第二十五話 脱出の準備

「いい方法があります。あなたたちも、僕の落ちてきた穴を登って脱出するんです」


「それこそ無茶な。皆が《飛行フライト》スキルを持っているわけじゃないし、例えあったとしても、穴の周囲にはモンスターが跋扈ばっこしている。全員死なずに脱出は、無理だ」


「いいえ、やれますよ。お任せください」




 僕はニッと歯を見せて笑った。




△▼△▼△▼




 ――来た道を全員で戻りながら、僕は作戦に必要なことを始めた。


 まずは、現状のステータスの確認だ。




◆◆◆◆◆◆


 


 エラン


 Lv 92 → 135


 HP 2400 → 3120


 MP 465 → 548


 STR 405 → 520


 DEF 310 → 387


 DEX 132 → 151


 AGI 155 → 172


 LUK 104 → 118




 スキル(通常)《衝撃拳フル・インパクト》 《サーチ》 《飛行フライト》 《ズーム》 《速度超過スピードアップ》 《標的誘導ターゲット・インデュース》 《超跳躍ハイ・ジャンプ》New! 《拘束バインド》New! 《硬質化ウェア・ハード》New! 《粘着スティッキー》New! 《暗視ナイト・ビジョン》New! 


 スキル(魔法)《火炎弾フレイム・バレット》 《氷三叉槍アイス・トライデント》 《冷却波クール・ウェーブ》 《蒼放電ブルー・リリース》 《紅炎極砲フレア・カノン》New! 《上昇烈風ノックアップ・ゲイル》New!   


 ユニークスキル 《交換リプレイス


 アイテム 《ナイフ》×1 《HP回復ポーション》×35→44 《MP回復ポーション》×26→38 《状態異常無効化の巻物》×20→26 《魔鉱石・赤》×22→36 《魔鉱石・黄》×45→69 《魔鉱石・青》×75→104 《魔除けのブレスレット》×1


 個人ランクA→S


 所属 《緑青の剣》(追放)




◆◆◆◆◆◆




 遂に、僕も個人ランクSに到達した!


 喜ばしいことだが、両手をあげて喜ぶのは、やることをやった後にしよう。




(う~ん、《上昇烈風ノックアップ・ゲイル》は使えるな。他にも良い具合に使えそうなスキルが手に入った。……あとは、あのスキルがあればやれる)




 僕は、後ろから付いてくる《テンペスト》の面々を見まわして、口を開いた。




「すいません。どなたか、《威嚇シャウト》を持ってる人いませんか?」


「あ、私持ってるよ」




 左前にいた、何歳か年上の女性が手を挙げた。




「あの、僕の持ってる《拘束バインド》スキルと交換していただけませんか? 脱出させるために、どうしても必要で」


「いいけど、そんなことできるの?」




 きょとんと首を傾げる女性に、頷いて返す。


 それから、ユニークスキル《交換リプレイス》を起動した。




「《交換リプレイス》――《拘束バインド》を捧げ、我が手に《威嚇シャウト》を」




 刹那、光の玉が互いの胸から飛び出し、空中で交差して、それぞれの胸に吸い込まれる。


 その様子を、目を丸くして見ていたカルムが、合点のいったように呟いた。




「そうか。さっき、ジャイアント・ゴーレムの起動しかけていた巨大な火球が消えたのは、スキルを消したんじゃなくて、君が咄嗟に自分の持つスキルと火球を交換したのか」


「ご明察です。このユニークスキルのお陰で、地獄みたいな最下層を生き延びることができたと言っても過言じゃありませんから」




 軽く微笑んで、僕は女性に「ありがとうございました」と礼を言い、また前を向いた。


 もう少し歩けば、自分が落ちてきた湖に到着する。




 つい数時間前、リーダーに裏切られて追放された場所。


 古い自分を終わらせ、新たな自分を生んだ地に。




 僕は気分を落ち着けるように深呼吸を一つして、ひたすらに歩みを進めた。


 《テンペスト》のメンバー全員を逃がす算段は、もう付いている。あとは、全力でやるだけだ。

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