第12話 奇跡の一手
「我に力を!神の一手!」
フローラのその言葉に、フローラの左手は強い光を放ち反応した。地底人はその光を見て、目を押さえて苦しみ悶え始めた。
「目がぁ!目がやられるー!」どんぐりの様な体を更に丸めて、地底人は光を目に入れない様に、地に伏した。
フローラの左手は更に光を強め、やがて、どこまでも光の輪郭を広げ、フローラ自身をも飲み込んでゆく。目を瞑ってもまだ眩し過ぎる程のその光に困惑しながらも、フローラは新しい力に期待した。手に入れたばかりのその力に、神の一手という名にふさわしい神々しさがありそう、と感じ、左手を高々と掲げ、満足気な笑みを溢した。
やがて、光が一瞬の内に、フローラの左手に収束する。
目を瞑る中、左手に、何かの感触を感じるフローラ。何か、棒状の様なものが、その左手には握らされている事だけは、直ぐに分かった。
何かの、剣だ。
そう感じなから左手をゆっくりと下ろして、期待を胸にゆっくりと、目を開けるフローラ。
足。誰かの足だった。
それを左手で握らされていた。フローラが、誰か分からないおっさんの足を持ちぷらぷらと、宙吊りにしている状態だった。
「一体、これは、どう言う、」フローラは、何も反応しない、そのおっさんをとりあえず掴みながら、ひとまず観察した。だがフローラには、どこかで見た覚えがある、そんな程度の感想しか浮かばなかった。
(これ、この人間が必要らしいで。奇跡の一手にな!)フローラの左手がフローラに語りかけた。
「は?これが?」左手で掴みながら、ぷらぷらとしてみる。ぷらぷらするおっさん。
このおっさん、どこかで最近見た様な。
あっ!さっき、ローラ様の家に!と、フローラは気づいた。
ぷらぷらするおっさんは、ローラの家に先程居た、神野だった。
そして、神野を見て、ローラの事をまた思い返すフローラ。
「くそ、こっちは時間が無いんだ!早くローラ様の元へ戻って助けないと!」フローラは左手に叫ぶ。
(知らんがな!それが出てきたんなら、それが奇跡の一手なんやから、使えばええやろ!)でも、何でおっさんなん?と左手は、語りながら思う。
フローラも一瞬考え、
「何だそれ、」と呟いた。
地底人はまだのたうち回っていた。
「目が、痛いー!」地底という暗い世界にいた者に、極度の光は危険なものだった。光は目を焼きつくほどに痛めつけ、視界の全てを奪う程に重度の光の残像を与えた。
のたうち回る地底人を見て、その呑気さに、フローラのストレスが一気に溜まっていく。
「思えば、まだローラ様とお風呂、入って無いし。
ローラ様を傷つけた貴様をぶっ飛ばしたいのに、全然効かないし。
挙げ句、能力に騙されて、変なおっさん握らされてるし。
ふっざけんなーー!!」
フローラは叫びながら跳び、地底人を真上から捉え、左手を、おっさんを振り上げる。落下する最中も、瞬きすらせずに地底人を捉え続け、おっさんの足に右手も添え、息を大きく吸い込む。最適な一撃になる様、イメージをする。まとまったイメージ。そして叫んだ。
「奇跡でも何でも起こりやがれ!!必殺!」
そして、地底人に触れる間際、フローラはおっさんを勢い良く振り下ろし、地底人の体におっさんを強く打ち付ける格好の後、おっさんの体に前転の要領で、背中から着地し、全体重をおっさんに載せた。
「おっさんダイブ!!」
空気の破裂音が一帯に轟く。
地底人におっさんが強く打ち付けられる瞬間、振り下ろされるおっさんは音速を超え、ソニックブームを発生させながら、地底人へと激突した。
更に、フローラの落下が二重の衝撃を作り出す。
うぐぶふぅっっ、と地底人は初めての呻きを漏らした。
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