第2話 ガニメデ輸送作戦

 ケイ素人類軍との決戦に勝利するため、大地球帝国連合宇宙艦隊が駐屯しているガニメデ基地に人命弾1億発を届けなければならない。

 護衛艦隊司令官タモ・ヤマグチは使命を達成するため、地球から木星の衛星ガニメデに向かっていた。

 彼が乗艦しているのは宇宙空母ヒリュウ。艦隊は人命弾を積んだ宇宙輸送艦1000隻を護衛している。

 ヒリュウとともに輸送艦隊を守っているのは、宇宙空母ソウリュウ、アカギ、カガ、ショウカク、ズイカク。合計6艦の空母だ。


「ひどい戦争だ……。人間1億人を1億発の砲弾に変えた。こんなことをしなければ戦えないとは……」

 タモは心の中でつぶやき、ため息をついた。

 彼はひとり娘モモとその恋人が人命弾になったことを知っている。その赤い砲弾を心底から憎んでいた。

「だが、なんとしてでも人命弾をガニメデに届けなければならん。これが宇宙の藻屑と消えるようなことがあったら、それこそ1億犬死にになってしまう……」


 艦隊が小惑星帯を越えたころ、ヒリュウの艦橋に警報が鳴り響いた。

「なにごとだ」とタモは叫んだ。

「敵宇宙戦艦アリゾナ、カリフォルニア、オクラホマ、メリーランド、テネシーを確認。接近してきます」とヒリュウ艦長トメ・カクが答えた。

「ただちに全空母からすべての零戦を発艦させよ。敵艦に特攻し、輸送艦を守り抜け!」

 おれも愚かな命令を出さなければならない、とタモは心中で嘆いた。やりたくない。だが、やるしかないのだ。


 人命弾を搭載した宇宙戦闘機隊が敵宇宙戦艦5隻に向かって飛んでいく。

 自爆攻撃によって、敵宇宙戦艦はすべて爆散した。

 輸送艦隊は守られた。

 しかし、人命弾だけでなく、貴重な零戦パイロット数百名の命も宇宙の塵となった。


 タモ・ヤマグチは人命弾1億発を大地球帝国連合宇宙艦隊に届けることができた。

 ガニメデ輸送作戦は成功理に終わったのだ。


「ありがとう、ヤマグチくん。あとは我々に任せてくれ」とイソ・ヤマモト連合宇宙艦隊司令長官が言った。

「私も決戦に参加させてください」とタモは言った。

「その気持ちはありがたい。だが、きみの艦隊は零戦をすべて喪失し、戦力なしになっているではないか。補給をせねばならんが、敵の本隊はもうオールトの雲を越えているのだ。きみらが冥王星決戦に参加することはできん」


 連合宇宙艦隊が冥王星軌道に向かって飛んでいくのを、タモはガニメデ基地から見送った。

 大地球帝国参謀本部はそこを絶対防衛圏とさだめている。ケイ素人類連合宇宙艦隊を迎撃する冥王星決戦を指揮するのは、イソ・ヤマモトの仕事だ。


 ヒリュウ、ソウリュウ、アカギ、カガ、ショウカク、ズイカクは地球への帰還の途についた。

「地球で零戦隊を乗せ、すぐに冥王星へ向かいたい。だが、決戦には間に合わないだろうな……」

 タモはヤマモト司令長官の武運を祈った。

 しかし、敵宇宙艦隊が銀河一強大であることを、タモは知っていた。

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