉しいなー!」
僕の隣から天野くんも覗いてきた。橋爪さんも嬉しそうにしていた。
「そういえば団吉の実家は猫ちゃんがいたな、名前なんていったっけ?」
僕の後ろから覗いていた拓海が言った。
「ああ、うちはみるくっていうよ。白くてミルクみたいだからみるくになったんだけどね」
「ああ、そうだったみるくちゃんだった、写真あるか?」
拓海に写真あるかと訊かれたので、僕はみるくが写った写真をみんなに見せた。みんなが「可愛いー!」と言っていて、僕は嬉しい気持ちになった。単純な奴だな。
「アオイもダンキチも、うれしそう。どうぶつかわいい」
写真を見ていたエレノアさんが笑顔で言った。
「あはは、動物は可愛いよね。エレノアさんは犬と猫、どっちが好き?」
「むむ、むずかしい……いぬもいいし、ねこもいい。どっちもすき」
「ああ、エレノアさんの言う通りだな、どっちも可愛くて選べないっつーか」
「ほんとですね、関係ないんですがエレノア先輩、どんどん日本語が上手になっていますね。さすがしっかりと勉強されているからなのでしょうか」
「ほんと? わたしにほんごできる。ソウタもやさしいね、だいすき!」
エレノアさんがそう言って天野くんに抱きついた。天野くんは「……ええ!? あ、いや、その……」と、恥ずかしそうにしていた。
「あはは、動物もいいもんだよねー、まぁ大学では動物を撮るっていうことはできないんだけどさ、人間も動物ということで、今日はまたポートレートを撮る練習でもしてみようかー!」
「ああ、亜香里先輩に賛成だよ。動きをつけたり、後ろ姿だったり、色々撮ってみると楽しいとボクも思うね!」
「いいですね、じゃあ八人いるから、二人ずつに分かれて写真を撮りませんか?」
「ああ、そうだねー、ここは公平にあみだくじで決めることにしようかー!」
川倉先輩が紙に八本の縦線を引いて、ABCDと書いていった。その縦線に横線を書き加えて、みんながいいところを決めていく。そのあみだくじの結果、川倉先輩と天野くん、慶太先輩と橋爪さん、成瀬先輩と拓海、僕とエレノアさんに分かれることになった。
「おお、偶然だけど男女のペアになったねー、よきかなよきかな!」
「ほんとだね! こういうこともあるのか! じゃあ大学の色々なところで撮るのもありなんじゃないかなとボクは思うよ!」
「よし、そうと決まれば行きましょう!」
楽しそうな先輩方三人について行く形で、僕たちは大学の中で写真を撮ることにした。僕はエレノアさんと一緒か……と思ったら、僕の左手をきゅっと握るエレノアさんがいた。
「ダンキチ、さっきのせん、あれはなに?」
「線……ああ、あみだくじのことかな、本当は当たり外れを選ぶときに使うんだけどね、ああやって組み合わせを選んだりする時にも使うよ」
「ふむ、あみだくじ、おぼえた。あ、しゃしんとる?」
「あ、そうだね、エレノアさんそこに立ってくれるかな? そこの木を見上げる感じで」
エレノアさんに木のそばに立ってもらった。ちょっと見上げる感じのポーズをとってもらって、僕が「はい、チーズ」と言ってちょっと下からパシャリと写真を撮った。うん、手を伸ばしたエレノアさんが綺麗に写っている。
「ダンキチ、どう? わたしびじん?」
「うん、エレノアさんは綺麗だね。いい感じに撮れたよ」
僕のカメラをエレノアさんが覗き込む。となると自然と距離が近くなるわけで、エレノアさんからふわっといいにおいがした。はい神様、僕はいつ捕まるのでしょうか。
「ふふふ、わたしびじん。なんかうれしい。あ、ダンキチとりたい」
「ああ、じゃあ交代しようか、エレノアさん僕のカメラ使ってみる?」
「あ、わたしのスマホでとる。あんしんして、かっこよくとる。そこのかべにたって」
僕はエレノアさんの指示通りに、建物の壁にもたれかかる感じで立った。エレノアさんがパシャリと写真を撮る。どんな感じだろうかと思って見せてもらうと、僕が右端に写っていて、背景といい感じに調和しているように見えた。
「おお、すごいねエレノアさん、いい感じの写真が撮れたね」
「うむ、ダンキチかっこいい。これたからものにする」
「え、あ、は、恥ずかしいな……まぁいいか。うん、ぜひそのまま保存してもらえると嬉しいよ」
そんな感じで話しながら、僕たちは写真を撮っていった。でも天野くんが言っていた通り、エレノアさんもどんどん日本語が上手くなっている。勉強を頑張っているのだなと思った。僕も負けていられないな。
その後部室に戻って、みんなが撮った写真を見せ合っていた。みんな雰囲気のあるいい写真が撮れていたようだ。僕はそれも嬉しかった。
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