第六十六話 明かされる真相2
『二年前のことだ。俺は、五つ歳の離れた妹のクレアと共に、
悔恨と憎悪、憤怒。
負の気持ちが複雑に混じり合った、狂気にも似た強烈な感情が押し寄せる。
『クレアを目の前で失った俺は、そのとき怒りで頭が真っ白になった。そのときだった。運命の
「《
僕は、あまりに禁忌過ぎる力を内包しているそのユニークスキルの存在に、驚いた。
だが、ユニークスキルの入手自体が難しく、それ故に強力なものが多いというのが一派的な認識だ。
僕の持つ《
指定した対象を崩壊させるユニークスキルがあっても、何ら不思議はない。
『ユニークスキル《
「だから、クレアの命を奪い去ったこの世界――ダンジョンそのものを復讐に設定したと?」
『そういうことだ』
なるほど。
この男の狙いは、ダンジョン全ての崩壊。単刀直入に言って、冗談じゃない。
ダンジョン内に、どれほどの人間がいると思っているのか。
ダンジョンを崩壊させると言うことは、つまり攻略者を見殺しにするということに他ならない。
怒りが湧いてきながらも……この男が、どうして
けれど、解せないことがある。
「わからないな。お前の復讐に、どうしてここにいるクレアが必要だったんだ?」
『このユニークスキルには、ある大前提がある。一つは、報復として破壊できる対象には上限があるということ』
それはそうだろう。
普通に考えて、ダンジョン世界を崩壊させるような一大事を、命令一つで実行されたらたまったものじゃない。
そもそも、世界の概念をたかが人間如きが変えられるようなスキルがあるはずもない。
人は、神じゃないのだ。
『だが、俺はダンジョンという巨大な存在への報復を諦めなかった。ユニークスキルの詳細を調べていく内に、一種のバグのようなチートコマンドを見つけた。それは、“報復を決めた理由――根源たる存在に《
「なっ!?」
僕は、耳を疑った。
そんなことがあっていいのか?
驚愕で硬直する僕の前で、
『クレアの身体は、生前の美しい状態で保たれるように《
「死んだ妹を美しい状態で保存て……とんだシスコンだなあんた」
『何か言ったか?』
「いいえ、別に」
目を閉じ、そっぽを向く。
よほど妹を大切に思っていたんだろう。なら、それこそ保存なんてせずに静かな場所で眠らせてあげるべきだと思ったが……愛の形は人それぞれだもんな。
『とにかく、俺は俺の憎悪の中核を成すクレアの遺体に、《
「なるほど。クレアの遺体にお前の復讐心とユニークスキルを宿した存在。それが、今のクレアというわけか……いや、じゃあなんで人間みたいに喋ったり動いたりするわけ? あんた
『いいや。彼女が意思を持って動いているのには、俺の持つもう一つのユニークスキルが関係している』
「え!? ユニークスキル二つ!?」
チートじゃん。
もうお前がこの作品の主人公やりなよ。
死んだ妹を愛し続け、悲劇と復讐の中に身を投じる最強孤独系主人公。絶対ウケるって、うん。
などというメタ発言はやめておこう。
「その、もう一つは?」
『《
「えぇ~……」
人間は神じゃない。
とか思っていた矢先、神になれそうな人間一号が現れた。
「つまり、今のクレアはユニークスキル二つの力を宿した、一度死んだお前の妹……ってことか?」
『そうだ』
「じゃあさ、あいつも生き返らせたりできるの?」
僕は、死にたてほやほやのウッズを指さす。
今の話が本当なら、死んだばかりのウッズに会えるかもしれない。そんでもって、満を持して死んだと思っていたウッズの驚く顔を拝んで、煽りまくることもできるかも。
そう思ったが、
「いや、不可能だ。なぜなら魂は造り出すだけで、
「なるほど」
――『俺はクレアの兄であって、その女の兄ではない。いや、正確には身体はクレアのはずだがな』――
さっき、意味深なことを言っていたことの意味がようやくわかった。
『――改めて礼を言おう、エラン。お前のお陰で、俺の計画は完成した』
「……は?」
急に、突拍子もなくそんなことを言ってきた
さっきあえてスルーした、僕への恩赦。
訝しむ僕の疑問に答えるように、彼は話を続けた。
――話に夢中になっていたせいか、クレアの身体の異変が、ピークを迎えようとしていることに、全く気が付かなかったが。
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