第56話「同窓会」

 花火大会から二日後、今日は高校の同窓会が行われる。

 高校全体の同窓会らしく、卒業した先輩方もたくさん集まるみたいだ。そしてその全体の同窓会が終わった後、元三年五組のメンバーで集まらないかと話していた。どちらも楽しみだった。

 同窓会は二つ隣の町の商業施設の最上階にある大ホールで行われる。僕は駅前で絵菜と火野と待ち合わせをしていた。遅れないように行くと、火野が来ていたようで僕を見つけて手を振っていた。相変わらず待ち合わせに来るのは早い火野だった。


「おーっす、当日になったなー、何か楽しみだったというか」

「そうだね、久しぶりに会う人も多いから、僕も楽しみだったよ。火野は今実家に帰ってるのか?」

「ああ、今日も実家から来たぜ。もうしばらくこっちにいようと思ってな」

「なるほど、まぁお父さんお母さんも嬉しいんじゃないかな」


 火野とあれこれ話していると、絵菜がやって来た。


「ご、ごめん、遅くなったかな」

「おーっす、いやいや、俺らが早かっただけだからさ」

「うん、まだ時間は早いけど、行ってみようか」


 三人で電車に乗って、二つ隣の町の商業施設に行く。このあたりに来るのもなんだか久しぶりのような気がした。

 商業施設の最上階に行き、受付の女性に話して会費を納めた。僕たちは卒業したばかりだからそんなに高くないみたいだ。その後ホールの中に入る。すでに人はたくさんいた。知り合いはいるかな……とキョロキョロしていると、


「――あ、日車くんたちじゃないか!」

「――あ、みなさんお久しぶりです……!」


 と、声がした。見ると中川悠馬なかがわゆうまくんと富岡さんがいた。中川くんは火野と同じくサッカー部だった、長身のイケメンだ。久しぶりに会ったがカッコいいのは変わらなかった。そして中川くんと富岡さんはお付き合いをしている。


「あ、お、お久しぶり」

「ああ、お久しぶりだね、二人とも変わらず仲が良いみたいだね」

「おーっす、二人とも久しぶりだな、変わったような変わってないような」

「ああ、まだ卒業して半年弱ってなると、こんなもんなんだな。でも日車くんも火野も沢井さんも、元気そうでよかったよ!」

「ほんとですね……! 日車さんと沢井さんは仲良くしてますか……?」

「あ、ま、まぁ、仲が良いのは高校時代と変わらないかな……あはは」

「う、うん、高校時代と変わらない……」

「そうなんですね……! なんだか懐かしいですね、みんなで楽しかったですね……!」

「――あ、いたいたー、やっほー、なんか懐かしいねぇ!」


 みんなで話していると、高梨さんがやって来た。


「おお、高梨さんもお久しぶり! 元気そうでよかったよ」

「お久しぶりー、相変わらず中川くんはイケメンだねぇ。あ、こちらが噂の彼女さんかな?」

「あ、高梨さんと富岡さんは話したことなかったんだっけ」

「そだねー、はじめまして、高梨優子といいます! って、卒業してからはじめましてっていうのも不思議なもんだねぇ」

「は、はじめまして、富岡愛莉です……! そっか、たしか火野さんの彼女さん……!」

「そうそう、あ、ということはここはみんなお付き合いしている人たちが集まったのか……」

「あはは、そうみたいだな、それにしてもなんか懐かしい顔ぶれが続々集まってきてるみてぇだな、ちょっと元サッカー部の連中に挨拶してくるぜ」

「あ、じゃあ俺も行こうかな、ごめん愛莉、ちょっと行ってくるよ。久しぶりに会うと楽しいね!」


 火野と中川くんは元サッカー部の友達に会いに行ったようだ。久しぶりに会うから思い出話もあるだろう。


「火野も中川も、イケメンなのは変わらないな……」


 僕の隣で絵菜がぽつりと言った。


「ほんとだね、昔から変わらないなぁ、カッコいいっていいよなぁ」

「ふふっ、団吉も可愛いからカッコいいになってきてるよ、大丈夫」

「ほんとですね、日車さん、なんかカッコよくなってます……!」

「そーそー、二人の言う通り、日車くんもカッコよくなってきてるんだよねー。これが大人になってるってやつなのかなー。絵菜もメロメロだねぇ」

「なっ!? ま、まぁ、そうとも言わないこともない……って、わ、私何言ってるんだろう」


 慌てる絵菜が可愛くて、僕はつい笑ってしまった……が、急に褒められたことが恥ずかしかった。


「あはは……って、か、カッコよくはないと思うけどね……たぶん。あ、ステージで何か始まるみたいだね」


 ホールのステージで、司会の女性が話を始めた。青桜高校の卒業生がたくさん集まっているので、その感謝の言葉と、今日はバイキング形式で色々揃えてあるから自由に食べてくださいとのことだった。僕たちは卒業したばかりでお酒はまだダメだが、ビールやカクテルなどもあるらしい。また大人になった気分だ。


「よーし、私お腹空いてたよー、絵菜も富岡さんも日車くんも、取りにいこー!」

「あはは、なんか高梨さんらしいというか、なんというか……って、それは高梨さんに失礼なのかな」

「ふふっ、団吉はやっぱり優しいな」

「ほんとですね、久しぶりに日車さんの優しさを見た気がします……!」

「え、そ、そうかな、うーんやっぱり僕は優しすぎるのかなぁ、まぁいいか。せっかくだし僕たちも食べて飲むようにしようか」


 僕たちは色々な種類の食事をとって、お酒ではなくてジュースをもらって楽しんでいた。ステージでは司会の女性を中心に、青桜高校のこれまでの歴史を振り返るスライドショーが流れていた。なるほど、昔はこんな感じだったのかと、新しい発見をしたような気分だ。


「へぇー、うちの高校ってそこそこ歴史あったんだねぇ、全然知らなかったよー」

「ほんとだね、なんか卒業してから新しい発見をしたって感じだよ」

「ほんとですね……! あ、このパスタ美味しいです……! 沢井さんのそのピザは美味しいですか?」

「あ、うん、美味しい。優子はめちゃくちゃ盛ってるな……」

「そーそー、これくらいいけるかなーってね、私成長期なのかな、食欲が止まらないよー」


 高梨さんがおなかをさすりながら言うので、みんな笑った。それでも高梨さんはこのスタイルだもんな……くそぅ、美人はほんとに困る……。

 その後、青桜高校クイズなどで、盛り上がる同窓会だった。みなさんも笑顔があふれている。きっと高校時代を思い出しているのだろう。僕も懐かしい気持ちになると同時に、嬉しい気持ちになっていた。

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