第39話「妹へのプレゼント」
相原くんをうちに呼んだ日から一週間後、日曜日の今日は、僕はやることがあった。
それは、日向の誕生日が近づいてきたので、誕生日プレゼントを買おうと思っていたのだった。毎年何にするか悩む……のだが、なんと今回は僕はある程度プレゼントを絞ることができていた。それもまためずらしいな。
どれがいいかなとあれこれパソコンでションピングサイトを眺めていると、インターホンが鳴った。今日は絵菜と真菜ちゃんと舞衣子ちゃんがうちに来てくれることになっていた。出ると三人が来ていたので、玄関に出た。
「こ、こんにちは、来てしまった」
「お兄様こんにちは! 今日はお誘いしてくださってありがとうございます」
「団吉さん、こんにちは……ここに住んでるんだね」
「ああ、こんにちは、みんなありがとう。上がって上がって」
みんなが「おじゃまします」と言って僕の家に上がった。真菜ちゃんと舞衣子ちゃんは初めてだな、二人とも部屋をキョロキョロと見回していた。
「まあまあ、お兄様のお城はここですか! とてもいい部屋ですね」
「団吉さん、いいところに住んでるね……部屋もけっこう広いし」
「あはは、僕もけっこう気に入ってるんだけどね。ちょっとジュース用意してくるね、適当に座っていいよ」
僕はキッチンで四人分のジュースを用意して、リビングへと戻った……って、一応ここはダイニングということになっているが、もうリビングみたいなものだし細かいことはいいのだ。
「はいどうぞ、ごめん今コーラしかなくて」
「あ、ありがと。なぁ、日向ちゃんの誕生日プレゼント考えてるって言ってたけど、何か決まったのか?」
「ああ、今年はこれがいいんじゃないかと思って見てたんだけどね、種類が色々ありそうだよ」
僕はそう言ってパソコンをポチポチと操作した。三人が僕を囲むようにしてパソコンの画面を覗く……って、女性三人に囲まれているこの状況がちょっとドキドキしてしまった。僕も男なんだな。
「ああ、なるほど、ワイヤレスイヤホンか……」
「うん、そういえば日向は有線のタイプしか持ってなかったなと思ってね。これならスマホとかに繋いで便利なんじゃないかと」
「まあまあ、いいと思います。動画を観たり音楽を聴いたりする時に便利そうですね」
「団吉さん、ハイテクだね……うちもちょっとほしいと思ってた」
「あ、ありがとう、ハイテクかどうかは分からないけど、その中でも色々と種類があるみたいでね、そこで迷っているというか」
パソコンを操作してスクロールしてみる。一言でワイヤレスイヤホンといっても種類が色々あった。みんなも見てくれているが、
「……あ、団吉さん、これ可愛い……ピンクでいいかもしれない。でもちょっと高いかな」
と、舞衣子ちゃんが指をさしてぽつりと言った。
「ああ、これか、たしかにピンクとか色々あるみたいだね、機能的にはどうだろうか……Bluetoothで繋いで、音質もなかなかいいみたいだね、うん、いいかもしれない」
「イヤホンもピンキリなんだな、高いものから安いものまで……」
「ほんとだね、これは中間くらいなのだろうね。じゃあこれを注文しようかな、いくらだったっけ……こんなもんか」
「あ、団吉、私もお金少し出す」
「お兄様、私もお小遣いから少し出させてください」
「団吉さん、うちも少し出すよ……あ、四人で買えばこっちの上位モデルが買えるんじゃないかな」
「え、そ、それは申し訳ないというか……でも、そうした方が日向も喜ぶかな、じゃあみんなのお言葉に甘えるようにしようかな」
僕はとりあえずネットで注文をして、みんなから少しずつお金をいただいた。なんか毎年申し訳ない気持ちになるが、まぁそれもいいのかなと思った。
「よかったな、今年もなんとかプレゼントが決まって」
「うん、毎年悩んでしまうけど、みんなも一緒に考えてくれるから決まりやすいというか。ありがとう」
「お兄様は偉いですね、妹思いで優しいお兄様、そこがいいのです」
「うん、団吉さん偉いよね……団吉さんみたいなお兄ちゃんがほしかったな……」
「あ、ありがとう、そんなに偉くもないと思うけどね……」
でも、女の子に褒められるのは悪い気分ではなかった。僕も男なんだな……って、あれ? さっきも思ったな。
「団吉、一人暮らしは慣れてきたか?」
「ああ、うん、ちょっとずつだけど慣れてきた気がするよ。まぁなんでも完璧にこなそうと思わない方がいいんだなって思ったよ」
「そうですね、なんでもやろうとすると疲れてしまいそうです。でもお兄様ならなんでもできちゃいそうな気もしますね」
「うん、団吉さん大人だからね……家事もバッチリこなせてしまいそう」
「あはは、まぁ無理せず少しずつやってみようかなって思ってるよ」
一人暮らしを始めてまだ日は浅いが、さっきも言ったようにできることを少しずつやっていく方がいいのだろうなと思っていた。真菜ちゃんの言う通りなんでもやろうとすると疲れてしまいそうなので、慌てずほどほどでいきたいところだ。
「ふふふ、そういえばお兄様は家の合鍵をお姉ちゃんに渡したんですね。お姉ちゃん嬉しそうにボーっと見つめていましたよ」
「ま、真菜……! それ言っちゃダメ……!」
「あ、団吉さん、そんなことしてたんだね……うん、いいと思う」
「あ、そ、そうなんだね、まぁ絵菜ならいつでも来てほしいから、そうしたかったというか……あはは」
「でもそっか、好きな人から合鍵を渡されるのか……なんかいいね。うちも団吉さんみたいな優しい彼氏がほしいな……あれ? さっきは団吉さんみたいなお兄ちゃんがほしいと思っていたのに」
「舞衣子ちゃん、私たちも頑張ろうね! きっとお兄様みたいな人がどこかにいるはず……あれ? そんなにいないのかな?」
「い、いや、大丈夫だよ、真菜ちゃんも舞衣子ちゃんも可愛いし、僕よりいい人はいっぱいいると思うよ……たぶん」
う、うう、なんか急に恥ずかしくなってきて俯くと、みんな笑っていた。結局こうなってしまうのか……。
それはいいとして、今年もなんとか日向へのプレゼントが決まった。日向が喜んでくれるといいなと思っていた。
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