キス
ゲホッゲホッ。パブロは酷く咳こんでいた。
「風邪ひいた…」
(だよねー)
「大丈夫かぁ?家に誰もいなくなるけど…」
博之が心配そうに言った。
「ん、ずっと寝てるから大丈夫…」
そう言って、パブロはフラフラと部屋に入って行った。
(大丈夫かな…)
「絵理おはよー!昨日のデートはどうだった?」
「愛花おはよ。あー、楽しかったよ。でもね、雨にふられてさ、パブロ熱出しちゃって…」
「え、そうなんだ。大丈夫?」
「ずっと寝てるから大丈夫って言ってたけど…」
「心配だね…」
「うん」
授業が始まったが、絵理はずっとパブロの事を考えていた。
(家で1人で大丈夫かな。ご飯とか食べてないよね。そもそも、私にお風呂譲ってくれたから…)
考えがぐるぐる回って回って回りまくっていた。
パブロは家でうなされていた。
熱が38.5°あった。
(腹減ったけど、作る元気はない…。とにかく寝よ…)
ガチャ
扉の開く音がした。
(ん?誰だ?皆、出かけてるはずだし…。ドロボー?こんな時に…)
パブロは重い体を起こして、立ち上がった。
「誰だ」
心臓がドキドキしていた。
カチャ
(ゴクリ)
「パブロ…?」
「え、絵理?!ふぅ…なんだよぉ。どうしたの!?」
パブロは座り込んだ。
「早退してきちゃった…」
「…え?絵理も具合悪くなったの…?」
「ううん。あ、おかゆ食べない?作るね。」絵理は、恥ずかしくてキッチンに逃げた。
「え…?」
(え?…俺のためー…?なんてね…)
パブロは、座って腕組みをして考えた。
(ん?…そう、だよなぁ…)
パブロは顔が一気に赤くなった。
(えー…?)
手を口にあてた。
(やべっ。何これ…。泣きそう…)
「パブロ、おかゆできたよ」
パブロは起き上がって笑顔で迎えた。
絵理は、パブロの布団の横に座った。
「美味しい?」
「うん、まぁまぁ」
「それ、どっち?」
絵理はそう言って笑った。
「熱は?」
「38.5℃」
「そっか、高いね」
「…なぁ、絵理…」
「ん?」
「…なんでもない…」
「?」
「おかゆ、美味しい」
「今?」
絵理は笑った。
(今日はやけに優しいな…。)
パブロは、絵理の顔をじっと見た。
(それにかわいい…)
「…何?」
絵理はよくわからないが、見つめ返した。
2人は見つめ合う
お互い、顔が赤くなる。
絵理は恥ずかしくて、この場を離れたくなった。
「…麦茶持ってくる」
絵理が立ち上がろうとしたが、パブロに腕を掴まれた。
絵理の体がビクッとした。
「あ、ごめん…」
「ううん…」
「座って…」
「うん…」
パブロは、赤くなってうつむいている絵理の顔を見て、どうしても触れたくなった。
ゆっくり、絵理の頬に手をやった。
絵理は、ビクッとしてパブロの顔を見た。
パブロが、絵理の顔に近づいた。
嫌がったらすぐやめようと思っていたが、絵理は動かなかった。
そのまま2人はキスをした。
そして、ゆっくりと離れた。
パブロと絵理は見つめあった。
数秒後、パブロはさっと絵理から離れた。
「ごめん、ごめん絵理…」
絞り出すような声で、言った。
絵理は、意味がよく分からなくて、何か聞こうと思った瞬間
「ちょっと疲れちゃった…。寝るね…」
とパブロが言って布団に入った。
「…うん、おやすみ」
絵理はリビングに、戻った。
(キス…したんだよね…?)
絵理はついニヤけてしまった。
パブロは、1人部屋で考えていた。
(俺…、ここにいられるの、もう残り一週間しなかい…。
俺は絵理が好きだ…。絵理も、あの反応
だと同じ気持ちかもしれない…。
このの調子のまま、一緒にいたら…。別れる時、もっと悲しくなる…。すごく傷つける…)
パブロがリビングに来た。
「ん?どうしたの?水?」
「ごめん、絵理。さっきの。俺熱あったし、なんていうか…。ごめん。忘れよ…」
(え…)
絵理はパブロに背を向けて、ポロポロ泣き出した。
パブロの手は絵理を抱きしめたがっていたが、グッと拳を握って堪えた。
(絵理…。ごめん。でもあと一週間しか一緒にいられないんだ…)
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