第11話「元生徒会役員」

 火曜日、僕は大学に行った後、バイトに行った。

 最上さんも学校が終わってからバイトに来た。女子高の制服姿が可愛かった……って、ぼ、僕は何を考えているのだろう。

 二人でシフト表を眺めて、この日とこの日に入るようにしようかと話しながら決めていた。最上さんは嬉しそうな笑顔を見せて、「うち、頑張る」と言っていた。うん、慌てず少しずつ慣れていくといいと思う。

 バイトが終わって帰ってから、夕飯後に僕は部屋で明日の準備をしていた。色々な科目がある上、もう少ししてからオンラインでの講義もある。僕はパソコンを持っているのでそれでできるなと思っていたが、データでの配布物もあるので、パソコンとは別にタブレットがあると便利そうだなと思った。


 ピロローン。


 タブレットはどんな種類があるのか見てみようかと思ったらスマホが鳴った。RINEが送られてきたみたいだ。


『九十九先輩、日車先輩、大島先輩、お久しぶりです。お元気ですか?』


 送ってきたのは天野蒼汰あまのそうたくんだった。高校時代の僕の後輩で、今は三年生で青桜高校の生徒会長を務めている、真面目でしっかりした男の子だ。以前作った生徒会役員のRINEグループに送ってきたみたいだ。

 僕も高校時代は生徒会の副会長を務めていた。最初はできるかどうか不安だったが、周りの人の支えもあってなんとか副会長としての仕事ができたのではないかと思う。何事からも逃げていた僕にとって、大きな自信になった。

 そう思っているとさらにRINEが送られてきた。


『こんばんは、お久しぶり。私は元気にしてるよ。みんなも元気?』

『こんばんは、ほんとお久しぶりね、私も元気よ。大学がけっこう大変だわ』


 九十九つくもさんと大島おおしまさんが送ってきたみたいだ。九十九さんというのは九十九伶香つくもれいか。僕の同級生で生徒会長を務めていた。学年トップの頭の良さだった美人の女性だ。

 大島さんというのは大島聡美おおしまさとみ。僕と三年間一緒のクラスで、生徒会では書記を務めていた。メガネをかけた美人の女性だ。こ、この二人はなんか僕に近いなと思うことがあったのだが、たぶん気のせいだろう。


『お久しぶりだね、みんな元気そうでよかったよ。僕も元気だよ。あ、みんな通話できるかな? 久しぶりに話したいなと思って』


 ちょっと話したい気分になったので僕が送ると、みんなOKと返事が来たので、僕はみんなに通話をかけた。


「もしもし、先輩方こんばんは!」

「も、もしもし、こんばんは、みんな久しぶりだね」

「もしもし、こんばんは。そうね、卒業してから話すこともなかったわね」

「もしもし、こんばんは。ほんとだね、なんか色々と思い出して来たよ」


 僕が少し笑うと、みんなも笑っていた。


「あ、そういえば天野くんは生徒会の仕事、ちゃんとできてる? まぁみんなのことだから大丈夫だとは思うけど」

「はい、みんなで頑張ってお仕事ができてます。先輩方に笑われないように」

「そう、よかったわ。みんななら大丈夫そうね。九十九さんと日車くんは大学生活楽しんでるかしら?」

「う、うん、みんなとバラバラになったから一人になるのかなって思ったけど、同じ学部で話しかけてくれる人がいて、よかったよ」

「僕も九十九さんと一緒でまた一人になるんじゃないかと思ったけど、友達ができてよかったよ」

「そうなのね、よかったわ。日車くんは高校一年生の時、いつも一人でいた頃が――」

「わ、わーっ! 大島さん、それ以上は言わないで! 悲しい過去が思い出される……!」


 僕が慌てていると、みんな笑った。うう、その通りです……いつも昼休みに教室からダッシュで逃げていたあの頃がありました……。


「あはは、先輩方は変わらないですね。なんか安心しました。でも大学って色々と大変そうですね」

「そうね、講義も始まったし、私は一人暮らしもしているから、毎日がけっこう大変だわ」

「わっ、大島さん、一人暮らししてるんだね。いいな、私はお父様が許してくれないし……」

「大学が実家からだとちょっと遠かったからね、しばらく毎日通うって考えると、実家を出てもいいのかなって思ったわ」


 そうか、大島さんも一人暮らしをしているのか。ふと拓海のことを思い出した。


「そっか、大島さんも頑張ってるね。僕の友達も一人暮らししてるって言ってて、僕もいつかそういう日が来るのかなぁと思ってたよ」

「実家を離れると大変さと親のありがたみが分かるわね、まぁ、日車くんが一人暮らししたら、私突撃しようかなーなんて……」

「うんうん、親がいかにありがたいかよく分かるらしいね。今は実家だからこれが普通だと思っちゃうけど……」

「わ、私の一言無視したわね……ま、まぁいいわ。それよりも、みんな私の家に遊びに来ないかしら? ちょっと距離あるけど、駅前から電車で来れるし」

「あ、久しぶりに先輩方にお会いしたいです! ぜひ行かせてもらえると嬉しいです!」

「え、い、いいの大島さん? そこは男子禁制の物件とかじゃないの?」

「つ、九十九さんが想像しているのは女子寮みたいね……大丈夫よ、オートロックがついた普通の建物よ。まぁ、部屋はそんなに広くないけど、三人が来るくらいならなんとかなるわ」


 そ、そっか、一人暮らしをしている人の家か……ん? でも女性の家に簡単に行っていいものなのだろうか?


「お、大島さん、トラップとかないよね? 女性の家だし、僕と天野くんが入ったら警察が来るとか……」

「ひ、日車くんもなんか変な想像してるわね……大丈夫よ、そんなのはないわ。ま、まぁ、日車くんだったらいつ来てくれてもいいんだけど……ブツブツ」

「そ、そっか、じゃあそのうちみんなで行かせてもらおうかな、九十九さんも天野くんも行ける?」

「はい、僕は大丈夫です」

「わ、私も大丈夫。そっか、大島さんのお家か……楽しみ」

「な、なんかやっぱりスルーされてる気がするのは気のせいかしら……ま、まぁいいわ、みんないらっしゃい、待ってるわ」


 しばらく四人で色々な話をしていた。またこのメンバーで会えるのか。僕は嬉しい気持ちになっていた。

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