一瞬触れた髪
パブロは、あと半月ほどで魔法界に帰ることになっている。
谷川家と一緒にいられる時間が徐々に無くなっていけばいくほど、その事を伝えづらくなっていた。
(言わなきゃ…。あぁ、でも、言い出しづらい…)
とある日。
絵理と愛花の圭太の3人で愛花の家で遊ぶ事になった。
愛花の家に行く途中、パブロに会った。
「おっ、3人でどこ行くの?」
「これから愛花の家に行くの」
「え、俺も行きたい」
「え?何で?」
「絵理、いいじゃん。パブロ君も一緒にどうぞ」
愛花は笑顔で言った。
「やった」
「えー」
絵理が不満足そうな声を出すと、パブロは見えないところで、絵理にパンチをした。
絵理がやり返そうと後ろを見たら、パブロはそこには、もういなかった。
(こいつ…)
愛花の家でさっき買ってきたお菓子を食べていた。
「えー?パブロ君2歳年上なの〜?」
愛花と圭太が驚いていた。
「うん。そんな驚く?」
「見た目がね…。原因だね」
絵理が言うと、
「おぉいっ!」
パブロが勢いよく突っ込む。
「ははっ」
「仲いいねー」
「どこが」
2人の声が被った。
2時間ほど過ぎたあと、圭太はパブロをこっそり呼び出した。
「あのさ、絵理と早めに抜け出して、愛花と二人きりにさせてほしいんだけど…」
とこっそりお願いした。
パブロは絵理が圭太を好きなことを知っていたので、ちょっとイラッとした。
(ま、悪いやつではないしな…)
「いいよ」
「ありがとう!」
(喜んでいるからいいか…)
その頃、絵理と愛花は恋バナをしていた。
「愛花と圭太、ラブラブになってきたね〜。良かったね」
愛花は顔を赤らめて、
「うん、絵理のおかげだよ。ありがとう。絵理は?パブロ君とどうなの?」
「どうって?」
「え?!だって、めっちゃ仲いいよね?」
「えぇ?そう?」
絵理は苦笑いをした。
「絵理はパブロ君のこと、好きだよね…?」
「なんで?!」
考えてもみなかった事を考えて、顔が赤くなっなった。
「ほらぁ〜」
「いやいや…。ないない」
その時、パブロと圭太が部屋に戻ってきた
「二人で何してたの?」
愛花が圭太とパブロに聞いた。
「え、え?いや、別に…」
パブロは圭太の下手な芝居にまたちょっとイラっとしたが、頼み事を引き受けた手前、
行動をおこした。
愛花と圭太に気づかれないように、絵理の耳元でコソッと囁いた。
「絵理…。圭太が愛花ちゃんと二人きりになりたいみたいだから、俺等早く帰ろう…」
絵理は、顔の近さと耳元の声にドキッとした。
「…うん、わかった…」
パブロの方に軽く顔を向けた時、お互いの髪が一瞬触れて、慌てて離れた。
「絵理、もう帰ろう。孝司1人にしたくないし」
「うん…」
絵理は立ち上がろうとしたが、足が痺れて立ち上がれなかった。
(痛っ…)
「え?そうなのー?絵理いないと寂しな。
パブロ君が、絵理と二人になりたいって言うなら譲るけど…」
愛花はカマをかけるように言った。
「違うっ…」
絵理は恥ずかしくて反発した。
パブロは、絵理が立ち上がるのに苦戦しているのに気がついた。
「…うん、そう。2人きりにないたいから帰るね」
パブロがサラッと言うと、絵理の手を取って立ち上がった。
「大丈夫?行くよ?」
「うん…」
絵理は何とか立ち上がった。
「じゃ、愛花ちゃん、またね。圭太も」
「うん、またね!」
パブロは、足が痛い絵理をサポートするようにをゆっくり手を引っ張っていった。
「…ゴメンな…。帰りたいからって、圭太の前であんな事言って」
パブロは歩きながら言った。
「あのね、パブロ。私、もう圭太のこと好きじゃなくて…」
「…ふーん…。別にいいよ。無理しなくても」
「無理じゃなくて、ホントに…」
「絵理すぐ無理するから…」
「だから、違うって!…もう、パブロは分かっててよ…」
つい、本音を言ってしまって、また顔がか赤くなる。
「…ん…。分かった…」
2人して、顔が赤くなる。
そして下を向いた途端、自分達が手を繋いでる事に気づく。
「あっ!ごめっ」
2人で同時に言って、同時に手を離した。
少しの沈黙の後。
「…あー、絵理。来週一緒に水族館行かない?」
軽い口調でパブロは言った。
「え…!?うん…」
「よし、じゃ学校終わったくらいに迎えに行くから。じゃ、そういう事で」
スタスタとパブロは行ってしまった。
(え?!何?!…急展開すぎる…)
絵理は赤くなった頬を触った。
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