第54話「心の中」
次の日、目が覚めると目の前に団吉の寝顔があった。
目が覚めて団吉がいることが嬉しい……しばらく団吉の寝顔を見つめた後、起こしてしまうかなと心配だったが団吉の頭をなでた。昔から可愛い顔をしているが、最近大人になっているようでカッコよさも出てきた団吉だった。でも寝顔はやっぱり可愛い……思わず笑みがこぼれる……って、あ、危ない人みたいだな。
「――ん、絵菜……?」
その時、団吉が半分くらい目をあけて私を呼んだ。起こしてしまったかな。
「おはよ……って、ご、ごめん、起こしたかな」
「ううん、大丈夫だよ……僕、いつのまにか寝てたみたいで」
「私も寝てた。団吉の寝顔が可愛くてつい見とれてしまった」
「そ、そっか、恥ずかしいな……今日は絵菜の寝顔が見れなかった……残念」
「ふふっ、いつも見られてるから、たまには団吉の寝顔が見たい」
私はそう言って団吉にきゅっと抱きついた。団吉がそっと私にキスをしてくれた。私は嬉しくなってもう一度自分から団吉にキスをした。
「起きた時に団吉がいるって幸せ過ぎる……」
「そっか、うん、僕も絵菜がいると嬉しいな……あ、着替えないとね」
二人で起き上がって着替えることにした。もうお互い向こうを向くこともないのだが、団吉はやっぱり恥ずかしいのか少し目をそらしてしまう。そんなところも可愛かった。
「団吉、もっとしっかり見ても大丈夫だよ」
「うう、さすがに恥ずかしくて……でも、こういうのにも慣れないといけないね」
団吉は火野より筋肉がないことを気にしていたが、やっぱり男の人らしい身体をしている。いつか私と団吉が裸になって……って、わ、私は朝から何を考えているのだろう。
着替えてリビングに行くと、母さんが朝食の準備をしていた。
「まあまあ、二人ともおはよう。団吉くん、よく眠れましたか?」
「おはようございます。はい、ぐっすり寝てたみたいです」
「ふふふ、それはよかったです。絵菜が寝かせないんじゃないかと心配でした」
「なっ!? い、いや、それはない……」
「ふふふ、二人とも座って。真菜と日向ちゃんが起きて来たら朝食にしましょう」
ま、まぁ、ずっと団吉とイチャイチャしていたいという気持ちはあるが……いや、ちゃんと寝ることも大事なのだろう。
三人で話していると、真菜と日向ちゃんが起きて来た。
「……あ、お兄ちゃんたち起きてたんだねー、おはようございます……」
「お、おはよ」
「お、おはよう、なんか眠そうだな」
「……おはようございます、また日向ちゃんと盛り上がって夜ふかししてしまいました……」
「ふふふ、二人ともおはよう。友達同士だと楽しいのは分かりますよ。でもご飯はしっかり食べましょう」
みんなで朝食をいただく。今日はパンとサラダとベーコンエッグだった。これなら私でも作れそうだな……と、ひっそりと安心している私だった。
朝食をいただいた後、みんなでテレビを観ながら話していた。
「日向と真菜ちゃんは眠くない? 大丈夫?」
「うん、ご飯食べたら元気出てきたよー! 私はやっぱり胃が目覚めると全開って感じだねー!」
「お、おう、なんかよく分からんが、眠くないならよかった。真菜ちゃんは大丈夫?」
「はい、私もなんとかスッキリしてきました。そういえばお兄様とお姉ちゃんはいつもどんな感じで寝てるんですか?」
「え!? あ、いや、その……おやすみって言って普通に寝てるというか、なんというか……あはは」
「んんー? なーんかお兄ちゃん怪しいなぁ、絵菜さん、本当ですか?」
「あ、いや、まぁ……うん、楽しい話してたらいつの間にか寝てるってことが多いかな……」
さすがにくっついたり、ちょっとえっちなことをしているとかは言えなかった。
「そうですかー、まぁでもお兄ちゃんも男ですからねー、優しい顔して絵菜さんをパクっと食べちゃうんですよねー」
「まあまあ、お兄様も大胆ですね。お姉ちゃんも心は狼だから、お兄様を襲っていそうですが」
「え!? そ、それはないかな……うん、それはない……あはは」
「あ、まぁ……うん、それはない……」
「まあまあ、ふふふ、絵菜も団吉くんも、可愛いですね。仲が良いっていいことですね」
ま、まぁ、昨日えっちしたいって言ったのは私なのだが……さすがにみんなに聞かせるわけにはいかなかった。
「そ、そんなこと言ってるけど、日向だって長谷川くんとイチャイチャしてるだろ?」
「ええ!? あ、まぁ……そ、そこそこにねー……あはは」
「ふふふ、お兄様大丈夫ですよ、日向ちゃんと長谷川くんはいつもラブラブで、もうこっちが恥ずかしくなるくらいですから」
「ま、真菜ちゃん!? あ、いや、そうなのかなー、よく分からないなー……あはは」
日向ちゃんが恥ずかしそうに俯くので、みんな笑った。日向ちゃんは団吉にべったりなところがあるが、長谷川くんとも仲が良さそうでよかった。
「あ、そうだ、お兄様、また夏休みの課題を教えてくれませんか? まだまだあるので」
「あ、うん、いいよ、じゃあ日向と真菜ちゃんはこれから勉強か」
「ええ!? いやー、私なんか眠くなってきたなー……ふああ」
「嘘をつくんじゃないよ、ご飯食べたら元気出たんだろ。さぁ、日向もやるんだぞ」
「う、ううー、お兄ちゃんが厳しい……バカーアホー」
ぶーぶー文句を言う日向ちゃんを見て笑ってしまった。団吉は優しいが、勉強のことになるとやはり日向ちゃんにも厳しい。まぁ怒っているわけじゃないので、そこも団吉の優しさなのだろう。
二人が夏休みの課題を始めた。日向ちゃんは物理、真菜は英語をやっているみたいだ。ちょくちょく団吉に訊いているが、団吉はすらすらと教えることができている。いつ見てもすごいなと思う。
私はそんな三人を見ながら、昨日の夜のことを思い出していた。
(……ど、どうしよう、団吉にえっちしたいって言っちゃった……こいついつもこんなこと考えているのかって思われてたらどうしよう……)
「……絵菜? なんかボーっとしてるけど、どうかした?」
団吉にふと訊かれて、私はハッとした。い、いかん、昨日から変なことばかり考えてしまう。
「あ、い、いや、なんでもない……」
「そっか、ならいいけど……あ、日向そこ違う、そこはこうして、こうなって……」
なんか団吉に心の中を覗かれているようで、私は恥ずかしくなった。でも、団吉とくっついた時のにおいを思い出して、ちょっと嬉しくなっている私だった。やっぱり危ない人かもしれない。
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