ゆで卵付きご飯少なめ
飲食店でアルバイトをしている。近所の小さなカレー屋さんだ。住所としては東京だが、23区郊外にあり、いい意味で東京感のない地域にある、レトロなお店。ランチとディナーの両方の営業で、地元の名店として愛されているお店。私は去年から、水曜日と土曜日のディナーの時間にシフトを入れており、お店のご主人と二人体制でお店を回している。就職活動も相まって週二回のシフトが限界で、やっと仕事を覚えて慣れてきたかな、ぐらいのところにいる。
店のドアがガラガラと開いた。一人のおばあちゃんが来た。なかなかのおばあちゃん。もう、それはそれは、なかなかの。ご主人との会話を見るに、常連のひとりらしい。奥のカウンターに座り、どさっと荷物を横に置いた。ご主人からの目配せで、オーダーを取りに行く。そのときの一コマ。
自分「こんばんは。お決まりでしょうか?」
おばあ「いつものほら、あれで」
自分「いつもの。。?」
ご主人「あぁ、グリーンカレーゆで卵付きご飯少なめね」
おばあ「そう、ぜったいご飯少なめ。」
自分「あ、かしこまりました、では準備しますね」
・・・いや、わかるわけないやろ。普通のグリーンカレーならまだしも、トッピングと分量までこんな勤務歴二年目駆け出し大学生にわかるわけないやろが。
にしてもご主人すごいな、スッと出てきたもんなこの人の「いつもの」に対する「答え」。しかもご主人はこの答え合わせをいろんな常連さんにできるもんな、記憶力すげぇわ、、、
待てよ、じゃあご主人はこの人が何頼むかわかってたのに「オーダー、よろしく」の目配せをしてたってことか?それ、、どうなのよ。いや、わかるよ?お前はまだまだだからオーダー自分で取りに行けよ、それぐらいのガッツはいるぜ、ってことは。でもさ、、、あのとき俺、あの場に必要?邪魔じゃなかった?おばあも「なんだてめぇ」ってなってたな多分。「知らねぇのかよわたしの「いつもの」を。」
いや知らねぇよ。
という思考回路を、お冷やのピッチャーを準備しながらわずか約3秒でフル回転させた。そんなとき、おばあから追い討ちの一言。
おばあ「あんた前にもおったかいな?あのときの兄ちゃんやろ?」
自分「いや、多分僕じゃないですねそれ、僕まだ二年目ですから。」
おばあ「あれぇそうか、ほなええわ」
知らんがな。前っていつやねん。ここ、大阪じゃないよな?私が関西出身やからええけど、他の人にもそんな感じなんか?それこそおばあが今思い描いていた「前いたお兄ちゃん」は関西出身じゃない可能性の方が高いよな?いいのか?それで?おばあ?
冒頭に「いい意味で東京感のしない」というのは、そういう意味ではないな。
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