第十三話 意味を成さないアイテム?

《エラン視点》


――。




「どう美味しい?」


「……驚いた。唐辛子より刺激の強い食べ物が、この世にあるなんて」


「要するに、マズイんだね」


「やめてよね。せっかくオブラートな言い回しにして現実から目を背けてるのに」




 加熱したスライムの核を食べながら、ストレートに切り込んでくるクレアに言い返した。




 はっきり言って激マズだ。


 加熱したら食べられるとか説明にあったけど、ギリギリ食べられる臭みと苦みである。


 


「まったく。味に反して栄養価が高いっていうのが、不幸中の幸いというかなんというか……ぐえっ」




 あまりのマズさにリバースしかけながら、必死に胃袋へ流し込む。




「女の子の目の前でキラキラしないでね」


「うぷっ。わ、わかってるよ」




 なんとか飲み込んで、大きくため息を吐く。




「危ない。もう少しで口先からきらめくとこだった」




 不味さのお陰か、量に対してお腹が膨れた。




「さてと、そろそろ出発しようか」


「うん!」




 腰掛けていた岩から立ち上がり、再び歩き出す。




「しかし……休憩してる最中、まったくモンスターが襲ってこなかったな」


「そりゃ、このブレスレット付けてるからでしょ」




 クレアは、自身の腕に巻いた《魔除けのブレスレット》を見せつけてきた。




「たしかに。正直、魔除けとか胡散臭くてあんまり信用してなかったけど、案外役に立――」




 ふと、歩く足を止めた。




「どうしたの?」


「……あそこ」




 僕は、進行方向の暗がりを指さす。


 ――さっき腰掛けていたイスと同じくらいの大きさのモンスターが、道を塞いでいた。




 全身はくすんだ緑色。胸部から八本の足が生えている、蜘蛛くものバケモノみたいな奴だった。




『シュー』




 そいつは僕達に気付くと、威嚇するかのような声を出す。




「こいつは……」




 スキル《サーチ》を起動して、モンスターのステータスを見る。




◆◆◆◆◆◆




 洞窟蜘蛛ケーブスパイダ




 Lv 89


 HP 1520/1520


 MP 56/56


 STR 438


 DEF 310


 DEX 308


 AGI 211


 LUK 89




 スキル(通常) 《溶解メルト》 《猛毒針ポイズン・ニードル》 

超跳躍ハイ・ジャンプ》 


 スキル(魔法) ―


 ランク Sクラス




◆◆◆◆◆◆




「ランクSクラスの洞窟蜘蛛ケーブスパイダか。にしても、最下層に落ちてから初めて見るモンスターばかりだな」


「しゅーしゅー言ってるだけで攻撃してこないね。やっぱり、これのお陰?」




 クレアは、自身の右手にはめたブレスレットをちらつかせる。




「そうなのかな。だとしたら相当役に立つアイテムだね、これ」




 感心しつつ《魔除けのブレスレット》の説明を見る。




 《魔除けのブレスレット》


 装着者を中心とした一定効果領域内に、モンスターを寄せ付けない・または大人しくさせる。※ただし、ランクAクラス以上のモンスターには効果が無い。




 ふむふむ。


 Bクラスまでのモンスターなら、襲ってこさせないのか。




「……ん? Bクラスまで?」




 今一度、目の前で威嚇しているモンスターを見る。


 洞窟蜘蛛ケーブスパイダ……ランクSクラス。


 つまり――《魔除けのブレスレット》の効果適用外。




 瞬間、『キシャァアアアアッ!』と金切り声を上げ、そいつは僕達めがけてカッ跳んできた。

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