第105話「嬉しい気持ち」
私はクリスマスの今日、団吉と一緒に都会に来ている。
先程団吉がクリスマスプレゼントということで、ペアリングを買ってくれた。私は右手に光る指輪を眺めながら、嬉しい気持ちになっていた。
団吉が私のことを考えてくれたというのももちろん嬉しいのだが、こうやってお互いお揃いのものを身につけておくと、たとえ離れていても団吉のことをより想うことができるというか、そんな気持ちになる気がした。
「絵菜、嬉しそうだね、ずっと指輪見つめてるね」
団吉にそう言われて、私は少し恥ずかしくなった。でも、恥ずかしさよりも嬉しさの方が勝っていた。
「うん、嬉しい……あ、もう少し見て回る?」
「あ、そうだね、夕飯にはちょっと早いから、見て回ることにしようか」
二人で商業施設を見て回ることにした。あそこはキッチングッズが売られているお店か。色々なグッズが売られていて、楽しい気持ちになった。
「あ、このぶんぶんチョッパーっていうの、テレビで見たことある」
「ああ、みじん切りが簡単にできるってやつだね、便利そうだよね」
「うん、私ももっと料理の練習しないと……団吉に美味しいもの食べてもらいたい」
「あはは、うん、一緒に練習しようか。でも、絵菜が作ってくれるのが嬉しいよ。楽しみにしてるね」
団吉が優しい言葉をかけてくれて、嬉しくなった私は単純なのかもしれない。でも本当に料理はもっと練習しないとな……団吉と一緒に暮らす夢があるのに、私だけ料理ができないなんて恥ずかしい。
それからまた商業施設を見て回る。トラゾーのグッズが売られているお店があり、団吉は「ちょっと見ていい?」と言った。
「ふふっ、団吉はトラゾーが好きだな」
「う、うん、可愛いからね……この前ショッピングモールに運転して行った時に買ったコースターもよかったよ。真菜ちゃんにあげようかな」
「ああ、真菜も好きだからな……じゃあ私が買おうかな」
「そっか、うん、真菜ちゃん喜ぶんじゃないかな」
私はトラゾーのコースターを買った。真菜もトラゾーが好きだから、喜んでくれるといいなと思った。
「あ、そろそろ夕飯食べに行こうか。久しぶりにあの洋食屋さんに行く?」
「ああ、そうだな、最近行ってなかったからいいかも」
私たちは都会に来た時によく行く洋食屋さんに行った。オシャレな雰囲気は変わらない。人が多く少し待つことになったが、しばらくすると呼ばれて座ることができた。
「なんにしようかなぁ、今日はハンバーグセットにしようかな。なんかお店の中もクリスマスっぽい雰囲気あるね」
「ほんとだな、なんかクリスマスっぽい。私もハンバーグセットにしようかな」
二人でハンバーグセットを注文する。その時も右手の指輪が見えて、また嬉しい気持ちになった……って、危ない人だろうか。右手を見つめていると、
「絵菜が嬉しそうでよかったよ。僕も嬉しい気持ちになったよ」
と、団吉が言った。あ、右手を見つめているのをまた見られたのか、は、恥ずかしい……。
「あ、う、うん、なんかつい見ちゃうというか」
「うんうん、気持ち分かるよ。僕も実はつい触っちゃって。それだけ嬉しいみたい」
そっか、団吉も同じような気持ちなのか、なんだかそれも嬉しくなる。
二人で話していると、注文していたハンバーグセットが運ばれてきた。いただくことにする。
「いただきます……あ、やっぱり美味しいね」
「うん、美味しい。私ハンバーグって作ったことないな……」
「そっか、じゃあ今度一緒に作ってみようか。そこまで難しくないから、絵菜も出来ると思うよ」
「そ、そっか、うん、一緒に作るというのもいいな……」
団吉のお母さんも以前言っていたが、新婚さんみたいな感じがして嬉しくなる……って、今日は何回嬉しくなるんだろう。ふふっと心の中で笑ってしまった。
美味しいハンバーグを食べた後、私たちは駅の方へ戻った。駅近くの広場にクリスマスのイルミネーションがあった。クリスマスツリーのような大きなものや、花壇にも電飾があって、綺麗だった。
「おお、イルミネーションが綺麗だね、写真撮っておこうかな」
「うん、私も撮ろうかな……そういえば団吉はカメラを買ったりするのか?」
「うん、そのつもりなんだけど、けっこうお高い買い物だから、もうちょっとバイトを頑張ってお金を貯めようと思ってね」
「なるほど、カメラってやっぱり高いんだな……じゃあ今はスマホのカメラで我慢か」
「そうだね、先輩方に教えてもらってスマホのカメラでも綺麗に撮れるからね。あ、絵菜のスマホはナイトモードとかあるかな?」
団吉と一緒にスマホのカメラを見る。ナイトモードを使うと暗いところでも明るく撮影ができるらしい。私のスマホにもその機能があったので使ってみることにした。スマホを構えて、シャッターボタンを押して数秒待つと撮れる。写真を見るとイルミネーションが綺麗に輝いていた。
「うんうん、いい感じだね。あ、ここに写ってる街灯、不思議な色してるね」
「ほんとだ、でもこれも幻想的でいいかも」
「そうだね、いいんじゃないかな。よし、僕も撮ってみようかな」
スマホでも綺麗な写真が撮れると分かると、楽しい気持ちになる。団吉も一緒かなと思った。
その後、駅から電車に乗って、私たちは帰ることにした。もっと団吉と一緒にいたい気持ちもあるが、仕方ない。
「来年は僕たちもお酒が呑めるようになっているから、どこかお酒が呑めるお店に行ってみようか」
「そうだな、なんかそれも楽しみ。私はお酒が呑めるのかな……」
「あはは、絵菜がたくさん呑める人だったりして……あ、その時は僕も付き合いたいから、僕も呑める人であってほしいなぁ」
「ふふっ、酔って団吉に甘えてしまうかも」
「そ、そっか、まぁそれもありなんじゃないかな……ちょっと恥ずかしいかもしれないけど……あはは」
恥ずかしそうに言う団吉が可愛かった。
クリスマスは毎年団吉と一緒に過ごしているが、今年もいい思い出ができた。右手の指輪はずっと大切にしたい。また右手を眺めて、ふふっと嬉しい気持ちになっていた私だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます