第24話「一緒に」

「よし、またいつものようにじゃんけんしますか!」


 日向の一言でお風呂の順番を決めるじゃんけんが始まる。結果、真菜ちゃん、絵菜、日向、僕の順になった。

 僕は真菜ちゃんと一緒に脱衣所に行って、タオルやドライヤーを出してあげた。


「あ、真菜ちゃん、ここに置いておくね」

「ありがとうございます。そういえばお兄様はお姉ちゃんの裸をもう見たのですか?」

「え!? い、いや、裸は見たことないかな……」

「そうですか、前にも言ったと思いますが、男の人はみんな見たいんだろうと思っていました。お姉ちゃんもお兄様なら全然嫌じゃないと思いますよ」

「え、あ、まぁ、僕も男だから興味はもちろんあるというか……ん? 僕は何を言っているんだろう」

「ふふふ、優しいお兄様らしいですね。そんなところがいいのです。じゃあお風呂に入らせてもらいますね」


 そう言って真菜ちゃんが服を脱ぎ始めたので、僕は慌てて脱衣所を出た。う、うう、さすが姉妹、絵菜と似て真菜ちゃんも大胆だ……薄いピンクか……って、なんでしっかりと見ているんだ僕は! ああ神様、こんな汚れた僕をお許しください……!

 リビングに戻ると、絵菜と日向と母さんが楽しそうに話していた。


「あ、お兄ちゃんと真菜ちゃんが一緒にお風呂に入っちゃうんじゃないかと思ったよー」

「なっ!? そ、そんなことしないよ……」

「ふふふ、団吉、一緒に入るなら絵菜ちゃんとね」

「か、母さんまで何言ってるの……」


 なんだか顔が熱くなってきた。そんな僕を見て三人は笑っている。うう、やっぱり男一人というのはこういう時恥ずかしいものがあるな……。

 みんなで順番にお風呂に入り、しばらくテレビを観ながら話していたが、そろそろ寝ようかという話になった。


「テレビもつまんなくなってきたから、そろそろ部屋に行こっか! また真菜ちゃんと女子の秘密の話しよーっと!」

「そうだね、クラスが分かれちゃったからなかなかできなくなっちゃったもんね!」


 日向と真菜ちゃんが顔を合わせて「ねー」と言っている。やはり女子の秘密の話というのが分からないな……と思ったが、もっと大事なことがあった。


「あ、あのー、絵菜が僕の部屋で寝るのは決定事項なのでしょうか……」

「あったりまえだよー! お兄ちゃんもそうしたいでしょー、まったく素直じゃないんだからー」

「え、あ、まぁ、いつものことというか、なんというか……あはは」


 まぁ予想はしていたけど、一応訊いてみたというだけです……僕はまた顔が熱くなってきた。


「お兄ちゃんがそろそろ絵菜さんを襲いそうだけど、まぁ大人だもんね! おやすみなさーい」

「ふふふ、逆にお姉ちゃんがお兄様を襲いそうですが……おやすみなさい」

「ふふふ、団吉、男として絵菜ちゃんに優しくしないと嫌われるわよ、おやすみ」

「お、おやすみなさい……」

「み、みんな何言ってるの……おやすみ」


 う、うう、なんか一気に恥ずかしくなってきた……それはいいとして、絵菜と二人で僕の部屋に行く。ベッドに腰掛けると、絵菜も横に座った。パジャマ姿の絵菜が可愛くて、そして妙に色っぽくて、僕はずっとドキドキしていた。


「ふふっ、嬉しい……また団吉と一緒に寝れる」

「ああ、そうだね……って、や、やっぱり一緒に寝るんだね……」

「……ダメか?」


 絵菜が上目遣いで僕のことを見てくる。あああ、そんな目で見つめられたらダメとは言えません……うう、僕も男なんだな。


「だ、ダメじゃないよ、一緒に寝ることができて僕も嬉しいよ……」


 そう言って僕は絵菜をぎゅっと抱きしめた。絵菜も僕の背中に手を回す。


「絵菜、眠くない?」

「ううん、まだ大丈夫。もっと団吉とくっついていたい……」


 二人でベッドに入った。お互い見つめ合った後、僕はまた絵菜をぎゅっと抱きしめた。さっきよりも距離がさらに近い。ぴったりと絵菜にくっついている。ドキドキはおさまらないが、こうして絵菜の温もりを感じることができて、僕は嬉しかった。


「……団吉はほんとに優しいよな、こんなにくっついても私を襲ったりしないし……」

「え、あ、そうかな……ただ、僕たち一応未成年だし、これ以上はまだダメかなって思ってて……ごめん、こんな度胸のない男で……」

「ううん、ちゃんと考えてくれてる団吉が大好き……でも、今日はちょっといたずらしちゃおうかな」


 いたずら? と思っていたら、絵菜が僕の胸をそっと触ってきた。あ、ああ! 刺激を受けるとヤバい、ヤバすぎる、僕の下の方がどんどん反応してきている……! 必死に隠そうとするが、絵菜も気づいたのかそっと下に――


「……私のも、触って……?」


 絵菜が右手で僕の手をとって、自分の胸にぴとっと当てた。や、やっぱり柔らかい……って、あああ! ぼ、僕はとんでもないことをしているのではないだろうか……! でも、絵菜にあちこち触られておかしくなってしまった僕は、絵菜の胸をそっと――


「……あっ」


 絵菜が可愛い声を出した。もうダメだ、頭の中がすべて吹き飛んで真っ白になっているようだ。僕は我慢できなくなって、絵菜の唇に自分の唇をそっと重ねた。一度だけでなく、何度も、何度も。絵菜がとろんとした目で僕を見つめてくる。


「……団吉、私ヤバい……おかしくなってしまう……」

「う、うん、僕もヤバい……頭が真っ白で何も考えられないというか……おかしくなる……」

「……嬉しい。でもちゃんと言わなきゃ……団吉、誕生日おめでと」


 そう言って絵菜がキスをしてきた。


「ありがとう、こうして絵菜がいてくれることが何よりも嬉しいよ」

「ふふっ、私も嬉しい……団吉が大好き過ぎて、もうダメ……」


 あまりの嬉しさに、僕は絵菜をまたぎゅっと抱きしめた。


「……団吉、もうちょっと、触って……?」

「……うん、分かった……」


 いつかは僕も絵菜と一緒になる日が来るのかもしれないが、今はまだこれでいい。その夜は眠くなるまで、二人で抱き合っていた。

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