第51話「オープンキャンパス」

 八月八日、今日は大学でオープンキャンパスが行われる。

 高校生に大学を見てもらって、どんなところか肌で感じてもらうイベントだ。僕も去年このオープンキャンパスに参加して、川倉先輩や慶太先輩に案内してもらったのだ。なんだか懐かしい気持ちになった。

 自分のことを思い出しながら僕は大学へ行った。今年は案内する側だ。ちょっと緊張するが、高校の後輩も来ると言っていた。楽しみにしているところもあった。

 大学に行くと、研究棟の前にサークルメンバーが集まっていた。


「お、団吉くんおはよー!」

「おはようございます、みなさん早いですね」

「やあやあ、団吉くんおはよう。そうなんだ、ボクはこの日を楽しみにしていてね、夜も眠れなかったよ!」

「はいはい、分かりやすい嘘はいいから。そういえば去年は団吉くんを案内したねー、もう一年経つのかぁ」

「そうですね、僕も同じこと思っていました」

「団吉はやっぱり来てたんだな、俺はさすがに遠くて行けなかったっつーか」

「ふふふ、拓海さんは地元が遠いですもんね、私も遠かったから高校生の時は来れませんでした。今日は色々な人に声をかけてみようかなと思っています」

「よし! じゃあ蓮ちゃん、私と一緒に行ってみようかー! ああ、拓海くんも一緒に! 学長の話が終わってどんどん高校生も来てるみたいだからねー」

「ええ!? お、俺もですか!?」

「いいじゃんいいじゃん、綺麗な女性に囲まれて嬉しいでしょー、さぁ行こう行こう~」


 そう言って川倉先輩と成瀬先輩が拓海を引っ張ってどこかへ行ってしまった。た、拓海は大丈夫かなと、ちょっと心配になった。


「よし、じゃあボクは団吉くんについて行くことにしようかな。高校生がうちの大学に行きたいと思ってくれるといいね!」

「そうですね、あ、そういえば高校の後輩が来るらしいです。慶太先輩も懐かしいと思いますよ」

「おお、そうなんだね! 誰に会えるのだろうか、楽しみだね!」

「ああ、それは――」

「――あ、団吉さん!」

「――あ、日車先輩!」


 突然僕を呼ぶ声がした。見ると東城さんと橋爪さんがニコニコしながらやって来た。後ろには恥ずかしそうにしている天野くんもいる……って、あれ? 天野くんと橋爪さんは来ると聞いていたが、東城さんもついて来たのか。


「ああ、みんなお久しぶり……って、東城さんも来たんだね」

「はい! 蒼汰くんについて来ました! そしたら橋爪さんも行くって聞いたから、嬉しくて!」

「日車先輩お久しぶりですー! な、なんか大学生になって、カッコよくなりました!? こ、これがエリート大学生というやつか……! 日車先輩と大学の相性度は四百三十二パーセントですね!」

「え!? い、いや、それはないと思うけどね……って、ち、近――」


 相変わらずぐいぐい来る二人だった。


「ふ、二人ともストップ、日車先輩困ってるから……すみません、お久しぶりです」

「ああ、天野くんも久しぶりだね、大島さんの家にみんなで行って以来か。元気にしてる?」

「はい! 元気にしてます。しかしここが大学なんですね、すごく広い……青桜高校も広いと思っていたけど、それ以上だ……!」

「あはは、僕も去年同じこと思ったよ。あ、慶太先輩もいるよ」

「おお! 誰が来るのかと思えば、蒼汰くんではないか! お久しぶりだね!」

「ああ! 慶太先輩もこの大学だったんですね……! お久しぶりです! あの時はお世話になりました」


 慶太先輩が手を出して、天野くんが恥ずかしそうに握手している。


「いやいや、団吉くんから聞いていたのだが、蒼汰くんも生徒会長になったらしいではないか! ほんとに素晴らしいね、さすがボクが見込んだ男だよ」

「いえいえ、僕は慶太先輩や九十九先輩のようにはできませんでしたが……まぁでも自分なりに頑張れたのではないかと」

「そうかそうか! それにしても、蒼汰くんもモテるのだね、可愛い女性を二人も連れて来ているなんて、さすがだね!」

「ええ!? い、いや、あの……まぁいいか、こちらが、ぼ、僕の彼女の東城さんで……こちらは生徒会で一緒だった橋爪さんです」

「え!? あ、天野くん、話していいの……!?」

「あ、はい、大丈夫です。橋爪さんにもいつの間にかバレてましたし……で、できればここだけの話にしてもらえるとありがたいですが……」

「うふふー、そうですよー、天野くんと東城さんは仲良さそうでしたからねー、ピンと来てました! あ、はじめまして! 橋爪葵といいます!」

「はじめまして、東城麻里奈といいます!」

「おお、はじめまして、佐久本慶太といいます。葵さんと麻里奈さんか、可愛らしいね!」


 慶太先輩が二人と握手していた。や、やはり絵菜への対応は特別だったんだな……と、ふと昔を思い出した。


「えへへー、褒められちゃった! 団吉さん聞きました!? 団吉さんももっと褒めてくれていいんですよ! なんちゃって」

「え!? ま、まぁ、東城さんはいつも可愛いから……あはは。そ、そういえば天野くんと橋爪さんは、うちの大学を受験するかもしれないって聞いたけど」

「うふふー、そうなんです! でも私は模試の判定でもギリギリだから、もう少し頑張らないといけないのですが……」

「はい、僕もそのつもりです。文学部を受けようかなって思っているのですが……」

「おお! 蒼汰くんはボクの後輩になるかもしれないんだね! 葵さんはどこの学部を受けるつもりなんだい?」

「あ、私は理工学部に興味があります!」

「あ、そしたら橋爪さんは僕の後輩になるかもしれないのか、楽しみだね」

「ええー! そうなんですね! あ、憧れの日車先輩と同じキャンパスライフ……キャー! 勉強頑張らないと!」


 な、なんかテンションの高い橋爪さんだが、まぁいいか。そう、天野くんから聞いたのだが、二人はうちの大学を受験するつもりらしい。天野くんも勉強ができるみたいだし、橋爪さんは理系女子だし、二人とも頑張ってほしいなと思った。


「いいなー、二人は団吉さんと一緒になれるかもしれないのかー、私ももっと勉強ができたらよかったなぁ」

「ま、まぁ、東城さんはお仕事頑張らないとね……あ、僕と慶太先輩で、大学を案内しましょうか」

「ああ、そうだね! ぜひ三人とも見ていってくれたまえ!」


 それから僕と慶太先輩で三人を案内した。三人とも「す、すごい……!」と言いながら興味を持ってくれたみたいだ。去年の自分のことをまた思い出した。

 高校三年生は来年まで大変だと思うが、ぜひ勉強も頑張ってもらって、また一緒になれるといいなと思っていた。

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