武道場でする話か?
とある大学の武道場。地下一階にあって、電波が届かないため、武道系の部活の学生からはいつも文句を言われている。畳のある柔道場と、フローリングの剣道場が併設してあるタイプの武道場で、更衣室は男性・女性ひとつづつある。
土曜日。朝。9:00まで剣道部が、9:30から柔道部が使用することになっている。ちょうど団体が入れ替わるとき、更衣室でそれぞれが一緒になって着替えることは、この大学の武道場ではよく見る光景だ。部を超えての交流は更衣室で生まれる。
剣道部の2年と柔道部の2年が更衣室で話している。
柔道部「武器っていいよな」
剣道部「わかる、ロマンあるよな」
柔道部「お前、ひとつだけ持つとしたら何がいい?」
剣道部「ん~、、、やっぱ剣かな、俺剣道部だし」
柔道部「ほんと剣道好きだなぁ、でも竹刀と剣って使い方同じなの?」
剣道部「いや俺も真剣使ったことないしわかんねぇけど、雰囲気でいけんじゃね」
柔道部「お、けんだけに、つってか?」
剣道部「しょうもねぇなお前」
柔道部「言ったのお前だよ」
剣道部「俺はそのつもりで言ってねぇよ・・・お前は?何がいい?」
柔道部「俺は絶対に銃だな」
剣道部「お前は柔道部だもんな」
柔道部「そのじゅうじゃねぇよ、真逆だろ」
剣道部「真逆じゃねぇよ柔の真逆は硬だよ」
柔道部「そこは汲み取れよお前、柔道っていう武道の反対みたいじゃん、銃で殺すって」
剣道部「あ、殺すの決定なんだ」
柔道部「いや言葉の綾だよ」
ガラガラ・・・更衣室のドアが開き、一人の学生が入ってきた。先輩かと思い、ふたりとも同時にドアに目線をやったが、知らない人だったため同時に目を逸らす。
柔道部「銃は先手必勝だしなぁ、絶対、銃」
剣道部「なんでお前が先攻できるって決まってんだよ」
柔道部「だって銃は引き金引いたら一発だぜ?そりゃ先手取れるでしょうよ」
剣道部「まぁ手軽に強いわな、でも銃っていろんなタイプあるぜ」
柔道部「俺はもうアサルトライフルって決めてるから」
剣道部「なんだお前、サンタさんにもらうプレゼントみたいな言い方しやがって」
柔道部「あれほどかっこいい銃はないだろ、絶対アサルトライフル」
剣道部「まぁかっこいいなあれは・・・でも先手必勝を狙う割にはでかいアサルトライフル選ぶんだな、ちっちゃい銃じゃなくて」
柔道部「うるせぇなぁ、ロマンだよ!ロマン!」
剣道部「そういえばさ、銃って英語でいろんな言い方あるじゃん」
柔道部「Gunとかピストルとか?」
剣道部「なんでガンだけ発音いいんだよ、でもあれどういう違いなんだろうな」
柔道部「種類じゃないの?マシンガンとかおっきいやつはガンで、ちっちゃいやつはピストルとか?」
剣道部「でもハンドガンって言うじゃん」
柔道部「あ、そっか、じゃだめだ」
剣道部「諦めはやっ」
柔道部「剣も刀とつるぎで違うよな」
剣道部「あ、俺それは知ってる」
柔道部「刀は片方に刃がついてて、つるぎは両方についてるんだろ?」
剣道部「お前先に言うなよ・・・気持ちよく言わせろよそこは」
柔道部「ヘッ」
剣道部「ヘッってなんだよお前気持ち悪いな」
ガラガラ・・・二人は武道場に戻っていった。
たまたま忘れ物を取りに来た空手部「なんだあいつら、武道を嗜む者として恥ずかしくないのか!武器の話なんてしやがって、そんなんで道着に腕通すなよ!
・・・俺はスナイパーライフルだな、戦場立つ度胸ないわ」
お喋り覗き窓 板東英ド @jackson94
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