第8話 静寂の後 ※

僕は逃げた。


明らかにおかしい。

僕はをした。


他人を殺してしまった。

これは駄目だ。



走った。

集落の外まで。



走る中、僕を見る異世界人の視線が痛い。

服装が違うから?

顔が違うから?






いや、他人を殺してしまったからだ。



事態を把握していない人は

「何だこいつは」と言った視線。

遺体の方面から

悲痛な叫ぶ声。


僕はただ、逃げた。

















足が、膝が、腕が、指が、唇が

震えていた。





僕は人を殺してしまった。












花澤さんと入った場所から

反対側に来てしまった。

集落では騒動になっているだろう。


外には化け物もいるというのに。

一人で大丈夫だろうか。

落ち着こう。

整理しよう。












闇の中。



化け物の声。









考えてみる。


この異世界設定が分からない。


化け物。

地球と似た食べ物、物。

魔法が使える花澤さん。

使えない僕。

無傷の僕。

人を殺してしまった僕。







鎧男に触れそうになった時、

そいつは弾け跳んだ。

熊(仮称)に襲われた時もそうだった。

磁石が反発する様に。

崖から落ちた時もこの感覚だった。


ばちん。


と、反発するみたいに。


そしてあの時、ほうきを振りかぶった。

瞬間移動をしていた。

とてつもないスピードで突き抜けた。

運悪く、相手の口をめがけて。


力では無い。

バイクで駆けた時、

感じる様な風を感じた。



嫌な風だった。



しかし、経験した事も無い速さだった。






検証してみる。





そこそこの太さがある木の棒をつかみ、振る。





何も起きない。

ひ弱なデブがただ棒を振っただけ。




振りかぶり勢いをつける。

何も起きない。



カッコイイ振り方をしてみても

何も起きない。



敵意が必要か?

対象が必要か?

発動条件が分からない。




しようがない。

とりあえず朝まで野宿。

丁度、田舎のバス停みたいな

屋根付きのベンチ(廃墟に近い)を発見。

暫くぶりに落ち着ける。



煙草に火を付けた。


気絶や食事以外で、

久々に気を休めたk・・・








遠くの方から威圧感。






熊さん(殺意強め)が来た。





丁度良い。

検証part.2スタート。




そこそこの太さがある木の棒を持ち、

構える。


四足歩行で走る熊さん。







さっきは自然とそうなったが、

今度は狙う。


















風を感じた。











僕は大木にぶつかり、

バウンド。


大木がギギッと音を立て折れていく。




起き上がりつつ振り返ると。


ほぼ同じ状況が出来ていた。

熊の頭部半分から背中にかけて、めくれていた。


血のシャワーを

短期間で2回も浴びてしまう。



煙草の先端に血がかぶり、

吸えそうにない。

むしり取って火をつける。





相変わらず、僕に外傷はないが

ジンジンする・・・

衝撃が響いてはいるようだ。

ダメージ的なものは無いようだが。







屋根の上、横たわる。






恐らく、僕の異世界特典は


      無敵。


(何らかの)速さ。


魔法適性無し。







・・・そうだ。

花澤さんと落ち合う約束はどうするんだろうか。

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コミュ障が転生して異世界言語がわからなかった話 クチナシ @KUTINASI

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