第3話 純白は紅に染まる

「あっ、見て!子猫がいるわ!可愛い。

お母さんとはぐれちゃったのかしら。

こんなところにいたら風邪ひいちゃうわよ」


子猫が道端にいたので

抱き上げた。


「お姉ちゃんっ!!!!!!」


未来の緊迫した悲鳴が聞こえて

背中に衝撃が走る。


わたしは前につんのめり倒れ込む。

いたた……


「未来?」


振り向いてみると。


未来が倒れている。

瞳は固く閉ざされていた。

頭から血が流れて

雪を赤く染めている。


「え?」


状況が飲み込めない。


赤い液体のついたトラックがすごい勢いで

前を横切る。


もしかして未来は轢かれたの??

わたしを庇って?


「嘘でしょ。ねぇ未来!!起きて!起きてよ!!」


そんな。

そんな…嘘だ、嘘だ、嘘だ。

涙が溢れる。

こんなの

悪い冗談だってそう信じたかった。


だけど、サイレンの音で現実に引き戻された。


近所のおじさんが救急車を呼んでくれたらしい。

心配そうに「大丈夫か」と声を掛けてくれた。

わたしはやっとの思いで頷いた。


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