第18話「休日」
次の日の日曜日、僕と日向は休みだったので、絵菜の家に遊びに行くことにしていた。
そうだ、カメラを持って行くのもいいなと思ったので、昨日届いたばかりのカメラにストラップをつけて、首にぶら下げていくことにした。うん、こうしてぶら下げるとカメラマンっぽい感じがするな。
母さんに「行ってらっしゃーい」と見送られて、二人で絵菜の家まで歩いていく。普段歩いている道の風景を撮るのもいいなと思って、たまに立ち止まってカメラに収めていく。けっこう楽しんでいる自分がいた。
「お兄ちゃん、新しいおもちゃを手に入れた小学生みたいだねー」
「え、そ、そうか、そんなにはしゃいでるかな……」
「いいんだよー、嬉しくなる気持ちは分かるからさー、私もたまにはスマホで写真撮るようにしようかな!」
そう言って日向が道端に咲いていた花をパシャリと撮った。こういうお散歩も悪くないなと思った。
そんなことをしているうちに、絵菜の家まで歩いてきた。いつものようにインターホンを押すと、「はい」と聞こえてきたので、「こんにちは、日車です」と言うと、「まあまあ、ちょっとお待ちくださいね」と聞こえてきた。なんとなくお母さんのような気がした。
すぐに玄関が開いて、絵菜と真菜ちゃんのお母さんである
「まあまあ、団吉くんに日向ちゃん、いらっしゃい」
「お母さん、こんにちは!」
「こんにちは、すみません突然来てしまって」
「いえいえ、絵菜も真菜も待っていたみたいですので。あれ? 団吉くん、カメラを持っていますね」
「ああ、はい、最近買ったので、写真を撮りながらここまで来ました」
「まあまあ、それもいいですね。なんだか団吉くんが凄腕のカメラマンみたいですね」
「あ、い、いえ、さすがにそこまでは……あはは」
お母さんに中に入るように促されたので、僕と日向は「おじゃまします」と言って上がらせてもらった。リビングへ行くと、絵菜と真菜ちゃんがいた。
「あ、団吉いらっしゃい……って、首からぶら下げてるそれは……」
「ああ、カメラが昨日届いてね、せっかくだから写真を撮りながらここまで来たよ」
「まあまあ! お兄様、カメラってすごいですね! そういえば大学のサークルが写真研究会でしたね」
「うん、先輩方に教えてもらってね、バイト代もあるし思い切って買おうと思って。こんなの撮って来たよ」
ここに来るまでに撮った写真をみんなに見せた。どれもまあまあいい感じに撮れているのではないだろうか。
「す、すごい、スマホの写真とはまた違って綺麗に見えるな」
「うん、このたんぽぽとか黄色が綺麗に見えるよね。あ、せっかくだから絵菜と真菜ちゃんも撮りたいな、いいかな?」
「え!? わ、私と真菜を……!?」
「まあまあ! いいんですか? お姉ちゃん、これはチャンスだよ! お兄様に綺麗に撮ってもらって、自慢できるよ!」
「ど、どこに自慢するのか分からないが……ま、まぁいいか」
「あはは、二人とも可愛いから、綺麗に写ると思うよ。ソファーに座っている写真もいいかもね」
絵菜と真菜ちゃんがソファーに座って、僕が「はい、チーズ」と言ってシャッターを切った。二人の自然な表情が可愛らしく見えた。
「ああ、いい感じだね、スマホに取り込むのも簡単だから、二人にも送るね」
「あ、ありがと。そういえば昨日の団吉と日向ちゃんとみるくちゃんが写ってる写真もよかったな……宝物にする」
「あ、ああ、恥ずかしいな……自分で撮るのは楽しくなってきたけど、自分が写るのはまだ慣れないというか」
「お兄ちゃん、それも練習だよ! 数撃てば当たるってね!」
「な、なんかそれもどうかと思うけど、ま、まぁいいか……」
「まあまあ、ふふふ、楽しそうですね。そうだ、せっかくだから四人で写ったらどうですか? お母さんが撮ってあげますよ」
「まあまあ! それもいいねお母さん! じゃあそこに四人で並びましょうか」
「え、あ、ま、まぁいいか、じゃあ……お願いします」
カメラの設定をして、お母さんに渡した。僕たちは四人で壁際に並ぶ。お母さんが「はい、チーズ」と言ってパシャっと撮った。
「ふふふ、四人ともいい表情していますね。こうして見ると本当に自分の子どもが四人になったみたいです。あ、そんなこと言うとおばさんですね」
お母さんがうちの母さんみたいなことを言った。写真をみんなで確認すると、たしかにいい表情をしている。これも思い出になるのかなと思った。
「おおー! いい感じ! でもお兄ちゃんはまだまだ表情が硬いなぁ、もっとリラックスして、モデルさんになった気分にならないと!」
「い、いや、そう簡単にはできないよ……でも、これもいい写真かなって。あ、みんなにも送るね」
「あ、ありがと。でも写真もいいものだな。私ももっとスマホで撮るようにしようかな」
「お兄様、ありがとうございます! 私も来年お兄様の大学に入って、ぜひ同じサークルに入りたいなと! その時は色々教えてくださいね」
「ああ、うん、真菜ちゃんがうちに来てくれるともっと楽しくなりそうだね。そのためには勉強を頑張らないといけな――」
「お、お兄ちゃん! 勉強の話はやめよう! あああまた思い出してしまった……」
「お前が一番頑張らないといけないんだからな。まったく、分からないところがあったら教えてやるからな」
「う、ううー、お兄ちゃんが厳しいこと言う……バカー」
ぶーぶー文句を言う日向を見て、みんな笑った。
「ふふふ、みんなが楽しそうで、お母さん嬉しいです。コーヒーとお菓子あるので、さぁどうぞ」
「あ、ありがとうございます、いただきます」
「お母さん、ありがとうございます! そういえばうちのお母さんもまたランチに行くんだってはしゃいでました!」
「ああ、そうですね、また団吉くんと日向ちゃんのお母さんとランチに行く約束しています。ふふふ、大人は大人で楽しんでいるんですよ」
うちの母さんと絵菜たちのお母さんは仲が良く、たまにランチに行って楽しんでいるらしい。おそらく子どもたちの話をしているのだろうが、まぁ親同士が仲良くしてもらえるのはありがたいというか。
その後しばらくスマホやカメラの写真を見てみんなで話していた。写真一つでこうして盛り上がることができるのだ、やはりカメラを買ってよかったなと思った。
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