第81話「卒業検定」

 日向がオーストラリアから帰ってきた二日後、僕は緊張しながら教習所へ向かった。

 今日は卒業検定が行われる。ついにここまで来たのかと、感慨深い気持ちになっていた。

 絵菜も拓海も今日卒業検定を受けるらしく、絵菜と一緒に教習所に行くと、拓海がいたようで僕たちを見つけて手を挙げていた。


「ついに来てしまったなー、なんとか合格できるといいんだが」

「ほんとだね、三人で絶対合格しよう」

「う、うん……緊張するけど、頑張る」


 三人でそわそわしながら待っていると、教官に呼ばれた。これから路上と教習所内の運転で技能を見られるのだ。いつも通り前方後方左右の確認をしてから車に乗り込み、準備をして出発する。公道はそこそこ車はいるが、わりとスムーズに流れているようだ。僕はスピードや安全確認に気をつけながら運転していった。

 教習所に戻って来て、縦列駐車などを行った。うん、ここもスムーズにできているのではないだろうか。


「――日車さん、これにて終了です。お疲れさまでした」

「は、はい、ありがとうございました」


 緊張はしていたが、やってみるとあっという間に時間が経ったような気がした。とりあえず終了だ。教習所の建物に戻ると、絵菜と拓海がいた。二人も終わったのだろうか。


「おっ、団吉お疲れー、どうだった?」

「お疲れさま、うん、わりとスムーズだったと思うけど、どうかな……絵菜はどうだった?」

「う、うーん、できることはやって、大きな注意はされなかったけど、どうかな……」

「そっか、あとは祈っておくことにしようか」


 しばらく待っていると、教官に呼ばれた。ドキドキしながら行くと、


「――日車さん、卒業検定は……合格です。よくできましたね。あとは免許センターで学科試験を受けてください」


 と、言われた。


「あ、は、はい、ありがとうございました」


 教官にお礼を言って、絵菜と拓海のところに戻る。二人も結果を聞いただろうか。


「よかった、実技は合格していたみたいだよ。二人はどうだった?」

「お、俺も合格していたみたいだ、よかった、これで俺だけ落ちたとかなったらカッコ悪いもんな」

「わ、私も合格してた……よかった……」


 おお、これで全員合格ということになるのか、よかったなと思った。


「よし、じゃあ明日免許センターで学科試験を受けて、そっちも合格できるように頑張ろうか」


 僕が手を出すと、三人でグータッチをした。もう少しで免許を手にすることができる。僕はひっそりと気合いを入れていた。



 * * *



 次の日、免許センターに来た僕たちは、一緒に学科試験を受けた。

 試験時間は五十分、百点満点中、九十点以上で合格となる。仮免許の時と同じくやはり厳しいが、覚えておかないといけないことばかりだ。僕は引っかからないよう慎重に問題を解いていった。

 試験が終わり、ふーっと息を吐く。これに合格すればついに免許を持つことになるのだ。自分がそんなところまで来たのかと、少しビックリしていた。

 免許センターのロビーに行くと、絵菜と拓海がいた。


「お疲れー、終わったなー、なかなか難しかったっつーか」

「お疲れさま、ほんとだね、引っかからないように注意しながら解いていったけど、合ってるかなぁ」

「ふふっ、団吉なら大丈夫。私はヤバいかもしれないけど……」

「いやいや、絵菜も頑張っていたから、きっと大丈夫だよ。あそこに座って待っておこうか」


 ロビーにあった椅子に座って、しばらく待つことにした。合格者は電光掲示板に表示されるらしい。この時間はなかなかドキドキだなと思った。

 僕は飲み物を買ってきて、二人に手渡した。しばらく話しながら待っていると、放送が入りこれから合格者の発表があるみたいだ。僕たちは電光掲示板に注目した。

 合格者の番号が表示された。僕は自分の番号を探す。あるかなと思っていると――


「あ、あった、僕は合格みたいだよ、よかった……二人はどうだった?」


 二人に話しかける……が、二人からの反応がない。ま、まさか落ちてしまったのか……?


「……あった、俺もあった! よかったー合格できたみたいだ!」


 拓海の声が少し大きくなった。そっか、拓海は合格か。残るは――


「え、絵菜はどうだった?」

「……た」

「え?」

「……合格してた! よかった……私だけ落ちたんじゃないかと思った」


 絵菜の声も少し大きくなった。よかった、絵菜も合格か。これで三人とも無事に合格ということになった。


「そっか、よかったよかった。頑張って来た甲斐があったね。あ、合格者はあっちに行くみたいだね」


 僕たちは免許証のための写真を撮ったり、視力検査等を受けてしばらく待つことになった。免許センターの教官からこれから運転をするみなさまへということで、簡単な説明があった。そうだ、これからも安全運転を心掛けないといけない。気をつけておこうと思った。

 その後、免許証が出来上がり、僕たちは受け取った。あ、写真がちょっと眠そうな顔をしている。免許証の写真はなかなか難しいと母さんに聞いていたが、本当だなと思った。


「こ、これが免許証か……! なんか写真がちょっとおかしい気がするけど、まぁいいか。いやー三人で取れてよかったな!」

「ほんとだね、三人で取れてよかったよ。僕もなんか眠そうな顔をしているけど、まぁ仕方ないね」

「団吉見せて……あ、ほんとだ、ちょっと眠そう。でも可愛く写ってるから大丈夫」

「え!? そ、そうかな……あ、絵菜はけっこう普通だね、可愛いよ」

「そ、そうかな、わりとまともに写ってよかった……」

「おいおい、俺の前で二人ともイチャイチャしてるなー、まぁいいんだけどさ」


 ハッとして前を見ると、拓海がニヤニヤしながら僕たちを見ていた。うう、やっぱりこうなってしまうのか……。


「よっしゃ、じゃあ三人で合格したということで、どこかに寄って帰らないか? 昼も過ぎたから昼飯も食べたいしさ」


 拓海の提案に、僕と絵菜も頷いてお昼を食べに行くことにした。

 ここ二か月間、頑張ってきた結果、僕も絵菜も拓海も、無事に運転免許を取ることができた。僕は嬉しい気持ちでいっぱいだった。

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