第21話「久々の再会」

 ゴールデンウィークが迫った、四月末の祝日。

 今日から大学は五月六日まで休講となる。休日の間に平日もあるが、それも含めて休みのようだ。高校時代とは違って休みが多いんだなと思った。

 僕は今日、以前元生徒会役員メンバーで話していたように、みんなで大島さんの家に遊びに行く予定にしていた。駅前で九十九さんと天野くんと待ち合わせをしている。集合時間の五分前くらいに行くと、九十九さんと天野くんがもう来ていたようだ。


「日車先輩こんにちは! お久しぶりです!」

「日車くんこんにちは。お久しぶり」

「こんにちは、ごめん待たせてしまって。ほんとお久しぶりだね」


 久々の再会でみんな笑顔になる。高校を卒業してから会うこともなかったので、新鮮だった。

 三人で駅前から電車に乗る。大島さんの家は都会とは反対方向で、ちょっと距離があった。しばらく電車に揺られるが、三人で話していると時間が経つのがあっという間だった。

 大島さんの家の最寄り駅に着き、歩いて行く。このあたりも住宅街のようで、火野が住んでいるところと似ているなと思った。スーパーも駅の近くにあるようだ。

 大島さんの家に着き、部屋番号を押すと、「はい」と聞こえてきたので、「こんにちは、日車です」と言うと、「ああ、みんな来たのね、どうぞ入って」と聞こえてきた。四階の大島さんの家のインターホンを押す。すぐに大島さんが出てきた。


「みんないらっしゃい、どうぞ入って」

「大島先輩、お久しぶりです! すみませんおじゃまします」

「お、おじゃまします……こ、ここが大島さんのお家か……いいな」

「おじゃまします。いいところに住んでるね。あ、部屋もいくつかあるんだね」


 一部屋は火野の家よりも狭い気がしたが、大島さんの家は部屋が二つあった。一つをリビングにして、もう一つは寝室にしているのかな、そしてキッチンとトイレとお風呂場がある。火野の家と同じく綺麗に片付けられていた。


「そうね、部屋自体はそんなに広くないんだけど、部屋が二つあるのが気に入っているわ。あ、ジュース持ってくるわね。みんな適当に座って」


 僕たちは部屋を見渡しながら座らせてもらった。大島さんがジュースを持って来てくれた。


「はい、どうぞ……って、お、おかしいわね、やっぱり日車くんの隣に九十九さんがいる……相変わらず全然隙がないわ……ブツブツ」

「ありがとう……って、大島さん? なんかブツブツ言ってるけど……?」

「まぁいいわ。みんな会うのは久しぶりね。元気そうでよかったわ。乾杯しましょうか」


 僕たちは「かんぱーい!」と言ってコップを軽く当てた。


「天野くん、高校のみんなは元気にしてる? 生徒会のお仕事はちゃんとできてるって言ってたけど」

「はい、みんな元気に頑張ってます。でも夏で僕も生徒会長としてのお仕事は終わるので、ちょっと寂しいというか」

「そうね、なんだか懐かしいわ。このメンバーで頑張ってお仕事したわね」

「う、うん、私は全然役に立ってなかったけど……」

「ううん、九十九さんも生徒会長としてみんなの前で挨拶したり、会議でも大事なところで意見が言えて、ちゃんとできてたよ。すごいなと思ってたよ」

「そ、そうかな……日車くんはやっぱり優しいな……カッコいい」


 隣に座っていた九十九さんが僕の手をきゅっと握ってきた。


「え!? あ、まぁ、カッコよくはないけどね……あはは」

「つ、九十九さん!? くっ、どうしてそんなに自然に手がつなげるのかしら……!」

「お、大島さん? なんで慌ててるの……?」


 なぜか慌てる大島さんに、きょとんとした顔の九十九さん、それを見て笑う天野くん……というのは、なんだか懐かしい気持ちになった。


「あはは、先輩方が変わってなくて安心しました。ほんと懐かしいですね。みんなでハンバーガー屋に行ったり、カラオケに行ったりしましたね」

「そうね、九十九さんが初めてのところばかりで楽しそうだったのも覚えてるわ。九十九さんは大学で友達出来たかしら?」

「う、うん、同じ理学部の女の人とよく話してるよ。でも、なぜか男の人から声をかけられることもあって、ちょっと戸惑っているというか……」


 九十九さんがちょっと恥ずかしそうに下を向いた。そ、そうか、切れ長の目で美人の九十九さんだ。モテてもおかしくないなと思った。


「そ、そうなのね、なんか九十九さんは悪い男に騙されそうだから心配だわ……高価な壺とか宗教勧誘とか遊び人とか、気をつけるのよ」

「そ、それはないと思うけど、ありがとう。大島さんも男の人に声かけられたりしない?」

「私は情報工学部だから、周りに男の人が多いわね。こ、こう見えて私も男の人に声をかけられたわ」

「お、おお、ついに大島さんが男の人に……!」

「あはは、まぁ高校では全然モテなかったから……って、う、うるさいわね日車くん、私だって可愛いからこれからモテモテになる予定なのよ」

「あ、ご、ごめん、白馬に乗った王子様が迎えに来てくれるんだもんね」

「な、なんか懐かしいこと覚えてるわね……そうよ、いずれ私も彼氏持ちよ。ま、まぁ、日車くんがなってくれてもいいんだけど……ブツブツ」

「そうだよね、大島さんも美人さんだから、そのうちいい人が現れると思うよ」

「わ、私の一言無視したわね……ま、まぁいいわ。そうなれば沢井さんにデカい顔されなくて済むからね……ふふふふふ」


 大島さんが何やら燃えている。女性の心はやっぱりよく分からないな……。


「あはは、九十九先輩も大島先輩も美人さんだから、周りの男性は放っておかないでしょうね……って、そんなこと言ってる僕はまだまだ日車先輩を超える男にはなれていないけど……ブツブツ」

「あ、天野くん? まぁ、みんな元気に頑張っていてよかったよ。僕も大学で一人にならなくて済んだし……」

「ああ、この前も話したけど一人というのも懐かしいわね、日車くんはいつも一人で、なんだか暗い顔して――」

「わ、わーっ! 大島さん、それ以上は言わないで……!」


 僕が慌てていると、みんな笑った。うう、もうあの頃には戻りたくないものです……。

 みんなで懐かしい話をしていると、時間が経つのがあっという間だった。こうして高校の時の友達に会うのもいいものだな。みんなの笑顔も見れて、僕は嬉しい気持ちになっていた。

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