第13話「近況報告」

 日曜日、僕はバイトも休みで、家でのんびりしていた。

 先日は天野くんと橋爪さんの歓迎会でみんなで盛り上がった。グループRINEに二人も入ってくれたので、あの後も盛り上がりそのままにみんなで楽しい話をしていた。

 二人もまだこれから色々と経験していくと思うが、勉強もサークルも遊びも、楽しんでいってほしいなと思っていた。


(天野くんと橋爪さんが入ってくれたから、またさらにサークルも楽しくなりそうだな……あ、そうだ)


 RINEの画面を眺めながら、僕はあることを思いついた。そのままスマホをポチポチと操作して、RINEを送る。


『こんにちは、みんな元気にしているかな? 僕は元気だよ』


 送ったのは元生徒会メンバーのグループRINEだった。高校二年生の時、生徒会長の九十九つくも伶香れいかさん、書記の大島おおしま聡美さとみさん、会計の天野くんと、副会長の僕でグループRINEを作ったのだ。アイコンは当時のまま九十九さんが撮ったハンバーガーの画像になっている。なんだか懐かしい気持ちになった。

 みんな忙しいかな……と思っていたら、すぐに返事が来た。


『こんにちは、お久しぶり。私も元気にしているよ』

『こんにちは、お久しぶりね。私も元気にしているわ』

『こんにちは、九十九先輩、大島先輩、お久しぶりです! 日車先輩、先日はありがとうございました』


 九十九さん、大島さん、天野くんがそれぞれ送ってきた。みんな変わらず元気にしているようだ。


『そっか、よかったよ。あ、久しぶりにグループで通話できないかな?』


 僕は嬉しくなって、みんなに通話できないかと訊いてみた。すぐにみんなからOKと返事が来たので、僕はみんなにグループ通話をかけた。


「もしもし、お久しぶりだね」

「もしもし、ほんとだね、お久しぶり」

「もしもし、そうね、ほんとお久しぶりだわ。みんな元気そうでよかったわ」

「もしもし、お久しぶりです! みなさん元気そうで安心しました」


 このメンバーで話すと、みんなで高校時代に生徒会のお仕事を頑張ったことが思い出される。みんなはまだしも、まさか僕が生徒会役員になって、みんなの前で話すことができるとは、それ以前の僕からは考えられないことだった。


「ほんとだね、僕も安心したよ。あ、今日はちょっと九十九さんと大島さんに近況報告があって。でもそれは天野くんから話してもらおうか」

「あ、はい! 実は、僕と橋爪さんは桐西大学に入って、日車先輩の後輩になりました」

「ああ、そうなんだね、それはすごいね、二人ともよかったね」

「あら、そうだったのね、だからさっき日車くんにだけはお久しぶりって言わなかったのね。日車くんと同じ大学か……いいわね」

「はい! 僕も橋爪さんも憧れの日車先輩と同じ大学に行きたいと思っていたので、嬉しいです。そして同じサークルにも入って、楽しく過ごすことができています」


 天野くんの嬉しそうな声が聞こえてきた。ちょっと恥ずかしいが、僕も嬉しい気持ちになる。


「わぁ、すごい! そういえば日車くんの大学には慶太先輩もいたよね? なんだか高校時代みたいだね」

「あ、うん、慶太先輩も同じサークルなんだ。僕も色々と教えてもらっているところで」

「そうだったのね、楽しそうでうらやましいわ。私も日車くんと同じ大学を受けていればよかったかしら……ブツブツ」

「お、大島さん? なんかブツブツ言ってるけど……ま、まぁいいか。九十九さんと大島さんは大学生活楽しんでる?」

「うん、友達もいるし毎日楽しく過ごしているよ。女子会やったりしてる」

「私も楽しく過ごしているわ。私の周りは男性が多いけど、みんな優しくしてくれるわ」

「そっかそっか、よかったよ。ん? 大島さんの周りに男性が多いということは、ついに言い寄って来る人が現れたとか……?」

「あはは、そうそうついに私にもいい人が……って、う、うるさいわね日車くん、残念ながら友達止まりで、なかなかお付き合いするような人は現れていないわ……」

「そうなんですね、まぁでも大島先輩も美人さんだから、実はこっそり好きだと思っている男性もいるかもしれないですね」

「まぁそうね、私だって可愛いんだから、そのうちいい人が現れるはずだわ……そうしないと沢井さんにまた笑われてしまう……くそ、それだけは避けないと……」


 なんだか悔しそうな大島さんだった。女性の心はやっぱりよく分からないな……。


「九十九さんはどう? 変な男の人とか寄って来てない? 僕はどうもそこが心配で……」

「う、うん、声かけられたりすることもあるんだけど、友達がサバサバしているお姉さんみたいな人で、振り払ってくれてる……」

「そうなのね、日車くんと一緒で私も九十九さんがどうも心配だわ……騙されないように気をつけるのよ」

「あ、ありがとう、気をつける。でも私もそろそろ恋がしたいなって思ったりもして……なかなか難しいね」

「大丈夫ですよ、日車先輩みたいな優しくて頼れる男性がそのうち現れますよ。慌てないことが大事だと思います」

「あはは、そうだね……って、あ、あれ? 僕? 僕よりもいい人はいっぱいいると思うけどね……」


 なんだろう、急に恥ずかしくなってしまった僕だった。


「いや、日車くんみたいな優しさを持った男性はなかなかいないわ。やっぱり私も日車くんと同じ大学に行くべきだったわ……ブツブツ」

「お、大島さん? やっぱり何かブツブツ言ってるね……」

「うん、私も声をかけてくるのはなんだか軽そうな男の人ばかりで……日車くんみたいな人が現れないかなって思ってる……」

「つ、九十九さん? だ、大丈夫だよ、話してみたらいい人だったっていうパターンもあるからね……」

「でもそうですね、さっきそのうち現れるなんて言いましたが、日車先輩みたいな人はなかなかいないと思います。可愛くて、優しさがあふれていて、頼りがいがあって……僕はやっぱり日車先輩を超えることはできなさそうだな……ブツブツ」

「あ、天野くん? なんだろう、すごく恥ずかしくなってきた……」


 僕がそう言うと、みんな笑った。うう、やっぱり笑われてしまうのが僕なのだろうか……。

 その後も、懐かしい話などで盛り上がった僕たちだった。今はそれぞれの道を歩んでいるが、こうしてたまに話すのもいいものだなと思った。そして機会があればまた会ったりして、近況報告ができるといいな。

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